39 / 73
【VerΑ編第3章〜大竜星祭】
39話「|神聖猫姫天使≪ほーりーえんじぇるユーナ≫」
しおりを挟む【神聖猫姫天使(VR)】とハンドルネームが表示されているピンクの少女。
ええっと確か(VR)って付いてると現実の姿じゃないんだっけ。まああんなピンクな子流石に現実には中々いないしね。
でもあれ、なんて読むんだろう?
私はなんとなく気になってその3人に近付く。中身は分かんないけど、女の子が男に絡まれてるのは放っておけない。
民家の壁に背を付けた少女とそれを逃がさないように立つ2人の男。
「とにかく、【暴王】には入らないにゃん」
「お前は知らないかもしれない、お前って地雷プレイヤーって有名だからうち以外どこも入れてくれないぞ?」
「……お前らがそう広めたにゃん」
「あん? 言いがかりは止めろや」
なんか、凄く揉めてる。
「いいから素直にうち入れよ。はは、猫可愛がりしてやんよ?」
「嫌だって言ってるにゃん。入る【群体】は——もう決めている」
「だから言っているだろ! お前なんてどこも入れねえ!」
「あのお……」
私は背を向けている男達に控えめに声を掛けた。少女がこちらを見て、一瞬驚くも、すぐに視線を外す。
「うるせー立て込んでるんだよ! 失せろ!」
男がこちらを見もせず、怒鳴る。
「ユーナが入るのは——この子の【群体】だ……にゃん」
そう言ってその子は私を指差したのだった。
「あん?」
男二人が同時に振り返った。
「あ、こないだの鉱山の人」
私の声と顔を見て、男達の表情が怒りから驚きそして恐怖へと変化していく。
「おおおおおお前ははははは!?」
「ななななんでここに!?」
「またそうやって弱い子いじめてるの? ミリー呼ぼうか?」
私がそう言って、腰にぶら下げていた手斧に手をかけた。
「サーセンっしたああああああああ」
「覚えとけよおおおお」
男達が相変わらず小物感溢れるセリフを吐き捨てながら逃げていった。
ちなみにこういった拠点では、武器での攻撃は全く効果を成さないのだけど……まあ脅しにはなるのかな?
「ふう……大丈夫? ええっと……しんせい……ねこひめてんし?」
「ほーりーえんじぇるユーナ、だにゃん。ユーナでいいにゃん。よろしくにゃん」
少女がにっこりと笑いながら右手を差し出してきた。なぜか私はその動きに強烈な違和感を抱いた。
握手を求めるその動きがなんというかあまりにも堂に入っていて、少女らしくなかった。
私は慌ててそれを握り返した。
派手なピンクの髪やドレスで目立たないけど。改めて見るととても可愛い女の子だった。目元が優しげで、全体的に顔のパーツが柔和で可愛らしい。
「あ、えっとラノアです」
「知ってるにゃん。いつも見てたにゃん」
「へ?」
「移動するにゃん。お礼をしたい」
「あ、うん」
なんというか有無を言わせない言動だった。私は大人しくユーナちゃんのあとに付いていった。
街外れにいくと、ユーナちゃんが看板も何もない店へと入っていく。
「そこ入って大丈夫なの!?」
「大丈夫にゃん。一見さんお断りだけど、ユーナは顔パスにゃん」
恐る恐る一緒に入ると、暗い入り口に、一人のタキシード姿の男性が立っていた。上に名前が表示されていないのでNPCだろう。
「二人にゃん。VIP席がいいにゃん」
「かしこまりました、ほーりーえんじぇるユーナ様。どうぞ」
タキシードさんが私とユーナちゃんを案内する。途中にバーカウンターがあって、数人がそこで静かに飲んでいた。その後ろを通り過ぎて、個室へと入る。
「オーダーは任せるにゃん。てきとうでいい」
「かしこまりました。お連れ様は何か苦手なお酒はございますか?」
「へ? あ、なんでも大丈夫です」
「かしこまりました。ではごゆっくり」
個室には高そうな調度品が置いてあった。狭さを感じない配置にセンスを感じる。
「ここは、課金を一定以上しているプレイヤーだけが入れる店にゃん」
「そうなんだ……あはは凄いねユーナちゃん。あ、ちゃん付けで良かったかな!?」
しまった。心の中でちゃん付けしていたのをそのまま出してしまった!
「フフ……やっぱりラノアちゃんは面白い。良い、むしろ嬉しい。是非ユーナちゃんと呼んであげてくれ」
「ん? あーうん分かったよユーナちゃん」
その後ユーナちゃんはこれまた自然な所作で左胸へと手を持って行ったが、途中でその動きを止めた。
「おっと……しまった。なんでもないにゃん」
「ええっと、さっきは何で揉めてたの?」
「【暴王】に入れって誘われたので断っただけにゃん」
「妙に強引だったね。みんなに対してあんな感じなのかな?」
「……わかんないにゃん。でも助かった。ありがとう」
そう言って、ユーナちゃんが頭を下げたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。
霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半……
まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。
そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。
そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。
だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!!
しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。
ーーそれは《竜族語》
レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。
こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。
それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。
一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた……
これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。
※30話程で完結します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる