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シェニー視点
ファーストキス?
しおりを挟む「シェニー様。お身体はもう大丈夫なんでしょうか?」
「あ、はい。おかげさまで元気になりました。」
「それは良かった。交流会の時に会えず残念でした。」
さっきからマーケル様は
私とばかりお話しされて
アインス様達の方には一切見向きもしない。
アインス様の顔がどんどん
鬼のような血相になっていくのを
チラチラと見ながら
私は次第に焦っていく。
急に彼が言った。
「サラ!それ食べさせて。」
「え、…んーわかりました。はい、あーん」
サラさんはチラッと私たち2人を見てから
自然に彼の口に持っていく。
そのやり取りをみて
さっきの嫉妬がまたぐるぐると渦を巻いていく。
「ふ。シェニーも食べさせてやろうか?」
「結構です。」
ふんとして自分のお弁当を口に運ぶ。
「おや、シェニー様。お口についてますよ。」
マーケル様が私の口にそっと手を出して
パン屑をとる。恥ずかしくて一気に顔に熱がこもる。
「あ、すみません。ありがとうございます。」
それをみたアインス様の機嫌がさらに悪くなって
「マーケル…。お前そろそろ生徒会室に戻れよ。昼はいつも生徒会室で仕事してるって聞いたぞ。」
アインス様の眉がピクピク動いて
今にも怒りだしそうだった。
「ああ、大丈夫です。副会長に任せてるし。それに私はシェニー様と一緒にお昼をしたかったので。」
え?私?
てっきりアインス様と仲良くなりたくて
一緒にしたのかと思った。
「だから、。シェニーは俺の婚約者だからむやみに近寄るなって言ってるだろ。」
「王太子様だってサラさん連れてきてるじゃないですか。ならシェニー様の話し相手くらい僕がやりますんで、どうぞお二人は仲良くお話しください。」
「別にお前がシェニーの相手をしなくていんだよ。というかお前に関係ないだろ。」
持っているスプーンがだんだん
形を変え始めているのが見える。
「いや、全然関係あるんで。シェニー様の相手は僕がします。なので王太子様はお好きなだけサラさんと仲良くしてください。」
もうなんの話をしてるのか
わからなくて2人を止めようとした時
ちょうどタイミングよく昼休みが終わる鐘がなった。
こんな空気の悪い場所から
さっさと逃れたい。
急いで後を片して私は先に帰ろうとする。
「それでは、皆さま。今日は楽しかったです。マーケル様、サラさんでは。」
会釈をして慌てて教室の方に戻った。
サラさんとアインス様が仲良いところを
見るの憂鬱だったから
マーケル様がきて少しでも
緩和されたらいいと思ったけど
あの2人仲が悪いみたいで
逆にすごく居づらい。びっくり!
教室に入る一歩手前で
後ろから私を呼ぶ声がして振り返ると
アインス様が息を切らしてやってきた。
「シェニー足意外に早いな。」
そういえば早く帰りたくて
淑女らしからぬ速さで戻った気がする。
「いえ、そのつもりはな」
言い終わる前に口元を彼の袖で
強くゴシゴシされる。
「ちょ。あいんすさま!いたい!」
「消毒だ。ばか。」
むすっとして更に強く擦る。
なんの消毒なのだ。
ゴシゴシしてたかと思えば
私の両頬を片手でむぎゅっとつまむ。
「お前。絶対マーケルにだけは近づくなよ。やつは危険。敵だ敵。」
いや、時期宰相になる方です。
あなたと一緒に国を守る方ですよ。
敵じゃないでしょ。
つままれて何もいえないので
目をじっとみて訴えると
「……シェニーが悪い。」
そう言って顔に影ができたかと思うと
目の前は彼の顔でいっぱいになり
驚いた瞬間、チュッと唇を奪われた。
私のファーストキス。
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