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兄とデート~フロウside~
しおりを挟む「ルー兄さん、おいしい?」
「おう!めちゃくちゃ旨いな!もぐもぐ。これも旨い!もぐもぐ。」
口いっぱいに頬張ってる姿……可愛過ぎる。
「ふふふ、そんなに急がなくても料理は逃げないよ?こっちもどうぞ。」
「おう!ありがとな!別に急いでるつもりないんだけど、腹減ってたし旨いと止まらなくなるってゆーか。」
あー可愛い。
兄さんには悪いけど、20歳に見えないなぁ。
畑作業とか木こりとか外で仕事してたはずなのに肌も白いし、筋肉質でもないし。
肌の質だって令嬢達に負けていない。むしろ勝っている気がする。
そういえばさっき令嬢達に囲まれてた時の泣きそうな兄さん可愛かったなぁ。
まさか初デートで令嬢達に捕まると思っても見なかったけど、遅かれ早かれいつかはどこかで顔を合わせることになっただろうし早めに紹介できて良かったかもしれない。
兄さんに恋愛的興味を持った様子の令嬢もいなかったしね。
「ルー兄さん、さっきは巻き込んでごめんね。怖かったでしょ?」
「なっ!?いやっ!怖くなんてっ………少しだけ……。」
「……。」
素直…。恥ずかしがってる……。
大変だ。どうしよう。平常を装いたいのに笑顔が不自然に引き攣ってしまう。
「ムッ、おい馬鹿にしてるだろ!しかたないだろ!あんなギラギラした目で大人数囲まれたんだから!」
あ、勘違いした兄さんがプンッてそっぽ向いた。うわ、可愛い。不謹慎だけど可愛い。
「ごめんね、ルー兄さん。そんなつもりなかったんだけど……お詫びにデザートも好きなもの頼んでいいから、ね?」
これで機嫌が直るかどうかわからないけど、兄さん心広いしなんとかなるような気が……
「本当か!?しょうがないな!すいませーん!コレとコレとコレと……あとコレも下さい!!」
「……チョロい……。」
「ん?何か言ったか?」
「ううん、心配になっただけ。」
チョロ過ぎて。
「心配するな!残さず食べるから!」
「……それならいいんだけど。」
その心配では無いんだけどなぁ。
「ロウはデザートいらないのか?」
「うん、僕はもうお腹いっぱいだし、デザート丸々1つは無理かなぁ。」
甘い物も得意では無いしね。
「そうかー。」
「お待たせ致しました、デザートです!」
「どうも!うわ、デザートも旨そう!」
ふふ、嬉しそう。兄さんは昔から甘い物好きだったもんなぁ、僕のおやつもほぼ兄さんに横流ししてたし。むしろ僕は兄さんに横流しするためにお菓子を貰っていたようなものだったな。
「ロウ、ほら。」
「!?」
昔の事を思い出して懐かしく感じていたらいつの間にか兄さんがケーキを差したフォークを僕の目の前に突き出していた。
こ・れ・は
「ロウ、昔からあんまり甘いもの好きじゃなかったけど、よく俺のやつ一口欲しがっただろ?丸々一個は食えなくても一口なら食えると思ってさ。それにこれあんまり甘くなかったし。」
兄さんんんん!!
これ素でやってるの?
これ世間一般の『あーん』ってやつだよ?
「やっぱり、もう食えないか?」
「いただきます。」
ーパクっ
「旨いか?」
「おいしいです。」
くっ……顔が熱い。思わず口を押さえて顔を反らしてしまった。
ただ『あーん』して貰っただけじゃないか。落ち着け僕、落ち着け。
「おい、本当に大丈夫か?」
「大丈夫……美味しいよ。なんか昔に戻ったみたいで嬉しくて……。」
「そ、そうか?よく昔もしてたもんな。じゃあまたやってやるよ。」
「……うん。ありがとう。」
もっと押して行こうとさっき決めたのに、逆に押されてる気分だ。嬉しいけど、僕は兄さんに何もアプローチ出来てない……どうしよう。
この後、何ができるか……あ。
大変だ。重大な事を忘れていた。
「あの、ルー兄さん、この後の予定なんだけど……僕、ルー兄さんを連れていかなきゃ行けない所があるんだ。」
「連れて行かなきゃいけない所?」
兄さんの瞳がキラキラと輝いて期待していることが読み取れる。
ごめんね、期待に答えられるような場所じゃないんだ。
「うん、実はこれから兄さんをファルメール家に連れていきたいんだ。」
「え?ファルメールってお前が養子に入った家だよな?」
「そう。ダメかな……?」
本当はこんなに早く会わせるつもりなかったんだけど、昨日母上に連絡したらすぐ連れて来いって言われてしまったんだよね。
今日断っても次の休暇に来いと言われるだろうし、最悪あちらから出向く可能性もある……勝手に来られるのは非常にまずい……。
でも兄さんは複雑だろうな……嫌な思いしないかな……。
「全然ダメじゃない。むしろ会ってみたい!それにお礼も言いたい!」
その答えに僕はホッと肩を撫で下ろした。
兄さんはニコニコ嬉しそうにしている。よかった。
「じゃあ、何か手土産が必要だよな?あ、でも俺無一文じゃん……。」
「ううん、手土産なんて必要ないよ。それに二人とも食に煩いから、下手に何か買っていかない方がいいと思うし。」
申し訳ありません、父上、母上。嘘つきました。あなた方は何でも喜びますよね。
「そうか?じゃあ、手土産はまた今度にするか。」
「うん、そうしよう。」
なるべくなら連れて行きたくないんだけどね。
「家まではどのくらいかかるんだ?」
「サウスにあるからゲートを使って二時間くらいかな?」
「またゲートを使うのか!?」
「うん、昨日のうちに申請しておいた。本当はセントラルに住んでたんだけど、弟が生まれた途端に父上が空気が美味しい所に住みたいって言い出してサウスに引っ越しちゃったんだ。公爵家は王の血族だから基本セントラルに住むはずなのに、父上は頭が良いからなんとか国王を丸め込んだみたいなんだよね。」
「へぇ……大変なんだな?」
ふふふ。わかってない顔してる。
でも、兄さんは知らなくても問題ないから安心してね。
「うん、だからまた長時間の馬車移動で申し訳ないんだけど我慢してね。」
「全然長時間じゃないぞ。お前と話してたらあっという間だからな。」
うわ、また兄さんが無意識に僕を口説いてくる。もう僕は落ちてるのに…。これが天然タラシの力……。
いやいや感心している場合ではない。
僕が兄さんにアプローチをかけて兄さんに僕を意識してもらわないといけないのだ。
「……っ、うん、ありがとうルー兄さん。僕もだよ。さあ、そろそろ行こうか。」
「おう!」
時間はまだある。がんばれ、僕。
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