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【記録3】頼むから!巻き込まないで!!
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魔力が減ってないって分かったせいで、リレイがしてくれてた魔力の補充が無くなってしまった。
補充つってもやってることはキスなんだけど……気持ち良くてコッソリ楽しみにしてたのに、身体が軽い嬉しさで余計なことを言ってしまった。
キスのお預けを食らって思ったよりショックを受けた自分が情けなくて、逃げるみたいに外に出て。体動かして落ち着いた頃に帰ってきたらリレイとイチェストが二人っきりで向かい合ってた。
……ちょっと動いたらキス出来そうな距離で。
頭に血が昇って色々喚いたと思う。だって、我慢出来なかったから。そんな至近距離で見つめあってた事も、相談事の相手に自分よりイチェストを選んだことも。
「で、何相談してたんだよ」
部屋に戻って問い詰めると、リレイはへらっと笑った。
「まぁ、ちょっとな」
「ちょっとならオレにだって話せるだろ!? 何でいっつも頼ってくんないんだよ!」
相棒はいつもそうだ。黙って考えて、一人で決めて、知ってる事を教えてくれない。教えてくれたと思ったら……急に自分を置いていってしまう。
また何か悩んでるなら居なくなる前に聞き出さないと。怖い。また部屋に一人ぼっちになったりしたら立ち上がれるか分からない。
「……本当に言っていいのか?」
「そう言ってんだろ!」
そんなオレの気持ちなんか知らないで、リレイはちょっとニヤつきながら見つめてくる。腹立ち紛れに答えると「そうか」って頷いてハッキリとにんまり笑った。
「なら……ハーファとキスがしたい」
「……は?」
「毎日していたから、キスをしないと物足りない」
「あ……それ、は」
オレも同じことを考えてた。嬉しい。リレイもあの時間が惜しいと思ってくれてるんだ。
なら自分からしてもいいだろうかと相棒に近付くと、リレイの様子が少しおかしいことに気が付いた。高揚してるっていうか、興奮してるというか……いつも胡散臭い笑顔浮かべてて、あんまり感情が読めるタイプじゃないのに。
「ハーファを押し倒して、生まれたままの一糸纏わぬ姿にさせて、啼かせたい」
「え……?」
にんまり微笑んだまま、リレイはじりじりと寄ってくる。
裸一貫にされて泣くほど虐め抜かれるっていうのか。相棒をそんなに怒らせてしまったんだろうか。全然身に覚えがない。
そもそもリレイが本気で怒ることなんて滅多に無い。今日だってずっと優しかったのに。
「お、オレ……拷問される程のことしでかしてたか……?」
恐る恐るリレイに尋ねてみると、拷問?と一瞬キョトンとして、ぶはっと吹き出した。
「そうじゃない。ハーファと裸で抱き合いたい。キス以上の事をしたいんだ」
何か全然違う回答が返ってきた。何だよ紛らわしいな。
でも……キス以上って、その。
前に言ってた、最後まで……って、やつ、だよな、これ。
「っ……な、なんつー相談してんだよ……」
「話せと言っただろう? なぁ。ハーファと一線を越えた関係になるには、どうしたら良いと思う?」
真っ赤になるオレにニヤニヤ笑いながら、リレイはじっとこっちを見つめていた……。
「ってさぁ! 何でオレにそんなこと聞くんだってんだよ!」
「ハーファが相談しろって言ったからだろ」
「言ったけど! あんなのどうしたらいいんだよ!!」
わーわー喚く仲間の声をBGMに、今度はこっちかよと内心げんなりしながらページをめくった。
何でいちいち俺挟むんだよ……良い仲なんだから当人同士で解決してくれよ……。
「したいならすりゃいいし、したくないならしなきゃいいだろ」
のんびり読書に耽っていた所を邪魔され、イチェストは少しふて腐れ気味である。
「そ、れはそう、だけど……オレそういうの全然だし……」
「それこそトルリレイエに教わればいいだろ。恋人なんだし」
むしろ初な反応を楽しんでいる様に見えるし、ハーファが恥じるほどの事ではないと思われる。いっそ喜んでアレコレ教え込みそうだ。
そういうの詳しそうだし……というのは辛うじて言わずにおいた。余計な火種にはなるまい。
「イチェストはその、キス以上のこと……具体的に知ってるか?」
「まぁ俺も男の子なんで? お子様なハーファとは違うのだよ」
ちょーっと熱心に市中のエロ本でオベンキョーした程度だけどな!
神殿は潔癖な上長が多いし、神官兵は魔物退治やら警備やら内務の助っ人やらこき使われるし。信徒の皆さんやシスターに手を出そうものなら大騒ぎになるし、情報源はそれくらいしかない。実地なんてもっての他。
逆に冒険者は開けっ広げにそういうお色気サービスが普通にあって、驚かされまくってるけど……。
「教えてくれ」
ちょっと思考を飛ばしてる間に、ハーファがすぐそこまでやって来ていた。
「ん? 何を」
「キス以上のこと。どうすんのか具体的に教えてくれ」
待ってくれ、地雷が真っ正面から向かってくるんだが??
「絶対嫌だ。ろくなことにならないの目に見えてるし」
「何でだよ! こんなこと頼めるのイチェストしかいねぇんだよ。なぁ」
頼むなそんなこと! どーせエロ本渡したってよく分からんって言い出すんだろお前!
神官兵辞める前だって、ハーファはエロ本に興味津々だった俺らをスルーして訓練していた。元々興味の薄かった事を教えるのは骨が折れるし、ハーファの場合は恋人サマにばれたら本気で棺桶の中へ頭からねじ込まれそうだ。
…………。
うん、ダメだ。断固拒否。拒否に限る。
「大体何で俺なんだよトルリレイエに手取り足取り腰取り教えて貰えって」
「恋人に一からお任せで全部教えて貰うとか、カッコ悪いじゃねーか! なぁ頼む!」
「はぁー!? キスすら初めてだった奴が今更何気にしてんだよ!」
キスが初めてなら普通にその先も初めてだろうが! というか変に手慣れてたら血眼になって犯人捜し始めるだろあの魔術師!!
……そこまで考えて、余りにも現実味がある妄想に早くも背筋がゾッとした。
「俺だって神殿暮らししてんだから詳しい訳じゃ無いしっていうか男同士の事なんか知らな……おいコラ乗って来んな!」
俺が逃げようとしたのに気付いたのか素早く膝の上に乗ってきた。格闘スタイルなせいか戦闘職の割に身軽なハーファだけど、やっぱり筋肉のついた体は少し重くて身動きがとれない。
何とか逃げ出そうと悪戦苦闘してると、やたら真剣な顔がずいっと近付いてくる。
お前トルリレイエと俺が近いだの何だの喚いてただろ……我が振り直せよ……。
「頼む! キス以上の事もしたいんだ!!」
大声で変なこと言うんじゃねぇ――ッッ!
咄嗟に声が出なくて心の中で思いっきりそう叫んだ瞬間。
「……へぇ?」
恐ろしく冷ややかで低い声が、部屋の中に響いた。
「あ……リレイ、お帰り」
お帰りじゃねぇよバ――――――カ!!
事の重大さがまるで分かってない風のハーファに心の中とはいえ中指を立ててしまった。
お前が俺の上に乗っかって「キス以上の事もしたいんだ!」はどう考えてもヤバイだろ! 棺桶が一気に近付いて来ただろ俺に!!
「ハーファ。イチェストと一体何をするつもりだったんだ?」
「えっ。あの、それは……えっと」
リレイにじっと見つめられて、ぼ、とハーファの顔が一気に赤くなった。
いやお前すげぇよ、こんだけ怒ってますって気配出してる相手に照れてるだけで済んでるお前は本当に凄い。【眼】の能力使ってないとマジでポンコツ。むしろ使ってても鈍感すぎて分かってなさそう。
ちょっとはビビれよ。その態度は絶対誤解されたぞ今。
「っ……な、なんでもないっ! オレっ……部屋戻る!」
「は? あっおいっ! 一人で逃げんなァァァアッ!!」
顔を赤くして部屋を出ていくハーファに血の気が引いた。こんな誤解まみれの状況にトルリレイエと置いておかれたら精神の磨耗で死んでしまう。
必死でハーファに続いて部屋を出ようとした……けれど。
「イチェスト」
遅かった。物凄い勢いで魔力の壁が出口を塞いで、後ろからガッと腕を捕まれる。
盾の神官兵でもないのに障壁張るのがお早いことで……。
「…………ナンデゴザイマショウカ」
「吐け。事の経緯を洗いざらい、包み隠さず」
向けられる声は低いを通り越してドスが利いている。俺の腕を掴んで見上げているであろうトルリレイエの顔を、とても真正面からは見られなかった。
……悪いな、ハーファ。
置き去りで逃げられた俺に、お前に関する守秘義務を守る気は一切無いからな!! 四の五の言ってないでさっさと腹括れバーカバーカ!!!
補充つってもやってることはキスなんだけど……気持ち良くてコッソリ楽しみにしてたのに、身体が軽い嬉しさで余計なことを言ってしまった。
キスのお預けを食らって思ったよりショックを受けた自分が情けなくて、逃げるみたいに外に出て。体動かして落ち着いた頃に帰ってきたらリレイとイチェストが二人っきりで向かい合ってた。
……ちょっと動いたらキス出来そうな距離で。
頭に血が昇って色々喚いたと思う。だって、我慢出来なかったから。そんな至近距離で見つめあってた事も、相談事の相手に自分よりイチェストを選んだことも。
「で、何相談してたんだよ」
部屋に戻って問い詰めると、リレイはへらっと笑った。
「まぁ、ちょっとな」
「ちょっとならオレにだって話せるだろ!? 何でいっつも頼ってくんないんだよ!」
相棒はいつもそうだ。黙って考えて、一人で決めて、知ってる事を教えてくれない。教えてくれたと思ったら……急に自分を置いていってしまう。
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「……本当に言っていいのか?」
「そう言ってんだろ!」
そんなオレの気持ちなんか知らないで、リレイはちょっとニヤつきながら見つめてくる。腹立ち紛れに答えると「そうか」って頷いてハッキリとにんまり笑った。
「なら……ハーファとキスがしたい」
「……は?」
「毎日していたから、キスをしないと物足りない」
「あ……それ、は」
オレも同じことを考えてた。嬉しい。リレイもあの時間が惜しいと思ってくれてるんだ。
なら自分からしてもいいだろうかと相棒に近付くと、リレイの様子が少しおかしいことに気が付いた。高揚してるっていうか、興奮してるというか……いつも胡散臭い笑顔浮かべてて、あんまり感情が読めるタイプじゃないのに。
「ハーファを押し倒して、生まれたままの一糸纏わぬ姿にさせて、啼かせたい」
「え……?」
にんまり微笑んだまま、リレイはじりじりと寄ってくる。
裸一貫にされて泣くほど虐め抜かれるっていうのか。相棒をそんなに怒らせてしまったんだろうか。全然身に覚えがない。
そもそもリレイが本気で怒ることなんて滅多に無い。今日だってずっと優しかったのに。
「お、オレ……拷問される程のことしでかしてたか……?」
恐る恐るリレイに尋ねてみると、拷問?と一瞬キョトンとして、ぶはっと吹き出した。
「そうじゃない。ハーファと裸で抱き合いたい。キス以上の事をしたいんだ」
何か全然違う回答が返ってきた。何だよ紛らわしいな。
でも……キス以上って、その。
前に言ってた、最後まで……って、やつ、だよな、これ。
「っ……な、なんつー相談してんだよ……」
「話せと言っただろう? なぁ。ハーファと一線を越えた関係になるには、どうしたら良いと思う?」
真っ赤になるオレにニヤニヤ笑いながら、リレイはじっとこっちを見つめていた……。
「ってさぁ! 何でオレにそんなこと聞くんだってんだよ!」
「ハーファが相談しろって言ったからだろ」
「言ったけど! あんなのどうしたらいいんだよ!!」
わーわー喚く仲間の声をBGMに、今度はこっちかよと内心げんなりしながらページをめくった。
何でいちいち俺挟むんだよ……良い仲なんだから当人同士で解決してくれよ……。
「したいならすりゃいいし、したくないならしなきゃいいだろ」
のんびり読書に耽っていた所を邪魔され、イチェストは少しふて腐れ気味である。
「そ、れはそう、だけど……オレそういうの全然だし……」
「それこそトルリレイエに教わればいいだろ。恋人なんだし」
むしろ初な反応を楽しんでいる様に見えるし、ハーファが恥じるほどの事ではないと思われる。いっそ喜んでアレコレ教え込みそうだ。
そういうの詳しそうだし……というのは辛うじて言わずにおいた。余計な火種にはなるまい。
「イチェストはその、キス以上のこと……具体的に知ってるか?」
「まぁ俺も男の子なんで? お子様なハーファとは違うのだよ」
ちょーっと熱心に市中のエロ本でオベンキョーした程度だけどな!
神殿は潔癖な上長が多いし、神官兵は魔物退治やら警備やら内務の助っ人やらこき使われるし。信徒の皆さんやシスターに手を出そうものなら大騒ぎになるし、情報源はそれくらいしかない。実地なんてもっての他。
逆に冒険者は開けっ広げにそういうお色気サービスが普通にあって、驚かされまくってるけど……。
「教えてくれ」
ちょっと思考を飛ばしてる間に、ハーファがすぐそこまでやって来ていた。
「ん? 何を」
「キス以上のこと。どうすんのか具体的に教えてくれ」
待ってくれ、地雷が真っ正面から向かってくるんだが??
「絶対嫌だ。ろくなことにならないの目に見えてるし」
「何でだよ! こんなこと頼めるのイチェストしかいねぇんだよ。なぁ」
頼むなそんなこと! どーせエロ本渡したってよく分からんって言い出すんだろお前!
神官兵辞める前だって、ハーファはエロ本に興味津々だった俺らをスルーして訓練していた。元々興味の薄かった事を教えるのは骨が折れるし、ハーファの場合は恋人サマにばれたら本気で棺桶の中へ頭からねじ込まれそうだ。
…………。
うん、ダメだ。断固拒否。拒否に限る。
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キスが初めてなら普通にその先も初めてだろうが! というか変に手慣れてたら血眼になって犯人捜し始めるだろあの魔術師!!
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何とか逃げ出そうと悪戦苦闘してると、やたら真剣な顔がずいっと近付いてくる。
お前トルリレイエと俺が近いだの何だの喚いてただろ……我が振り直せよ……。
「頼む! キス以上の事もしたいんだ!!」
大声で変なこと言うんじゃねぇ――ッッ!
咄嗟に声が出なくて心の中で思いっきりそう叫んだ瞬間。
「……へぇ?」
恐ろしく冷ややかで低い声が、部屋の中に響いた。
「あ……リレイ、お帰り」
お帰りじゃねぇよバ――――――カ!!
事の重大さがまるで分かってない風のハーファに心の中とはいえ中指を立ててしまった。
お前が俺の上に乗っかって「キス以上の事もしたいんだ!」はどう考えてもヤバイだろ! 棺桶が一気に近付いて来ただろ俺に!!
「ハーファ。イチェストと一体何をするつもりだったんだ?」
「えっ。あの、それは……えっと」
リレイにじっと見つめられて、ぼ、とハーファの顔が一気に赤くなった。
いやお前すげぇよ、こんだけ怒ってますって気配出してる相手に照れてるだけで済んでるお前は本当に凄い。【眼】の能力使ってないとマジでポンコツ。むしろ使ってても鈍感すぎて分かってなさそう。
ちょっとはビビれよ。その態度は絶対誤解されたぞ今。
「っ……な、なんでもないっ! オレっ……部屋戻る!」
「は? あっおいっ! 一人で逃げんなァァァアッ!!」
顔を赤くして部屋を出ていくハーファに血の気が引いた。こんな誤解まみれの状況にトルリレイエと置いておかれたら精神の磨耗で死んでしまう。
必死でハーファに続いて部屋を出ようとした……けれど。
「イチェスト」
遅かった。物凄い勢いで魔力の壁が出口を塞いで、後ろからガッと腕を捕まれる。
盾の神官兵でもないのに障壁張るのがお早いことで……。
「…………ナンデゴザイマショウカ」
「吐け。事の経緯を洗いざらい、包み隠さず」
向けられる声は低いを通り越してドスが利いている。俺の腕を掴んで見上げているであろうトルリレイエの顔を、とても真正面からは見られなかった。
……悪いな、ハーファ。
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