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第二幕 幼少期
19.元魔王は聖女と再会する
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メアリー
「お初にお目にかかります。私はメアリー、アントニオの母親です」
バルド
「こいつを治せるか?」
メアリー
「魔法を使って治したいのですが、残念ながら、今は訳あって私は魔法が使えません。そのため、日常生活に必要な魔道具のですら自力で扱えない有り様です。ですので、リュシアンに軍医を呼びに行かせました」
メアリーは悔しそうに顔を伏せた。
バルドは自分が聖女の魔力を封印したことを思い出し、『失敗した』...と密かに思った。
バルド
「魔力が封印されているせいか...」
バルドは呟いてから、封印解除の魔法を使う。
メアリーは自分の中で、何かが弾けるような感覚を感じた。
バルド
「これで、魔法が使えるだろ? 早くしろ!」
メアリーは、一瞬、目を見開いてバルドを見たあと、目を閉じて自分の魔力を探ってみる。
魔力が戻っている!?
メアリー
「あ、有難うございます!」
メアリーはすぐにアントニオに向かい、治療を開始した。火属性魔法で身体を温め、水属性魔法で水分を補給し、氷属性魔法で腫れて熱をもつリンパを冷やし、効果魔法で過敏になっている神経を眠らせる...あらゆる属性魔法を使い分け、少しずつ状態異常を癒していく。
その様子を眺めて、バルドは感心していた。
なるほど、多属性持ちじゃないと出来ない芸当だ。物質を繋げて傷を塞ぐだけの簡単な回復魔法とは、大きく性質が異なる。自分には出来ない技だ。なるほど、人族の母親という生き物は、確かに子育て必要だ。 こいつは煩い奴だが、エストの生命維持には欠かせないようだ。
メアリー
「もう、大丈夫よ」
見ると、アントニオは安らかな表情で眠りについている。
バルド
「そうか」
バルドは安心して、ホッと息を吐く。
メアリー
「有難うございます。アントニオをいつも面倒見て下さっていることも、今の...封印解除も...」
メアリーは、アントニオの友人だという白い大きな男を見つめた。
バルド
「あぁ」
アントニオの友人は、メアリーには興味がない様子で、少しだけメアリーに目をやったあとは、アントニオに目を戻して、寝顔を無言で見つめている。
メアリー
「貴方は一体、何者なのですか?」
メアリーは魔力の高い王族や神官達の間で育ったが、自分よりも白く明るい色の髪を持つ人間を見たことがなかった。もちろん、歳をとって白髪になる人間はいるが、若くして白髪をもつ人間など王国にはいなかったのである。白銀の髪を持つメアリーは、それほど魔力が大きく、稀な存在であった。そんなメアリーよりも明るい、真っ白な髪の色。いったい、どれ程の魔力を持つ高貴な方なのであろう?
バルド
「そんな事をきいてどうする?」
メアリー
「それは...ただ、知りたいのです。何故、息子と知り合いになられたのか、何の目的があって息子と一緒にいて、助けて下さるのか...私の魔力が封印されていると、どうして分かったのでしょうか?」
一気に色々な疑問が溢れ出してしまう。
バルド
「俺はずっと前からエストと友達だった。お前らがエストに出会う前からな。突然母親になったお前に、どうしてお前がエストの母親になったのかと聞いたら、答えられるのか?
魔力が封印されている事くらいは、見ればわかる。封印を解除したのは、エストのために必要だったからだ。ただ、それだけだ」
メアリーは、どうして自分がアントニオの母親なのかという質問に、答えを用意することが出来なかった。
私が産んだ子だから...でも、生まれる前からトニーと知り合いだった、このご友人からしたら、母親の私など、突然現れた得たいの知れない女なんだわ。
メアリー
「...そう...ですか。愚かな質問を致しまして、申し訳ありません...その...エスト....とは、この子の生まれる前からの名前ですか?」
バルド
「あぁ」
バルド
「俺はエストと一緒に暮らせれば、それでいいんだ。他に目的なんてない。エストが笑っている、その隣で、俺も笑えれば、それでいい。そう思っているのは、お前も同じだろ?」
メアリーは、バルドの口から1番欲しかった答えを聞けて、妙に納得し、安心した。この男が何者であるかはわからないが、だが少なくとも、トニーの味方だ。そう感じた。
メアリー
「えぇ。アントニオが幸せなら、私もそれでいいわ」
メアリーのその言葉を聞いた白い男は、優しい顔で笑い、「また来る」といって、何処かへ消えていった。
「お初にお目にかかります。私はメアリー、アントニオの母親です」
バルド
「こいつを治せるか?」
メアリー
「魔法を使って治したいのですが、残念ながら、今は訳あって私は魔法が使えません。そのため、日常生活に必要な魔道具のですら自力で扱えない有り様です。ですので、リュシアンに軍医を呼びに行かせました」
メアリーは悔しそうに顔を伏せた。
バルドは自分が聖女の魔力を封印したことを思い出し、『失敗した』...と密かに思った。
バルド
「魔力が封印されているせいか...」
バルドは呟いてから、封印解除の魔法を使う。
メアリーは自分の中で、何かが弾けるような感覚を感じた。
バルド
「これで、魔法が使えるだろ? 早くしろ!」
メアリーは、一瞬、目を見開いてバルドを見たあと、目を閉じて自分の魔力を探ってみる。
魔力が戻っている!?
メアリー
「あ、有難うございます!」
メアリーはすぐにアントニオに向かい、治療を開始した。火属性魔法で身体を温め、水属性魔法で水分を補給し、氷属性魔法で腫れて熱をもつリンパを冷やし、効果魔法で過敏になっている神経を眠らせる...あらゆる属性魔法を使い分け、少しずつ状態異常を癒していく。
その様子を眺めて、バルドは感心していた。
なるほど、多属性持ちじゃないと出来ない芸当だ。物質を繋げて傷を塞ぐだけの簡単な回復魔法とは、大きく性質が異なる。自分には出来ない技だ。なるほど、人族の母親という生き物は、確かに子育て必要だ。 こいつは煩い奴だが、エストの生命維持には欠かせないようだ。
メアリー
「もう、大丈夫よ」
見ると、アントニオは安らかな表情で眠りについている。
バルド
「そうか」
バルドは安心して、ホッと息を吐く。
メアリー
「有難うございます。アントニオをいつも面倒見て下さっていることも、今の...封印解除も...」
メアリーは、アントニオの友人だという白い大きな男を見つめた。
バルド
「あぁ」
アントニオの友人は、メアリーには興味がない様子で、少しだけメアリーに目をやったあとは、アントニオに目を戻して、寝顔を無言で見つめている。
メアリー
「貴方は一体、何者なのですか?」
メアリーは魔力の高い王族や神官達の間で育ったが、自分よりも白く明るい色の髪を持つ人間を見たことがなかった。もちろん、歳をとって白髪になる人間はいるが、若くして白髪をもつ人間など王国にはいなかったのである。白銀の髪を持つメアリーは、それほど魔力が大きく、稀な存在であった。そんなメアリーよりも明るい、真っ白な髪の色。いったい、どれ程の魔力を持つ高貴な方なのであろう?
バルド
「そんな事をきいてどうする?」
メアリー
「それは...ただ、知りたいのです。何故、息子と知り合いになられたのか、何の目的があって息子と一緒にいて、助けて下さるのか...私の魔力が封印されていると、どうして分かったのでしょうか?」
一気に色々な疑問が溢れ出してしまう。
バルド
「俺はずっと前からエストと友達だった。お前らがエストに出会う前からな。突然母親になったお前に、どうしてお前がエストの母親になったのかと聞いたら、答えられるのか?
魔力が封印されている事くらいは、見ればわかる。封印を解除したのは、エストのために必要だったからだ。ただ、それだけだ」
メアリーは、どうして自分がアントニオの母親なのかという質問に、答えを用意することが出来なかった。
私が産んだ子だから...でも、生まれる前からトニーと知り合いだった、このご友人からしたら、母親の私など、突然現れた得たいの知れない女なんだわ。
メアリー
「...そう...ですか。愚かな質問を致しまして、申し訳ありません...その...エスト....とは、この子の生まれる前からの名前ですか?」
バルド
「あぁ」
バルド
「俺はエストと一緒に暮らせれば、それでいいんだ。他に目的なんてない。エストが笑っている、その隣で、俺も笑えれば、それでいい。そう思っているのは、お前も同じだろ?」
メアリーは、バルドの口から1番欲しかった答えを聞けて、妙に納得し、安心した。この男が何者であるかはわからないが、だが少なくとも、トニーの味方だ。そう感じた。
メアリー
「えぇ。アントニオが幸せなら、私もそれでいいわ」
メアリーのその言葉を聞いた白い男は、優しい顔で笑い、「また来る」といって、何処かへ消えていった。
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