前々前世オンライン 〜前世スピノサウルスだった私、ラスボス扱いされてて泣きたいけど鳴くしかできないから代わりに全プレイヤーを泣かしてやる

虎戸リア

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【VerΑ編第2章〜古竜の寝所】

24話「クエストクリア」

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「どっせい!」

 私が気合いを入れて、【ピッケルハンマー】を洞窟の岩壁から飛び出ている結晶に向けて叩き付けた。

「次っ!」

 後ろでは、襲いかかってくる赤いまだら模様の入った熊の群れをミリーがなぎ倒していた。

「ミリー、クエスト分取れたよ~あとレア素材っぽいのも取れた!」
「流石に早いなあ、あ、ごめん一匹そっちいった」

 見ると、ミリーの猛攻をかいくぐった熊が私へと突進してくる。
 ピッケルを装備していると、慌てて装備を変えないといけないのだけど、

「おりゃああ」

 その必要のない私は【ピッケルハンマー】を熊の顔面へと薙ぎ払った。

「ぴぎゃ」

 熊が吹っ飛び壁へと叩き付けられ、消失。経験値とEポイントを入手したと視界の端に表示された。

「お疲れ~。じゃあ納品しにいこか。ダンジョン入口の納品ボックスに収めればおっけー」
「そういやボスいなかったね」
「あーほんとやねえ。まあそういうクエストなんやろ」

 なんか最初のストーリークエストのボスは瞬殺だったし。ちょっとボス戦楽しみにしてたんだけどなあ。

 私とミリーが談笑しながら、入口に戻ると納品ボックスに指定の素材を収めた。
 
 【QUEST CLEAR】

 という文字と共に、経験値とEポイント、あとは消耗品をいくつかゲットした。

「あれ、そういえば【群体レギオン】ってこのクエスト終わったら作れるんだっけ?」
「ってネットには書いてたけど」
「んーそれらしい表示もアイテムもなかったね」
「あたしもなかった。……まあとりあえず、【偽アキコ】のいる方のダンジョン行ってみる?」
「そうしよっか」

 そういえば私もミリーもレベルはそれなりに上がった。私はミリーの助言により、ステータスに振るポイントはまだ取ってあった。今のステータスで当分通用するから、あとで何かに要求されるまで残しておいた方がいいそうだ。

 VerAではレベルアップに必要な経験値とEポイントは別になっていた。経験値でレベル上昇、レベルが1上がる事にステータス値に1ポイント振れるようになり、Eポイントは溜めると前世を強化もしくは進化させる事が出来る。

 だけど、スピちゃんは最初から強い代わりに、進化も見たところ出来なさそうだし強化するのも莫大なEポイントが必要なので、今はただ溜めている状態だ。

「あたしはそろそろ、パンサー辺りに進化させよかなあ。今のところ進化ルートが謎だけどやっぱりサーベルタイガーにしたい」

 どうやらかなり剣虎を気に入っているようだ。ただ、結構先になるみたいだ。

「進化アイテムもいるっぽいし、まだまだ先になるなあ」
「そっかーでも進化したら見た目も変わっちゃうのかなあ。カラカルのその耳も可愛いと思うんだけどなあ」
「あはは、進化させてもアバターは元のままに出来るらしいからそれならそのままにしとく」

 ミリーが笑いながら、自分の耳を触った。あれ、触ると気持ち良いんだよね。

 でもよかった。私もずっとスピちゃんでいれる。まあ進化出来なさそうだし意味ないけど。

「さて、じゃあ、行く?」
「武器、変えるね。閉所でも戦えるように……」

 私は、【ピッケルハンマー】を仕舞い、一対の手斧を取り出した。

 鉱石とグラスタイガーの牙で作った【蛮双斧グラガグラガ】
 一本はアダマンタイト製の黒い刃で、もう片方はミスリルをベースにグラスタイガーの牙を刃にした斧だ。

 ミリーと色々試して気付いたのは、鉱石オンリーや魔獣素材オンリーよりも、混ぜた方が性能が高くなるという点だ。混合素材は作成に失敗しやすくなるけど、私の場合はスキルレベルの高さと器用さ補正で割と成功率は高い。

「ああ、ええねラノア。凄く、荒々しい感が出ててアキコっぽい」
「私そんな荒っぽくないもん!」
「ごめんごめん」

 ミリーが笑いながら凶悪な黒い光を宿す爪——【アダマンクロー】を合わせて謝罪した。

「さてほな——【暴王】狩りや」

 笑いながらも、その目は笑ってなかった。


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