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【Verβ編】
11話「ラスト10分の攻防」
しおりを挟む「ランカー上位は伊達じゃねえな……」
「くそおワンチャンないのか?」
「あと10分切ったぞ!」
遠目から見守っているプレイヤーが何やら騒がしいけど無視。
『アキコ! 残り10分! 【SEFIROSU】を倒したおかげで今ランキング1位だぞ! このまま10分間逃げるのも立派な手だが——そうじゃないだろ?」
「うん! 逃げたら運気も逃げる!」
『だよな! アキコ、相手は速い。だけどな、アキコはまだスピノサウルスの本当の力を発揮させていない』
「え? そうなの?」
『持っている力……スキルを全て使うんだ!』
私のHPは残り3割。
剣虎——【ビリけん】は残り4割。
ただこうなってくると、私も彼? 彼女? もお互いに良い一撃を入れられれば勝ちだ。
剣虎が再び青いオーラを纏う。むーまた速くなるのか。
「ほな、アキコちゃん倒してワイのカンペキ勝利や!」
青い残像を残し、剣虎が私の前から消えた。
んー広いところは、危険かな? とりあえず森の中に入ろう!
私は警戒しながら、背後の森へと逃走。後方への突撃だから逃げてない!
「させへんよ」
しかし、先回りした剣虎が進路を塞ぐ。私は構わず突進。しかし、突進を軽く躱され、後ろ足に斬撃。
掠っただけなのに一割近く削られる。
私のHPが残り二割を切った。
「このままちまちま削らせてもらうで!」
剣虎が距離を置き、また疾走の構えを取った。
とりあえずこのままだと駄目だ! 私は急停止するべく、前脚を地面に突き立ててブレーキ代わりに使った。
その瞬間に、心臓が(あれば? だけど)ドクン、と跳ね上がった。世界から、音が消えた。
あれ、なに? 身体が熱い!
「っ!! あかん!!」
剣虎が吼えるように口を開き、こっちに接近してくる。あの青いオーラは纏っているが、なぜか動きがやたらスローに見える。
ふと横を見ると、地面がもこもことゆっくり盛り上がっていくのが見える。
さっき助けたくれたモグラさんかな? と察知して、前傾姿勢の四つ足状態のまま私は念の為、距離をおいた。
その動きだけはスローモーションの世界でいつも通りだった。
そうか……世界がスローに見えるんじゃない……私が——速くなっているんだ。
剣虎が牙をこちらへ向けながらゆっくりと迫る。私は目前でそれを回避。剣虎の瞳孔が大きく開かれる様子すらも見える。
私はスキルの予備動作を行い、目の前を通り過ぎようとする剣虎の首元へと牙を立てた。
【獣脚乱舞】の発動条件が整い、私の身体が勝手に行動。前脚が地面から離れた瞬間に、世界に音が戻った。
「なんでやねーーん!!」
剣虎が鳴きながら私に振り回されている間に、地面からモグラが再び飛び出してきた。爪にはまた赤い光が宿っている。
「アキコ倒して俺の勝ちだああああああ!!」
だけどモグラさんは気付いていない。出てきた自分の真上でスキル【獣脚乱舞】の締めである、叩きつけが行われようとしている事に。
「はい?」
出てきた途端にモグラたたきのように、剣虎で叩き付けられたモグラのHPゲージが割れた。そして同時に剣虎もエフェクトをまき散らし消失。
「うおおおおお!! すげえええええ」
「なんだ今の!!」
「アキコちゃんおめでとおおおお!!」
森から続々と出てきて何やら吼えている獣達。嬉しそうに駆け寄ってくる。
やったー勝った!! みんな祝福してくれているのかな!?
まあ、そうだとしても——
——私は近寄ってきたプレイヤーを全員薙ぎ払った。
「ランキング一位は私だあああああああああ!! 」
私が文字通り吼えると同時に、世界が消えた。
こうして【前々前世オンラインverβ】の……オンライン期間が終了した。
☆☆☆
【アキコ】前々前世オンラインβ版【アキコ】 Part577
122 名前:前世は負け犬
……何あの禍々しい赤いオーラ
123 名前:前世は負け犬
俺の気のせいじゃなけりゃ素早さバフ入ったサーベルタイガーより速くなかった?
124 名前:前世は負け犬
>>123
気のせいじゃない。明らかに速くなった
125 名前:前世は負け犬
駆け寄っていった奴等も皆殺しで草
126 名前:前世は負け犬
お前ら馬鹿だろ
ラスボスがHP減ったら特殊行動するのは当たり前
127 名前:前世は負け犬
やっぱりアキコちゃんラスボス過ぎる
128 名前:前世は負け犬
正式版はよ! アキコを今度こそぶっ倒す!
129 名前:前世は負け犬
あのスキルHPが何割以下で発動じゃないかなあ
まじでチート過ぎる
130 名前:前世は負け犬
>>129
多分だけど前脚を地面に付けるも条件かな
スピノサウルスは四つ足歩行だったって最近の学説で発表されたし
四つ足になると、本気モード? 的な?
131 名前:前世は負け犬
正式版、どうなるんだろうなあ
………………
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