そんなに可愛がらないで

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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5章【そんなに好きにさせないで】

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 ベッドに押し倒されたカナタは、自身に覆いかぶさるツカサを見上げた。


「待って、ちが……っ! こういう、意味じゃ……っ」
「『こういう意味』ってなに? 俺はただ、可愛いカナちゃんに覆いかぶさっているだけだよ?」
「っ!」


 こうして質問ばかりしてくるツカサは、妙なスイッチが入っている。

 こうなったツカサは、満足のいく答えが出てくるまで、カナタを解放しない。


「教えて、カナちゃん。カナちゃんの答えが、俺の答えだから」


 そんな優しい言葉を連ねるくせに、結局は誘導をするのだ。

 カナタは顔を赤くして、ツカサを見上げた。
 しかし、ツカサは微笑むだけで解放はしない。


「そんなに可愛く見上げてもダメだよ。俺、分からないことはそのままにしておけないタイプだから」
「意地が悪いです……っ」
「あはっ。秘密主義のカナちゃんの方がイジワルだと思うけどなぁ?」


 ツカサの手が、カナタの太ももを布越しに撫でる。
 カナタは小さく体を震わせて、ツカサの手から逃れようと身をよじった。


「やだ、ツカサさん……っ。手つき、が……っ」
「さっきカナちゃんが俺の腕にくっついてきたのだって、こんな感じじゃなかった?」
「全然違います……っ!」


 すると、ツカサの親指がズボンに引っ掛けられる。


「同じだよ。だって俺はさっき、今のカナちゃんと同じ気持ちになったから」


 そのまま、ツカサはカナタのズボンをゆっくりと下ろす。


「カナちゃんに触れられて、俺は凄くドキドキしたよ」


 膝の辺りまでズボンを下げられ、カナタは驚く。
 カナタが慌てて両手で下半身を隠すと、ツカサは小さく笑った。


「これは、男同士のちょっとしたじゃれ合い? それとも、別のなにか? ……ねぇ、カナちゃんはどう思う?」
「……っ」
「カナちゃんの答え通りに動くよ。カナちゃんが思う通りに、俺は振る舞う。俺はカナちゃんの恋人で、カナちゃんは俺の恋人だからね」


 顔が近付き、互いの鼻先が触れ合う。


「言って、カナちゃん。これから俺とカナちゃんは、ベッドの上でいったいなにをするの?」


 ──お喋り、と。

 そう言えば、ツカサはそう振る舞ってくれるのだろう。
 けれど、カナタはもう……。


「……わ、て……っ」


 ──ツカサの瞳から、逃げられなくなっていた。


「もっと、触ってください……っ。ツカサさん、と……恥ずかしいこと、したいです……っ」


 カナタの答えを聴き、ツカサは優しく微笑む。

 笑みを浮かべるツカサの手によって、膝の辺りで引っかかっていたカナタのズボンが、ゆっくりと最後まで下ろされた。


「素直なカナちゃんは、可愛くていい子だね。本当に、俺の恋人は世界で一番可愛いよ」


 降り注がれる『可愛い』という言葉に、カナタの理性は溶かされていく。
 口付けられると、文句を紡ごうという意思すら飲み込まれて。

 カナタはただ、目の前にいる美丈夫に囚われるしかなかった。




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