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新学期
1.体内環境。
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全校生徒が一つの国のように多いこの学校は、朝から賑わっていた。
玄関前の階段を登りきった後で、遥斗は立ち止まった。
「李由ちゃん、大丈夫?」
いまだにうずくまっている李由を横目で確認し、微笑みながら暖かく大きな手で、李由の頭を撫でる。
李由はなんだか恥ずかしくて、顔を隠してしまった。だがしかし、きちんと礼は言う。
「はい、ありがとうございました」
「ん。じゃあ俺は朝練してくるから」
『朝練』の言葉を聞いた時、李由は遥斗の腕から離れた。筋肉でたくましい遥斗の腕をぎゅっと握っていたので、ちょっとだけ寂しかった。
だが朝練の邪魔はできないと思い、李由は小さく手を振った。
「頑張ってくださいね」
「ありがとう」
また、頭を撫でた。
遥斗の後ろ姿を見送った後、李由は反射的にその場にしゃんだ。急なお腹の気持ち悪さが、李由を襲ったのだ。
胃の中をかき混ぜられているような、そんな気持ち悪さと強烈な吐き気。こんなタイミングで拒絶反応が起こるなんて、李由自身もビックリしていた。
しかしこんなところで吐いてしまっては、周りの人に迷惑がかかってしまう。だが李由には移動する気力なんて微塵も無かった。
「う......っ」
嗚咽とともに、胃の中から内容物が込み上げてくる。そして遂に、我慢ができずその場で吐いてしまった。
ドロドロに溶けた朝食と、胃酸。喉が焼けるように痛くて、助けを呼ぼうにも声は出せなかった。
遥斗が居てくれたら。
そんな事を考えても遅く、李由の意識は朦朧としていた。
胃の中はもう空っぽなのに、吐き気は止まらず、李由は胃液を吐き続ける。
「......っは、あ、う...っ」
目からは涙が出る。苦しくて、辛いのに、通り過ぎる人はみんな、気持ち悪がって声もかけて来ない。
座って居るのも辛くなった李由は、その場に倒れこんだ。
__だれか、助けて...っ。
「...い、...うっ、おぇっ」
心の叫びは誰にも届くことのないまま、李由はそのまま意識を手放した。
玄関前の階段を登りきった後で、遥斗は立ち止まった。
「李由ちゃん、大丈夫?」
いまだにうずくまっている李由を横目で確認し、微笑みながら暖かく大きな手で、李由の頭を撫でる。
李由はなんだか恥ずかしくて、顔を隠してしまった。だがしかし、きちんと礼は言う。
「はい、ありがとうございました」
「ん。じゃあ俺は朝練してくるから」
『朝練』の言葉を聞いた時、李由は遥斗の腕から離れた。筋肉でたくましい遥斗の腕をぎゅっと握っていたので、ちょっとだけ寂しかった。
だが朝練の邪魔はできないと思い、李由は小さく手を振った。
「頑張ってくださいね」
「ありがとう」
また、頭を撫でた。
遥斗の後ろ姿を見送った後、李由は反射的にその場にしゃんだ。急なお腹の気持ち悪さが、李由を襲ったのだ。
胃の中をかき混ぜられているような、そんな気持ち悪さと強烈な吐き気。こんなタイミングで拒絶反応が起こるなんて、李由自身もビックリしていた。
しかしこんなところで吐いてしまっては、周りの人に迷惑がかかってしまう。だが李由には移動する気力なんて微塵も無かった。
「う......っ」
嗚咽とともに、胃の中から内容物が込み上げてくる。そして遂に、我慢ができずその場で吐いてしまった。
ドロドロに溶けた朝食と、胃酸。喉が焼けるように痛くて、助けを呼ぼうにも声は出せなかった。
遥斗が居てくれたら。
そんな事を考えても遅く、李由の意識は朦朧としていた。
胃の中はもう空っぽなのに、吐き気は止まらず、李由は胃液を吐き続ける。
「......っは、あ、う...っ」
目からは涙が出る。苦しくて、辛いのに、通り過ぎる人はみんな、気持ち悪がって声もかけて来ない。
座って居るのも辛くなった李由は、その場に倒れこんだ。
__だれか、助けて...っ。
「...い、...うっ、おぇっ」
心の叫びは誰にも届くことのないまま、李由はそのまま意識を手放した。
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