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初めての王都~ルカside~
しおりを挟む「人がいっぱいだな!」
「はい、手。はぐれたら大変だからね。」
「俺は子供じゃない。」
転移ゲートを通り王都に着いた俺達は、馬車を降りると徒歩で家へと向かった。
ロウは馬車を降りるときも、歩くときも、やたらと俺の手を引きたがった。昔は俺が引いていたのに。
「だからこれはエスコートだってば。貴族社会では普通なんだよ?」
「男にもするのか?」
「……基本は男性が女性にするものなんだけど……ほらルー兄さんは来たばかりでなれない事ばかりでしょ?道も慣れてないし、人も多いし、だから…」
「……わかったよ。ほら。」
「え。」
「エスコート…してくれるんだろ?」
「うん!」
ロウはパァァァっと笑顔になると俺の右手を取って歩き出した。俺出したの左手なんだけど。
今歩いている道はメインの通りらしく、店も多く人通りも多い。
見渡せる限りだけで村の人口を上回りそうだ。
馬車も行き交っているが、今日乗った馬車より豪華な馬車は見当たらない。如何にも木で出来た馬車ばかりだった。あの馬車は特別だったのか…。
「ルー兄さん、そんなキョロキョロしてるとぶつかるよ?」
俺が馬車や店に目を奪われているとグイッと手を引っ張られた。
そして左手で腰を、右手で俺の右手を掴んだ。
あれ?この体制おかしくない?これ、歩きにくくない?
「ごめん、ロウ。俺が悪かった。ちゃんと気を付けるから普通にしてくれ。」
「え?恥ずかしい?大丈夫だよ、人が多いからーー」
「歩きにくい。」
「あ、ごめん。」
ロウは腰から左手を離すとその左手で俺の右手を握った。
右手は離さないのか。
「ロウ、家はどこにあるんだ?お前は公爵家に養子に入ったんだろ?そこに行くのか?」
「ううん、違うよ。僕が養子に入ったファルメール家の屋敷はこのセントラルにはないんだ。前まで通っていたんだけど、魔術師になった事を機に思いきって家を出たんだ。」
「家を出たって……手紙で読んだけど、お前の養子に入った家って子供いないんだろ?出ちゃって大丈夫なのか?」
「ふふふ、大丈夫だよ。家を出たと言ってもそういう意味じゃないから。それに……子供が産まれたんだよ。」
「え?ロウに?」
「そんな訳ないでしょ。ファルメール家にだよ。3年前に産まれてまだ両親も若いし跡継ぎはその子がなることになったから僕は跡継ぎから外れたんだ。」
「へぇ…それはお前にとっていい事なのか?」
子供がいないから家を継がせるために引き取ったんじゃないのか?それなのに自分達の本当の子供が産まれたからそっちを跡継ぎにって…………モヤモヤする……。
「ふふふ、そんな顔しないでルー兄さん。僕はこれで良かったと思ってるんだ。だって家に縛られていたら安心してルー兄さんと生活できないからね。」
ロウは俺の手をギュッと握りニコっと笑った。
キュン……また不覚にもときめいてしまった。
ロウ、お前モテるだろう。
さっきお前は人が多いから手を繋いでいても僕達の事なんかいちいち見てないよって言っていたが……お前めちゃくちゃ見られてるからな。
男も女も関係なくガン見されてるからな。
お前が笑う度に『キャッ』とか『ウッ』とか聞こえるからな。
顔面偏差値高すぎるとこうなるのか……逆に怖いわ。
「ロウ、お前恋人はいないのか?」
「え!?」
え、居そうな反応。
「やっぱり。お前めちゃくちゃ格好いいし優しいし魔術師だもんな。」
「ぅ……兄さん、ありがとう…….はぁはぁ……。」
ロウが苦しそうに胸を押さえた。さっきも馬車の中であったな。病気?病院なのか?
「ロウ、お前病気なのか?」
「ごめんね心配かけて。大丈夫、これは僕の幸せの代償みたいなもんだから。」
「え?え?」
幸せになる為には病気にならなくちゃいけないのか?都会、怖い。
「ルー兄さんが考えてるような事じゃないから安心してね。それより、僕に恋人がいるかいないかだっけ?僕に恋人はいないよ。今まで一人も。」
「そっか、てっきりいるのかと思った。だって、こんなに格好良くてやーー」
「ストーーップ!それは分かったから!」
え、なんなの?あ!もしかして褒められると苦しくなるのか?そういえば顔も赤かったし恥ずかしがってたって事?なるほどなるほど!!でもロウならいくらでも褒められる機会あっただろうになんでだ??まぁいっか。病気じゃなければ。
「もうこの話はおしまい!夕飯だけど、どこかで食べていこうか。」
「あ、俺作るよ。」
「……!!」
実は俺料理得意なんだよなぁ。
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