前々前世オンライン 〜前世スピノサウルスだった私、ラスボス扱いされてて泣きたいけど鳴くしかできないから代わりに全プレイヤーを泣かしてやる

虎戸リア

文字の大きさ
19 / 73
【VerΑ編第1章〜ラノアのマイホーム】

19話「ラノアちゃん正気に戻る」

しおりを挟む


「どう? 【前世】は?」

 田辺社長がそう私に聞いてきて、私は驚いていないふりをして、答えた。

「た、楽しんでますよ!」
「ならいいの。なんか、とっても活躍しているみたいね。鈴木さんはなぜか首を捻っていたけど」

 ちなみに、【前世】とは前々前世オンラインの略語で、社内で【前世】と言えばこのゲームを差す。

 えーっとしかし、活躍? したっけな……?

 私は、初日にログインしてあのマイホームを手に入れて以来、ずっとあそこで生産に勤しんでいた。
 いや、言い訳をするわけじゃないけど、どうしても一時間経つとそれぞれの採取ポイントが復活するのが分かってるから、一時間以上放置しておくのが勿体なくて……。

 要するに、私は生産沼にハマってしまったのだ。

 おかげで素材アイテムはそれこそ山のようにある。スキルレベルも上がったし、料理もかなりの数を作れるようになった上に、あの便利鍋を使わず手動で作ると更に効果が上がるという技を見付けてしまった。

 ふふふ……もはや私は採取マスター、料理マスターだ。

 午前の業務が終わり、お昼休憩を挟んで私は会社にあるプレイルームへと移動。

 早速ゲームをスタートする。

 目の前に、いつものマイホームの光景が広がる。スタート地点をここにしたせいで、わざわざあの拠点にいく事はなかった。

 んー。ストーリークエスト、いい加減進めないとかなあ?

 ピロンという通知音と共に、メッセージ。
 
 おー【ミリー】からだ。

『やっほーラノア。今日は学校休みだからインしてるよ~』

 ミリーからログインしていると良くメッセージが飛んできた。
 私はミリーを一度ここに招待しようかな? と思ったけど、プレイヤー狩りが楽しいらしく誘いづらかった。
 Verβの時の醍醐味は何かと聞かれて、プレイヤー狩りと答えてから、より一層ミリーはそれに精を出すようになった。

 ラノアは何やってるの~って聞かれても、色々としか答えなかった。ストーリークエストはやってないと言った時は、『一緒やね~。ストーリーやるときは一緒にやろう』、と約束をしていたのを思い出した。

「そろそろストーリークエストやるかなあ」

 流石にここに引き籠もってるってバレたら怒られそうだ。鈴木さんは分かってる? っぽいけど。

 私はミリーへとメッセージを送った。

『そろそろストーリークエストやろうと思うけど、一緒にどう?』

 よし、送信。

 さて、返事待ちまでの間に持って行くアイテムと武器を選ぶかな。

 バフは何をかけようかな~

 なんて思っているとすぐに、すぐにミリーから通信がかかってきた。
 目の前に半透明のミリーが映る。ミリーはあの白いワンピースではなく、まだら模様の獣の皮で出来た腰巻きと、同じ素材で胸を巻いただけの姿だった。両手には、これまた獣の手のような小手を装備していた。

 いや、ちょっと露出多くない!?

「やっほーミリー久しぶり!」
「ラノアひさしぶり! あれ? ラノア、初期装備?」
「え? あーうん。他持ってないし」
「そうなん? まあいいやそしたらリズナの掲示板前集合にする?」
「いいよー」
「じゃあ今から飛ぶね」 

 通信が切れる。私もウィンドウを開く。こないだ初めて気付いたのだけど、どうやらこのウィンドウから行ったことのある場所は飛べるようだ。

 といっても私は二カ所しかないんだけど。

 私は、【リズナ:中央広場】をタップする。

 すると、ヒュンという音と共に転移。気付けば目の前にはあの広場があった。

「おーなんだか懐かしい」

 見ると、歩いている人達の様子もがらっと変わっている。

 みんななんだか強そうな防具を装備しているし、武器もなんだかゴツかったり装飾が付いていたりと派手になっている。

「おーいラノア」

 ブンブン手を振っているのはミリーだった。

「ひさしぶり~」
「久しぶり! あれなん? 初期装備縛りプレイしてるん?」
「え、縛り? 何ソレ?」
「え?」

 私達は二人してキョトンとしていた。

 あーそういえば武器変えてなかったから、最初にもらった斧槍のままだ。

「変え忘れ? かな?」
「あーなるほど」
「それよりミリーちゃん……なんかワイルドになったね」

 さらしと腰巻きだけの姿のミリーちゃんは元々の可愛さと相まってなんかこう……えっちだ!

「これが動きやすいんよね。ストーリー進めてないから店売りもないし、これ自分で作ったんよ」
「すごい! 私はまだ武器しか作ってないや~」
「へ? 武器?」
「うん。防具は布とか毛皮いるから作れなかった」

 ミリーが首を傾げた。あれ、私なんか変な事言った?

「武器って作ったの? ストーリークエスト進めてないのに?」
「マイホームで作れるよ? 鍛冶スキルいるけど」
「……マイホーム?」
「あ! 武器変えたいし一度マイホーム行こうよ! ミリーを一度招待したかったから!」
「おっけ! でどやっていくの?」
「えっと、どうだったっけ」

 確か、【箱庭の鍵】を取り出して、何処でもいいから適当に刺すとそこが扉になって、マイホームに転移、されるだっけ。これ、ミリーも一緒にいけるのかな? 

「とりあえずパーティ組もっか」

 ミリーがそう言うと、ピロンという通知音と共に、

『ミリーからパーティへと招待されました』

 という表示が出たので、はいをタッチ。

 おお~、自分のHPゲージの左下にミリーの名前とHPゲージが表示された。

「よっしじゃあパーティも組めたし、そのマイホーム? に連れていって!」
「うん、ええっとこうやって」

 私が広場のにある民家の壁に鍵をさすと、そこが一瞬で扉へと変わった。

「え? なにそれ?」
「いいからいいから!」

 私はその扉を開けると、ミリーの手を取って中へと入った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...