チョロい兄は腹黒な弟に完全に包囲されている。

岡ぱんだ

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モブはお帰り下さい。+α

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「「!?」」

「ロウ!」

声のした方に目を向けると、そこには無表情でこちらを見つめるフロウの姿があった。

フロウはつかつかと歩いて四人の前へ移動すると、ルカの腕を引き自分の元に引き寄せた。

強く引っ張られた事でバランスを崩したルカはフロウの胸にぶつかり、フロウはそれを腰に手を添えて受け止めた。

「ただいま、ルー兄さん。なんで外にいるの?まぁ、それは後でいいけど……それで、先輩方は僕の兄と友人に何かご用ですか?」

フロウはルカを胸に抱いたまま二人組に冷たい笑みを浮かべた。

「や、やぁ、フロウ君。僕達はただ話をしていただけだよ。なぁ?」

「そ、そうさ、だだの世間話さ。」

「……ちがう………っ!?」

二人組の発言にミカエルが反論しようしたが、フロウの腕から脱出したルカがそれを手で制止した。

「フロウ、この二人の言う通りただ話していただけだからそんな怖い顔すんなって。二人がビビってるぞ?な?ミカ。」

「………うん。」

ルカに同意を求められたミカエルは納得いかない様子ながらも頷いた。

そんなルカとミカエルの態度で諦めたのか、フロウはそれ以上二人組を追及するのを止めた。

「はぁ、わかったよ。……先輩方、もう話はすみましたか?」

「ああ、僕達はこれで失礼するよ。」


二人組は軽く会釈をし引き攣った笑みを向けると、フロウ達に背中を向け歩き出した。

二人組がホッとしたのも束の間、少し歩いた所でフロウが「あ、先輩方。」と、二人の背中に声をかけた事で、あからさまに二人組の体がビクリと跳ねる。二人組が恐る恐る振り返ると、笑顔を張り付けたフロウが小走りで駆け寄った。

そして二人の前まで来るとその笑顔のまま二人の耳元に口を近づけた。

「僕は何を言われようと構いませんが、兄を巻き込むのは止めて下さいね。お願いします。でないと僕……何をするかわかりませんよ?」

「ヒィッ。」

言い終えて二人にさらに笑顔を向けた瞬間、二人は小さく悲鳴をあげ全速力で走っていった。

フロウはそれを見届けると、また小走りでルカとミカエルの元に戻った。

「どうしたんだ?あいつら慌てて走って行ったけど。」

「彼らが呼ばれていたのを思い出したからそれを伝えただけだよ。ふふふ。」

「……フロウ。」

「ん?ミカエル、何か?」

ミカエルの耳の良さはフロウも良く分かっている。

「……なんでもない。それよりフロウ……ルカが部屋から閉め出されていた……。」

「そうだ、ルー兄さんどうして外に出たの?部屋で待っててって言ったのに。」

フロウはルカの両肩に手を置いて軽く揺らした。

「しかたないだろ、部屋に何も無いんだから!本は難しいやつしかないし。」

それにされるがままのルカは不満げに口を尖らせフロウに文句を言う。


「……確かにそう言われてみれば何も無いね。ごめんねルー兄さん。それで、外に出たら入れなくなっちゃったんだね。でもどうしてミカエルと一緒にいるの?」

「……見回りしてたら声が聞こえて……時間があったから一緒にフロウ待ってた……。」

「そうそう!で、話してたらさっきの二人組が来たんだよ。」

「そうだったんだ。……それで、ルー兄さんとミカエルは随分仲良くなったんだね。呼び方とか呼び方とか呼び方とか。」

フロウはジト目気味に二人に言うと、二人はお互い顔を見合せた後フロウに向き直って口を開いた。

「だってミカエルって長いだろ?」

「……ルカが『ルカ』って呼んでもいいって言った……。」

「……。」

二人の答えに何も文句を言えなくなってしまったフロウは顔を覆って溜め息をついた。

そんなフロウに、ルカはやれやれと両手を上げるとその手でフロウの頭をわしゃわしゃと撫で回した。驚いたフロウはバッと覆っていた手を離しルカを見る。

ルカはそんなフロウにフワッと笑みを向けるとゆっくり話し出した。

「……ロウ、俺、お前にこんな良い友達が出来てすごく嬉しい。……さっきもな、ミカはお前の為に怒ってくれたんだ。俺が口を出す前に『フロウを馬鹿にするな』って。」

「……。」

「お前むかしから俺にベッタリだったろ?嬉しかったけど心配だったんだ。だから今日ミカに会えてすごく安心した!……ミカ、ロウと仲良くしてくれてありがとな!」

「……ううん。」

フロウはルカの話を聞き終えると、また大きく溜め息をつき座り込んだ。

「……はぁ。今回は僕の非もあるし、大目にみるよ……。ミカエル、ありがとうござました。」

そしてそのまま顔だけを上げミカエルを見て言った。

「……平気。ルカとも仲良くなれたし……。」

それに対しミカエルはニヤリとフロウを見た。


「……。」

「……。」

二人の間に無言の圧力が生じた。


「ミカ、本当にありがとな!また色々話聞かせてくれ。」

それをぶち壊すように何も分かっていないルカが明るく言うと、ミカエルはふふっと笑みを浮かべた。

「もちろん…。またね。」

そう言って軽く手を振ったミカエルは仕事に戻っていった。

「ミカエルがあんな笑顔見せるなんて……ルー兄さん何したの!?」

ミカエルがいなくなった後青い顔をしたフロウがワナワナと震えながらルカに詰め寄った。

「ん?何って、話をしただけだぞ?」

「……無自覚タラシ……こんな事なら僕が村に帰った方が良かったのかもしれない……。」

「なんだロウ、村に帰りたいのか?俺はなんだかんだで王都に来れて嬉しいぞ?それに二人暮らし始まったばっかりだぞ?」

「くぅ……まず虫除けの薬作った方がいいかな……。」

「もうすぐ冬だぞ?」



二人の暮らしは始まったばかりなのにすでに心配事が増えたフロウだった。



ーーミカエルと……~会話のみ~ーー


「………ただいま。」

「お!おかえり、ミカ坊!」

「兄さん!……帰ってたんだ。お帰り。」

「あぁ、一段落着いたからしばらくこっちいれるんだ。」

「………そっか、嬉しい。」

「ん?ミカ坊何か良い事でもあったのかい?私が帰ってきた事以外に。」

「さすが……兄さんだね。」

「まぁね、何年兄をやってると思ってるんだい?それで何があったんだ?」

「今日……フロウの兄さんに会った……。」

「例の!?どんな子だったんだ!?20歳だと聞いていたが。」

「うん、すごく……いい子だった。ルカって言うんだ……。20歳に……見えない。すごく……可愛いかった……。」

「羨ましいな!!私も見たい!!そうだ、明日会いに行こう!!どうせ、フロウは仕事だろうし!」

「……俺……仕事でいない……。」

「ミカは会ったからいいじゃないか!次は一緒に会いに行こう!」

「……。」

「ミカ坊……そんなに気に入ったのかい?こんなミカ坊、初めてだ…。わぁ、楽しみだなぁ~!」

「……。」

「恥ずかしがらなくていい。私は嬉しいよ。でも、よりにもよってフロウの兄かぁ……。まぁ、フロウには悪いが私はミカ坊を応援させてもらうけどね……。さてさて、ミカ坊が自覚するのが早いかフロウが本気を出すのが早いか……。」

「兄さん…?」

「あは、なんでもないよミカ坊!明日は私一人で会いに行くが次は必ず二人で会いに行こう。約束だ。」

「……わかった。約束…ね。」

「ああ!さあ、そうと決まれば私に『ルカ』の事を教えてくれ。明日の予習だ!」


「うん……あのね……。」


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