異世界でも油こそ正義!!

雑食ベアー

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準備編

第5話 要注意人物

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 協会を出たミチオは早速、マティーから聞いた宿に向かう。

「ここであっているよな、失礼しま~す」
玄関らしき木の扉を押して中に入り、カウンターらしき所へ歩く。

「いらっしゃいませ、ここは商人協会員の方のみご利用可能ですが」
穏やかな雰囲気をした白髪の老人が問いかけてきた。

「え~と、マティーさんの紹介で来ました。ミチオと申します」

「ほう! 君が話に合ったミチオか、一応、会員証を提示してくれるかね?」
ミチオは先程、手に入れた銅の会員証をカバンから取り出し、老人に見せた。

「うん、問題無いね。ようこそ、さざなみの癒し亭へ!
私は支配人をしているモルトと言う老人だ」

「改めまして、モルトさん。私は料理人のミチオです」

「ほう! 料理人か、珍しいな」

「ん? 珍しい??」

「ふむ、この宿に料理人が来るのは、数年は久しいのでな。
大半は、食事ができる宿に泊まるからのう..
この素泊まり限定の宿では珍しいのじゃ」

「では、食事はどうすれば..」

「基本的には、外の食堂で済まして貰うのだが、お前さんは料理人だからな~
厨房を貸してやっても良いのだが、ブロンズランクではな..」

「シルバーじゃないと貸せないのか? 自分の飯を喰うだけだぞ?」

「少し面倒な話なのだが、商人が建物または建物内の設備を利用する場合には、税金が発生するのだよ。
そして、協会がこの人物だと税金を支払えると認められるのがシルバーランク。
今のお前さんでは、納税できない者として扱われているので利用が出来ない訳じゃ!」

「となると、厨房を借りて仕込みをするのも税金がかかるのか!?」

「そうじゃ、まぁ、この宿に料理人と食事を提供していれば、抜け道はあったのだが諦めろ」

(うわ~、なんだよそのルール! 道理で飲食の屋台が少なかった訳だ)

「この宿の説明に戻るぞ、まず、お前さんの部屋は2階の突き当りにある2号室だ。
鍵はこちらになる。そして、1階に当宿目玉の大浴場がある。
男女別に分かれており、時間はこの紙を見てくれ。
入口はあっちにある。中の脱衣所では体拭きの布があから基本的には手ぶらで入れる」

「料金は?」

「1泊2,000Rだ。
だが、お前さんはしばらく協会で預かると聞いておるので、
滞在費はいらんぞ。預かり期間が終わったら支払ってくれ..」

「わかった。疑問が出たら質問していいかい?」

「忙しくなければ、いいぞ~」

 ミチオは鍵を受け取り、滞在する部屋に移動した。
宿の部屋に入り、ベッドに腰掛けてスマホを取り出したミチオ、HIT CHEFでカツ丼とお茶を購入して一息付いた。

(今日は濃厚な日だったな.. いきなり、異世界に落ちるわ。チュートリアルを受けるわ。露店巡りするわ。商人協会で取引をするわ..)

 HIT CHEFのカツ丼はご飯とカツ重がセパレートしている。カツ重から暖かな卵がとじられているカツを1つ、割りばしで口に運ぶ..

(うん、やっぱりHIT CHEFのカツ丼はいいね~ この味でこの値段! しかし、不思議だなチャージした時、1万円と1万Rが等しく1万Pだからな~、貨幣価値が等しいのだろうか? でも、商品の値段を見ると少しおかしいんだよな~)

 そのように感じるのも仕方がないのだ。何せ、日本の塩を仕入れるポイントと露店で品質の悪い塩を仕入れる金額(R)が等しいのだ。一部の品物は違うが大半のものがこのような事態である。

「更に、魔道具や魔獣の素材ってなんだよ」
異世界ならではの品物である魔力関連の商品をみた時のミチオは「やっぱり、異世界だよ~」と思わず叫んでしまった程だ。

「あ! そうだ!!」
ミチオはセポマから筆記用具とノートを取り寄せた。

(情報が多いのなら書き出してまとめればいい..)
ミチオは本日の中での疑問や考えていることを箇条書きで書き出していく。

◆◆

★当座の目標
・市場調査
・仕込み場所の確保
・屋台を開く
・SP上げ
など..

★努力目標
・食文化の拡大 → どこまで広まればいいのか謎
・ランク上げ → シルバーになって店舗を手に入れたい
など..

◆◆

「う~ん、やることが多いな~ 明日から頑張りますか!!」
一段落したので気を緩めた途端、物凄い眠気に襲われた。

「風呂は一先ずいいや、このまま寝るか..」
本日の疲れが一気に出たミチオには、眠気には勝てず夢の国へ誘われたのだった。

……


 ここで時間を商談終了時に戻す。

「しかし、良かったのですか? 協会長、あの砂糖は確かに凄かったですが、新人に専任担当を付けて特別扱いするほどですか?」
ミスティがマティーに問うた内容は他の受付担当も聞けば頷ける内容だった。

「そういえば、最初から取引を見ていた訳ではなんだったね..
よくお聞き! 先ずはこの真っ白い砂糖、私が協会に入ってから一度も見たことが無いし、噂も聞いたことが無い代物だ。
それに服装やカバンもだ。 ミスティ、あんたは見たことや聞いたことはあるかい?」

「いえ、ありません..」

「今回は砂糖1キロでの取引だが、ミチオはまだ現物を持っているよ! 更には真っ白な塩も持っている。
錬金術師ならば未だしも、ただの料理人が持っている訳が無い、更に砂糖を料理に使うといったから怪しすぎるよ。
そんな怪しい人物を監視しない訳にはいかないよ!」

「砂糖を料理に!?」
ミスティは軽くパニック状態に陥った。
何せ、砂糖は主に薬かポーションの材料となっており、
混ぜ物のない砂糖は、1流の錬金術士が秘伝として所持しているが、ここまでの白さはない..

「なので、協会内では私とミスティが、
外では監視員が、宿ではアイツが監視するようにするよ。
それと明日に屋台の件で協会に来るから少しでもいいから情報を頼んだよ!」

「通常業務は?」

「この案件を最優先で、通常業務は他に振っていいよ! 私がメンバーに連絡しておくから安心して専念しな。
もし、有益な情報を得たらボーナスを支給するよ」

「かしこまりました」

 何気に要監視対象になってしまったミチオの未来は?
果たしてこの都市で飲食店を開くことができるか?
それは、この世界の管理人でも分からない..
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