【R18】神様はいつもきまぐれ+番外!!

テキイチ

文字の大きさ
74 / 198
番外!!

074 スナック戸田は店じまい(煙草を買いに) ③

しおりを挟む
 全治三か月。
 駅の階段でスカートの中を覗かれてることに気づいて。逃げようと方向転換した時に足を踏み外して、転げ落ちて骨折るとか。何やってるんだろう。
 高二だったからまだよかったのかな。高三だと受験に差し障る。

 松葉杖の生活を余儀なくされたのだけど、考えが甘かった。四月の最初に骨折して、文化祭は六月。一番忙しい準備期間に何もできない。全体を取りまとめるようなことはできない分、せめて雑用で貢献したかったのに。

 クラスの出し物を何にするか、ホームルームで話し合うことになった。

「はい」

 川瀬が手を挙げる。手島の親友でもある彼は、穏やかな性格だけどクラスの中心にいるタイプで、影響力があった。

「スナック戸田っていうのはどうかな」

 予想外の発言に思わず目を見開く。私? みんなもそう思ったらしく視線が集中して痛い。

「さすがに高校の文化祭だからアルコールは出せないけど、スナック菓子とソフトドリンクを出してさ。戸田にはスナックのママ役として、カウンターでおもてなししてもらったらいいんじゃないかな」

 ああ、私が座っていても成立するように、だ。
 何もしないという特別扱いが却って苦しいこともある。できることはさせるけど、無理はさせない。川瀬はそういう考え方に長けている。

「戸田、どうかな?」

 そして、この状況なら私も断らないだろうと見越して訊ねるところが。

「みんながそれでよければ、いいよ」

 私がそう言うと、川瀬はほっとしたような表情を浮かべる。

「いいと思うけど、それだけだとちょっと、インパクトに欠けないかな?」

 声の方を見ると、いつもクラスの中心にいる女子だ。口元は笑っているけど、目が笑ってない。それを見て、ああ、珍しく自分が話題の中心じゃないのが、嫌なんだなと悟る。あなたと違って、目立つのが嫌いな人間だっているのに。

「例えば、戸田さんがママのショータイムとして演歌を披露するとか。これなら座っててもできるよね」

 盛り上げたいというよりは、こういう提案をすれば断るだろうとか、恥をかかせてやろうという発想なんだろうな、と考える。
 彼女のようなタイプはいつでも、いかにも全体のことを考えているという体で、自分の要求を織り交ぜてくる。

 別に歌なんか好きじゃない。そもそも音楽に興味がない。でも、このまま引き下がるのはなんだか嫌だな、と珍しく思った。
「うん。いいよ。ただ、私、音楽に疎いから、曲は誰かピックアップしてくれないかな」

 私がそう答えると、予想外だったのかどよめきが起こった。

「きっと盛り上がるよ! 戸田さん、急な提案を受け入れてくれてありがとう!」

 そう言った女子の目は、やっぱり笑っていなかったけれど。



「聞いてみたい。ママの歌声を」

 広瀬ちゃんの目が本気だ。

「……私、音楽興味ないし、上手くないよ」
「上手いとか上手くないとかじゃなく、こう、ハマりそうというか」

 そう言うと広瀬ちゃんはカウンターに何か訊ねに行った。店員さんと会話をし、しばらくして笑顔で戻ってくる。

「戸田ちゃん!」
「何?」
「レーザーディスクのカラオケ、使っていいって!」
「……本気なんだね」

 観念して一曲選ぶ。
 高校を卒業してからずいぶん経つのに、酔うたびに入れてしまっていたナンバー。素面で歌うのは初めてかもしれない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ハイスペミュージシャンは女神(ミューズ)を手放さない!

汐瀬うに
恋愛
雫は失恋し、単身オーストリア旅行へ。そこで素性を隠した男:隆介と出会う。意気投合したふたりは数日を共にしたが、最終日、隆介は雫を残してひと足先にった。スマホのない雫に番号を書いたメモを残したが、それを別れの言葉だと思った雫は連絡せずに日本へ帰国。日本で再会したふたりの恋はすぐに再燃するが、そこには様々な障害が… 互いに惹かれ合う大人の溺愛×運命のラブストーリーです。 ※ムーンライトノベルス・アルファポリス・Nola・Berry'scafeで同時掲載しています

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

お見合いに代理出席したら花嫁になっちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
綾美は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、お見合いの代理出席をする為にホテルへ向かったのだが、そこにいたのは!?

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。 本宮 のい。新社会人1年目。 永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。 なんだけど。 青井 奏。 高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、 和泉 碧。 初恋の相手らしき人も現れた。 幸せの青い鳥は一体どこに。 【完結】 ありがとうございました‼︎

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

処理中です...