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連休最終日、優子の気比神宮巡参拝と戦災慰霊
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優子と由紀江はそれぞれ別々で休日を過ごしていた。
優子は家にいても、テレビもパソコンもないし、スマホは格安モバイルを使ってはいるものの、家にワイファイ環境もないため使うのを控えている。つまりやることがない。なので、優子はやはり外に出ることにした。
(由紀江さん、お邪魔するのはわるいかな…)
そう思いながら、由紀江のことを考える。しかしやはり由紀江の家にはいかなかった。優子は気比神宮へ向かった。せっかくなので、正面に回り込んで、大鳥居をくぐって参拝した。実は敦賀に来てすぐに由紀江と一回だけ来ていた。その時は、広い境内に驚いた。ただ隅々までは回れていなかったので、今回は境内をいろいろ見て回ろうと思っていた。
とにかく境内社が多い。優子はその一つ一つにお参りした。
裏門近くに気になる場所を見つけた。隣の学校敷地内に不思議な場所がある。
「?」
優子は近くの説明が書いてある石板を読んだ。
それに納得したうえで、参拝した。
優子はこういった説明などを見るのも楽しいなと思った。それは時には狛犬や灯篭などの後ろにも、施工年などが書いてあり、そんなに昔からあるものなのかと、驚くこともしばしばある。優子はそれに目覚め始めていた。
優子はまたもや不思議なものを見つけた。それは気比神宮東参道入り口に立っている石柱だ。表からはたまに通っているので、「気比神宮東参道」と書いてあるのは知っていたが、裏にも、よく見たら側面にもびっしりと文字が書いてある。どうやら人の名前のようだ。そしてそこにはこうも書いてある。『敦賀空襲戦災者」。優子はそれを見て、しばらく立ち止まった。空襲、戦災。空襲とは学校の授業で聞いたことがある。保護施設での授業の時に教わった中に、東京の空襲の話が出たことがある。その空襲かと思った。優子はその空襲がここでもあったのか。そのことが気になりだした。
優子は由紀江に連絡を取った。
「由紀江さん、少しお話いいですか。」
「ん?どうしたの?うちくる?」
「はい。行きます。」
優子は由紀江の家に行った。そして敦賀の戦災のことを聞こうと思った。
「いらっしゃい。どうしたのかな?」
由紀江は優子を招き入れた。そして台所から、オレンジジュースとお菓子を持ってきた。
「あ、すみません。そんな…。」
「いいのいいの。で、どうしたの?」
「今、気比神宮に行ってきて、東参道の石碑で敦賀空襲戦災者と書かれたものを見たのですが、敦賀にもそういったことがあったのかと思って、少し知っていれば聞きたいなと。」
「ああ、よく見つけたね。それはあんまり知られてないけどね。」
由紀江はいつもの柔らかい表情から、ほんの少しうつろな表情に変わった。
「昔ね、敦賀は空襲があったんだよ。三回ね。その合わせての犠牲者の名前が書いてあるの。」
「三回、ですか。空襲って、確か焼夷弾の。」
「そうそう。一回目はね。その焼夷弾。二回目はまた違った空襲。機銃掃射とか小型爆弾とかだったらしい。三回目は模擬原爆。」
「…。」
「重い話なんだよね。まさかこんなに早く優子ちゃんに話すことになるとはね。でも、見つけてくれてありがとね。」
優子は聞き入った。そしてそれはもっと知らなくてはならない話にも思えた。敦賀に住んでいる身として。
「せっかくならさ。近くの、街中に本勝寺っていうお寺があって、そこに戦災慰霊碑があるから、手合わせに行く?」
「はい。行きます。」
優子と由紀江はジュースを飲んだ後、家を出て、気比神宮の横を通り、神楽のアーケードを通って、少し住宅街に入り、歩いて本勝寺へ訪れた。そこには、大きな慰霊碑があった。優子と由紀江はお寺の正面で手を合わせた後、慰霊碑の前へ行き、手を合わせた。
由紀江は仕事をしているときとは全く別の感じでの真面目な表情。優子はそれを少し気にして、慰霊碑に手を合わせた。
二人はまた来た道を歩いて帰った。
「まあね、またそのうち私が知っている限りのことは話そうかな。私も体験したわけじゃないけど、一応直接聞いたり、本で調べたりしたからね。」
優子はその話を知ることは重要だと感じた。それは自分でも理解し、由紀江から感じ取ったものでもあった。
優子は家にいても、テレビもパソコンもないし、スマホは格安モバイルを使ってはいるものの、家にワイファイ環境もないため使うのを控えている。つまりやることがない。なので、優子はやはり外に出ることにした。
(由紀江さん、お邪魔するのはわるいかな…)
そう思いながら、由紀江のことを考える。しかしやはり由紀江の家にはいかなかった。優子は気比神宮へ向かった。せっかくなので、正面に回り込んで、大鳥居をくぐって参拝した。実は敦賀に来てすぐに由紀江と一回だけ来ていた。その時は、広い境内に驚いた。ただ隅々までは回れていなかったので、今回は境内をいろいろ見て回ろうと思っていた。
とにかく境内社が多い。優子はその一つ一つにお参りした。
裏門近くに気になる場所を見つけた。隣の学校敷地内に不思議な場所がある。
「?」
優子は近くの説明が書いてある石板を読んだ。
それに納得したうえで、参拝した。
優子はこういった説明などを見るのも楽しいなと思った。それは時には狛犬や灯篭などの後ろにも、施工年などが書いてあり、そんなに昔からあるものなのかと、驚くこともしばしばある。優子はそれに目覚め始めていた。
優子はまたもや不思議なものを見つけた。それは気比神宮東参道入り口に立っている石柱だ。表からはたまに通っているので、「気比神宮東参道」と書いてあるのは知っていたが、裏にも、よく見たら側面にもびっしりと文字が書いてある。どうやら人の名前のようだ。そしてそこにはこうも書いてある。『敦賀空襲戦災者」。優子はそれを見て、しばらく立ち止まった。空襲、戦災。空襲とは学校の授業で聞いたことがある。保護施設での授業の時に教わった中に、東京の空襲の話が出たことがある。その空襲かと思った。優子はその空襲がここでもあったのか。そのことが気になりだした。
優子は由紀江に連絡を取った。
「由紀江さん、少しお話いいですか。」
「ん?どうしたの?うちくる?」
「はい。行きます。」
優子は由紀江の家に行った。そして敦賀の戦災のことを聞こうと思った。
「いらっしゃい。どうしたのかな?」
由紀江は優子を招き入れた。そして台所から、オレンジジュースとお菓子を持ってきた。
「あ、すみません。そんな…。」
「いいのいいの。で、どうしたの?」
「今、気比神宮に行ってきて、東参道の石碑で敦賀空襲戦災者と書かれたものを見たのですが、敦賀にもそういったことがあったのかと思って、少し知っていれば聞きたいなと。」
「ああ、よく見つけたね。それはあんまり知られてないけどね。」
由紀江はいつもの柔らかい表情から、ほんの少しうつろな表情に変わった。
「昔ね、敦賀は空襲があったんだよ。三回ね。その合わせての犠牲者の名前が書いてあるの。」
「三回、ですか。空襲って、確か焼夷弾の。」
「そうそう。一回目はね。その焼夷弾。二回目はまた違った空襲。機銃掃射とか小型爆弾とかだったらしい。三回目は模擬原爆。」
「…。」
「重い話なんだよね。まさかこんなに早く優子ちゃんに話すことになるとはね。でも、見つけてくれてありがとね。」
優子は聞き入った。そしてそれはもっと知らなくてはならない話にも思えた。敦賀に住んでいる身として。
「せっかくならさ。近くの、街中に本勝寺っていうお寺があって、そこに戦災慰霊碑があるから、手合わせに行く?」
「はい。行きます。」
優子と由紀江はジュースを飲んだ後、家を出て、気比神宮の横を通り、神楽のアーケードを通って、少し住宅街に入り、歩いて本勝寺へ訪れた。そこには、大きな慰霊碑があった。優子と由紀江はお寺の正面で手を合わせた後、慰霊碑の前へ行き、手を合わせた。
由紀江は仕事をしているときとは全く別の感じでの真面目な表情。優子はそれを少し気にして、慰霊碑に手を合わせた。
二人はまた来た道を歩いて帰った。
「まあね、またそのうち私が知っている限りのことは話そうかな。私も体験したわけじゃないけど、一応直接聞いたり、本で調べたりしたからね。」
優子はその話を知ることは重要だと感じた。それは自分でも理解し、由紀江から感じ取ったものでもあった。
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