拗らせ王子は悪役令嬢を溺愛する。

平山美久

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拗らせ王子視点

可愛い婚約者

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彼女との出会いは
父上の誕生を祝う席で
父上に挨拶に来たアンシュタイン公が彼女を俺たちに紹介した時だった。

少しおどおどとした彼女は
アンシュタイン公に手を引かれながらやってきた。
アンシュタイン公の後ろに少し隠れながらこちらを見る彼女は
サラサラのピンクブラウンの髪は肩まで伸びていて肌の色は透明感のある色白に
ぱっちりとしたクリクリの目の可愛らしい女の子だった。

父上が彼女の目線に合わせてしゃがみ
父上と俺の自己紹介をすると
慌てて少し噛みながら挨拶してきた。

そのおどおどしている彼女が
とっても可愛く見えたのだ。

それからアンシュタイン公が
職務についている間に一緒にやってくる彼女と帰る時間まで遊んだ。

時には一緒に本を読んだり
城の中にある庭園をかけっこしたり、
一緒に昼寝をしたり。

アンシュタイン公が戻ってくるまでの
時間を彼女とずっと過ごしていた。

ある時彼女はお菓子が大好きだと言ったから
それならばと俺が一番好きなお菓子を
用意してあげた。

キラキラと目を輝かせて一口パクリと食べた瞬間、
クリクリとした目は途端に細められ
屈託のない笑顔で美味しい!と言う彼女をみてこの笑顔をずっと近くで見ていたい。
そう思ったのだ。

そしてその時俺は彼女に恋をした。

その夜、父上に彼女と婚約がしたいと伝えた。
父上はそうかそうかと二つ返事ですごく喜んでくれた。

元々父上とアンシュタイン公は小さい頃からの友人同士で国王となった父上を
アンシュタイン公は宰相として支えてくれるほどの信頼関係があったし
アンシュタイン家はこの国の3公のひとつのため充分に彼女と婚約できる環境だった。

だけど俺から彼女と婚約したいと言うのはあまりにも恥ずかしすぎる。
それに断れることを恐れた俺は父上に頼んで王命としてこの婚約を成立してもらうことにした。


そして翌日には彼女は
俺の婚約者になったのだ。


それからというものこの国の次期国王の
王妃になるのだからと彼女にはたくさんの教師がつき毎日、何時間も
王妃に向けての勉強が始まったのだ。

もちろん同じように次期国王になるという俺にもたくさんの勉強が待ち構えていた。

ふたりで遊ぶ時間は瞬く間に減っていった。

俺は彼女に会いたくなって時折、勉強から抜け出してはこっそりシェニーを覗きに行ったりもした。 
真剣な表情で勉強している彼女の横顔はとても綺麗で可憐で。
その顔を見ると自分ももっと頑張らないとと思っては部屋に戻って先生の授業を受けていた。

彼女の横にたつ立派な国王になるために。


しかし、そんな日々が続くにつれ
シェニーは俺のことを厳しく接してきたのだった。
はじめは俺のために怒ってくれてるのが
嬉しかった。
でもいつも彼女は

そんなんでは今の国王様にはとても及びませんよ。

国王様を見習ってください。

あなたは次期国王様なんですよ。
それでは国王様が安心して退位できません。

等々、彼女はいつも父上のことばかり。父上と俺を比較ばかりしていた。
彼女の頭には父上しかないのか。
彼女の中には俺はいないのか?
そんなモヤモヤした気持ちが俺の中に段々と広がっていく。

シェニーは俺のこと好き?


思えば彼女の気持ちなんて確かめたことなんかなかったのだ。

王命という形で婚約してしまったのだから彼女はこの婚約をどう思ったのだろう。
もしかしたら本当は嫌なんじゃないか?
本当は婚約なんかしたくなかったのではないか?
そう思ってしまえば不安でしかなかった。

それでも勉強の合間の休憩には
俺のところにやってきて一緒に時間を過ごしていた。
しかしその休憩の間ですら彼女は勉強ばかりしていた。

そして一緒にいる時間は
それまでよりもかなり短く
もっと一緒にいたい。もっと会いたい。
こっちをみて。俺をみて。ねえシェニー?
想いは募らせていくばかりで
真剣に勉強している彼女を俺はただ黙ってじっと見つめることが増えていった。

ある時から
勉強ばかりしている彼女の気を引きたくなって
教本を奪って投げ捨てたり
彼女の綺麗な髪を一つに結んでいるゴムをほどいてみたり
その可愛い頬をつねってみたり。
彼女にちょっかいばかりかけるようになった。

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