失ったモノと手に入れたモノ

ハーマ

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失った物と失ったモノ

時が経ち……

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怜皇視点

警察官「あの……腕から血を流して歩いている人がいると通報を受けたんですが……」

怜皇「…………」

警察官「ちょっと待って  今手に持ってるの何?」

怜皇「…………」

沈んだ顔  傷付き見えなくなった右目  一般人では無い青年が警察官を見据える……

怜皇は警察官に言われ手に持っていたモノを渡す

警察官「これは?」

怜皇「……コカイン」

警察官「署までご同行を」

任意同行で怜皇は警察署へ行き治療を受けながら事情聴取

警察官「どうしてコカインを所持しているんですか?危険ドラッグですよ?」

怜皇「……忘れたかったんだ  全て……何もかもを」

警察官「何故「忘れたい」と?」

怜皇「……数十年前の戦争で全て失った……居場所も大切な人も仲間も……俺の片目も」

警察官「一つお聞きしたいことが……」

数十年前……怜皇率いるルヴァーナは強制的に「能力者戦争」と呼ばれる戦争に駆り出された……その時に怜皇は全てを失ったのだ……居場所や大切な人……仲間……そして片目さえも……

警察官「数十年前の「能力者戦争」で最前線にいた方ですよね?……貴方以外の生き残りは?」

怜皇「越前家や海外にに居る者は招集されていない……戦った中で生きているのは俺だけだ……それ以外は全員死んだ」

警察官「……辛い事を思い出させて申し訳ありません……コカインを所持していた他の理由は?」

怜皇「切れたから使おうと思っていた」

怜皇は戦争でのショックから薬物に手を出していた……それで昔と比べて様子がおかしい

~数日後~

裁判官「被告  獅子尾咲  怜皇に懲役3年を言い渡す  だが仕事をする事は禁ずる」

怜皇は純血の能力者であるのと天皇が自己理由で平和主義国の日本で、多くの能力者の命を奪った戦争の「被害者」であったからだ

怜皇「昔に戻ったみてぇだ……」

怜皇  冷たい牢獄の中ではだけた服のまま鎖で繋がれてたっけな……

今では懐かしく感じるその「拷問」……

怜皇「……暖けぇ」

怜皇  そう言えば何時振りだ?毛布とかに包まって寝るの……

怜皇「確か……戦争が始まる前……最後に誠の笑顔を見て抱かれた日……」

その日が最後だった……誠の体温があり誠の笑顔や表情を正面から見たのは……

~3年後~

怜皇「…………」

怜皇が警察署からでて公道に出ると……そこにはライダースジャケットを着てバイクに体を預けて、軽く足を交差した状態でヘルメットをしている銀雅の姿……

怜皇「…………」

怜皇の姿を確認した銀雅は怜皇にもう1個のヘルメットを出し、バイクに乗って一言も言わずに手で「乗れ」と言う

怜皇  ……人の温もりを感じるのも久々だな

銀雅の腰をホールドし抱きしめている怜皇は人の温もりを感じながら銀雅に任す

仁「兄さん……おかえり  湯の準備はできてるから入ってきて」

銀雅「いつも悪いな」

屋敷に到着して漸く銀雅が声を出す

怜皇「…………」

銀雅「まだ薬が抜けきってないんだろ  任せろ」

怜皇  何で知って……

薬が抜けきってないので力が上手く入らない

銀雅「……取り敢えず飯を食え  飯を」

風呂に入り腕を引かれるまま銀雅の自室に来た怜皇は銀雅に進められて食事を取るが……

怜皇「げほっゲホゲホ」

銀雅「無理をしなくていい…………まさかずっと食ってなかったのか」

怜皇「……誠を亡くしてから食う気が失せていたんです」

銀雅「何で戦争で生き残っていたのに俺に「生きている」と知らせなかった」

随分と久しく食事をとっていなかった怜皇は、出された食事を吐きそうになりながら完食し銀雅に問われる

怜皇「頭が混乱してて……それどころじゃなかったんです」

銀雅「……馬鹿野郎」

怜皇の言葉に能力で食事を直した銀雅は怜皇に「馬鹿野郎」と言って抱き締めて押し倒す

銀雅「どんだけ俺が心配してたと思ってんだ」

怜皇「すいません……」

銀雅「……心配させた罰だ  お前が泣いて嫌がっても抱く」

銀雅はずっと探していたのだ……怜皇の事を……

~数時間後~

怜皇「ふぁ……あっ……んん」

銀雅「怜皇」

怜皇「ひっ……そこは……やぁ……」

銀雅  ……本当は強引に抱くつもりなかったんだがな……

それより先に体が動いた

怜皇「っ……ごめ……ん……」

銀雅「怜皇……」

怜皇「ごめん…ごめん……なさい……」

銀雅「謝るな」

不意に怜皇が泣きながら謝罪した……きっと大切な人を護れずに生き残ったからだろう

銀雅「謝るな  怜皇……この時期になっても誠が戻ってこないって事は「未練」が残らなかったからだろう……だから転生してこない……あいつはきっとお前に看取られて死ぬ事を……お前が生き延びてくれる事を願ったんだ思うぞ」

怜皇「銀雅……さ……ん……?」

銀雅「……お前が泣くなら……俺はお前を笑顔にしよう……時間はかかるだろうが……俺はお前の泣き顔が好きじゃない……笑顔が好きだ……戦ってる時や嬉しそうな時、楽しんでる時の笑顔が」

それは銀雅の本音……滅多に言わない言葉

怜皇「……埋めて下さい……俺の心に出来た深い溝を……」

銀雅「任せろ」

~翌日~

怜皇「最終的に「罰」になってませんでしたね」

銀雅「うるせえよ  途中で失神した奴が何言ってんだ」

仁「仲直りしたんですね」

2人「!!??」

翌朝乱れた髪と服を直しながら話をしていると仁が居て2人して驚く

仁「会わせたい方が居るんです」

銀雅「あー……やっと来たか……怜皇行けるか?」

怜皇「一応は」

そう言って怜皇は銀雅の案内の元部屋へ

怜皇「……聖……?」

聖「怜皇……」

聖は生き残っていた……あの戦争で……

怜皇「良かった……朔夜達は?」

聖「生きてる  今はザキラで休養中」

銀雅「越前家の者もザキラに移った  俺達も移るぞ」

と……言う事で……

???「……兄貴」

怜皇「……砺闇」

ザキラに行くと其処には年の離れた弟  砺闇の姿が……

砺闇「どっせい!!!!!!!!!!!!」

怜皇「ぐっ……強くなったな砺闇」

砺闇「何で生きていると言ってくれなかったんだよ!!」

怜皇  銀雅さんと同じ事言ってるよ……

怜皇「悪かったと思ってるよ……砺闇」

砺闇「……生きていて良かった……」

怜皇の腹を思いっきり殴った砺闇は突然涙目になりながら兄  怜皇を抱き締める

怜皇「ごめんな」

砺闇「ほんとだよ……馬鹿兄貴」

怜皇  やっぱりまだ少し子供っぽい

砺闇「零  兄貴」

零「……あの時砺闇の刀を届けて頂き有難うございました」

怜皇「君も強くなったか……」

怜皇  砺闇と比べて昔の面影が……

零の場合微妙に残っていない

朔夜「昔の面影が全くないな……怜皇」

怜皇「朔夜……まぁ片目はもう見えないし髪も銀髪だからなぁ……」

怜皇は元々黒髪

怜皇「ゲホゲホ」

銀雅「怜皇  大丈……」

怜皇が咳をした時……怜皇の手に血がついた……

銀雅「……お前病持ちか?」

怜皇「今日が初めてですよ」

銀雅「仁  少し頼む」

仁「分かりました」

銀雅に「病院に行くぞ」と言われ怜皇は銀雅と共に病院に行った……

そして血液検査の結果で診断されたのは「結核」で能力者は進行が早く致死率が高いと言う……
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