拗らせ王子は悪役令嬢を溺愛する。

平山美久

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シェニー視点

変化

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朝、学園に着くと
周りの人たちが心配して近寄って
きてくれた。

先日の昼食以来
クラスメイトの方達と仲良くなれて
すごく嬉しい。

クラスメイトの1人が
こないだのアインス様への態度が
悪くて王太子様の怒りを買ったことで
2日も休んだって言う噂が回ってるっていうのを聞いた。


ん、それも一理あるのかも。


たしかに2日間幸せな時間を過ごしたから
私がアインス様を無視したのを
すっかり忘れていた。

ガラッと扉が開くと周りが一瞬息をするのやめる。

アインス様が教室に入ってきた。

「アインス様!おはようございます。」

私は駆け寄っていつものように
挨拶をした。

それを見た周りは
仲直りしたのか。とか
強制されてるとか。

「ああ。」

一言だけ言うと彼は座って
私より逆の方に頬杖をついて向く。

やっぱり強制なのでは?
と言う声が強くなっていたが

ぶっきらぼうにみえて実は耳まで真っ赤にしているのがよくわかる。

「では、私はこれで。」

クスッ笑って言った後、
軽く会釈をして自分の席に戻ろうとしたら
慌てて、アインス様がこっちを見た。

「いや、待て!えと、あー…次の授業の予習を頼む。わからないところを教えろ。」


いそいそとカバンの中から授業の教科書をだしてここだ。と指を指す。

でもなにを慌てたのか教科書は逆向きで
思わず笑ってしまう。

「あはは。アインス様。逆さまだと、わかるものもわからないですよ。」

「うっさい。黙れ。いいから授業が始まるまでこれを読め。」

そんな私たちをみて周りは
これからどうなるの?という不安な声が消え、いつしか温かい目で見守っていた気がする。


次の休み時間にはアインス様
自ら私の前の席に座って
今度は宿題していないからこれをやって。

と教科書と紙とペンを持ってきた。


その次の休み時間は私から
彼の元に行くと頬をつねられた。


そしてお昼の時間。
こないだと同じように皆様と
食べようとした時、

「シェニー。行くぞ。みんな悪いな。」

いつもならサラさんのとこに真っ先に向かうはずが彼は私を迎えにきた。

みんなも私も驚いた。
今日は朝から確かにいつもと違っていたけど
まさか昼食に迎えに来るなんて
しかも一言皆様に声をかけるなんて。


「王太子様のお迎えなんて素敵!どうぞ!どうぞ!」

誰かが言うとアインス様は私の手をとり
教室を後にした。

胸が少し熱くなる。


けれどある教室に入っていくと
その熱は途端に冷えていく。


「アインス様!」

窓際の一番後ろにお弁当を持って立っている彼女はサラ。

華奢で小柄で顔立ちもいい。
誰がどうみても彼女は可愛くて。


無意識のうちにアインス様の手を
キュッと握り返していた。

「サラ。いくぞ。」

サラさんは何故かニヤニヤとしながら
はぁーい。と言って
私と反対のアインス様の横に並んだ。

「今日のお弁当はサンドイッチです。
先日、養父様が出張から帰ってきた時にいただいたものを入れてみました。」

「変なもんじゃないよな。」

「アインス様なら絶対気に入ります!」

廊下を3人で歩く。
2人の会話についていけない。


黒いモヤモヤとしたものが
私の中で広がっていく。

嫉妬。

わかっていたはずなのに。
覚悟を決めたはずなのに。

向かう足取りが急激に重くなって
ツンと彼の手を引っ張ってしまった。

「バカだな。」

彼は立ち止まりふっと笑って私の頭をわしゃっとした。

「行くぞ。」

そうしていつものあの中庭の奥のベンチに向かった。

少しだけ心が軽くなった気がした。


その中庭の奥のベンチにはすでに先約がいた。

「やぁ。御機嫌よう。」


爽やかな笑顔で彼は挨拶をした。

「あ、マーケル様。御機嫌よう。」

「なんで、お前がいるんだよ。」

明らかに不機嫌になるアインス様を
横目にマーケル様は言った。

「今日から僕も皆さんと一緒してもいいですか?」


こうして異色の4人でのランチが始まった。


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