私、「自然」に愛されて育ちました!

つきの

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夏の章

魅力度コンテストに出ました。

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「千春様、今度魅力度コンテストなるものがあるのですが、それに参加致しませんか?」

そう唐突に切り出したのは侍女のアンナ。



「……そんなの、私が出るものじゃないと思うけど。」

読書をしていた千春はあまりにも突拍子な申し出に驚きつつもそう答えた。



「何を仰いますか!貴女こそが出るべきなのです!というか、すでにエントリーは済んでますの。」
そうにっこりと笑った。



「えぇっ!?何してるの、アンナー⁈」

思わず本を落としてしまう。



アンナの手に握られている大きな紙には、こう書かれていたーー








「っ私が出ること前提じゃない⁈」


「はい。もっと千春様の魅力を知っていただかなくてはと。
それに、国を盛り上げる為に何か出来る事は無いか…、と城の者達と考えた結果ですの。」


「私、何も出来る事無いわよ?何をしたらいいのよー。」

千春はズン…と落ち込む。



「千春様の得意分野で戦えば宜しいのですわ!」


「得意分野…?」



ーーーー


そして、あっという間に当日。

今日は国を挙げての祭典だ。
そこかしこでは出店や、出し物で多くの者達が騒ぎ、腹を満たして酒を飲み盛り上がっている。


そこには千春にアクラス、トニー、トレイン。そして、アンナもいた。



「えっ!千春ちゃん、コンテストに出るの⁈
なんか…意外だなぁ。」

肉を頬張りながらトニーが言う。


「アンナに勝手にエントリーされてたんです…!
私だって、こんなの烏滸おこがましいって言ったんですよ⁈」


「もう、そんな事無いですわ!
私、もっと千春様の可愛くて、美しい姿が見たいんですの!
もっと自慢したいんですの!」


「え、前言ってたことと違う!」


「いやいや、千春ちゃんが劣るとか、烏滸がましいって事でもなくてね。ただこういうのは得意そうに見えなかったからさ。

ってか…アンナはほんと可愛いもの好きだよなぁ。」


「…いいんです、気を遣ってくれなくて!
もう仕方ないんですから。」


「…ならば、千春殿は何をするんだ?」


「それは秘密です。」


「…そうか、それなら楽しみにしていよう。」


「え!見るんですか!?」


「…?当たり前だろう。」


「えー、出来れば皆さんには見て欲しく無いのですが…。
恥ずかしいので。」


「っそれじゃ何のためにこの企画を立ち上げたか分からないじゃないですか!
私は見ますわ!絶対に見逃しません!!」


「えぇー…。」



「千春殿は今でも充分魅力的だが、コンテストで競う程だ。もっと魅力的になるのだろうな。楽しみだ。」



「っえぇっ⁈」



「ぇ?…ぁ。ち、違う!

決してトニーのようにいやらしい目で見る訳では無いぞ!?ただ、純粋に愛らしいのだろうなと思ってだな⁈」


「っ…おい!団長ー!それ俺を乏してっからな!
…厭らしい目では見ちゃうかもしれないけどっ!それは千春ちゃん次第だっ!」



「ふ、2人ともこれ以上恥ずかしい会話は辞めてください!」


「す、すまん。」


「大丈夫ですよ、千春様!俺は純粋に祭典の1つとして楽しもうと思ってますから!」




「ふふ、まぁ賑やかですこと。さぁ、千春様。
そろそろコンテストの参加者は集合のお時間ですわ。
参りましょう!」



「っ…うぅ、やだなぁ……っ。」





コンテスト控え室ーー



「っ…わぁ、綺麗な人がたくさん…!」


「国中から集まっていますからね。
まぁ、千春様には劣りますが。」


「もう、アンナは黙ってて。」



「さあ、千春様!お着替え致しましょう!

とっておきの衣装をご用意致しましたの!可愛いんですのよ!」



「とっておき…なんか怖いなぁ…。」


そして、アンナに着付けられたその衣装は、
千春の美しい黒髪に映える、透け感のある白い膝丈のシフォンワンピースに程よくレースがあしらわれていたものだった。


「っ…やっぱり千春様には純白ですわ!」


「今度は胸が大きく開いてなくてよかった…。肩と背中が凄く出てるけど。」

今回はオフショルダーだ。



そんな千春達の元へ近づく者が1人…


「あの、愛し子様ですよね…?」

そう尋ねて来たのは、参加者の1人であろう若い女性だ。


「えっと、千春です。…何か?」


「っあの!私、貴女にとっても憧れてて!
綺麗だし、凄い素敵な奇跡の力も持ってて!
お会いできて嬉しいです!」

そう本当に嬉しそうに、尊敬の眼差しで千春を見る。



「ありがとう…。貴女も参加者?」

千春は照れながらも微笑んだ。



「はい!恐れながらも挑戦者です!賞金がほしくて…。
…えへっ。」


「ふふ、理由なんて人それぞれですもの。
私もここまで来たからには、出来る限りのことはやりますからね!」


「はい!私も負けません!」




ーーそのやり取りを遠くで見ていた者達がいた。



「ふん。…くだらないわ。愛し子だかなんだか知らないけれど、ちょっと力があるだけじゃない。それなのにアクラス様やトニー様達を侍らせて、いい気になってるんだわ。」

ボリュームのある金髪の巻き髪を払いながら言うのは貴族らしき風体の娘。


「えぇ。そうですわ!この国1番の美しさの称号はアメリア様にこそ相応しいもの。このコンテストで知らしめてやりましょう!」

侍女がそう激励した。


「そうね。私の美しい舞を見れば、皆の目も覚めるでしょうね。」

そうアメリアは得意げに笑ったのだった。




ーーーー


「さぁ!始まりました、魅力度No. 1コンテスト!
愛し子様への挑戦者が続々とエントリーしてくれましたよ!
今回は、会場の皆様に誰が1番美しくて、魅了されたかを投票して頂きます。
勝者には極上の酒と金一封を!

それでは早速始めましょう!!」


千春の出番は最後だ。広場に作られた舞台の裏から次々と美しさや魅力を競う参加者達を見つめる。


ーー美しい舞を舞う者。

ーー聴くものを癒やす歌を聴かせる者。



そして、千春を目の敵にしていたアメリアは、艶っぽい舞を踊っていた。露出度の高い衣装であり、胸も足も殆ど出てしまっている。

…簡単に言えばただエロい。


しかし、観客の反応は上々だ。

ーーおおっ!

ーーいいぞー!!


アメリアは皆の視線を受け思う。

「(…ふふ、みんな私に釘付けね。
これで優勝は私の物。そもそもこの国で1番美しいのは私なのだから当たり前よ!)」




観客席からそれを見ていた3人は……



「うーん、あれは魅力っていうか、ただエロいな!!」

トニーがあっけらかんとそう言った。



「…如何わしい。」

アクラスは眉をしかめる。



「は、恥ずかしくはないのでしょうか。」

トレインは真っ赤になり両手で顔を覆う。しかし指の隙間からちゃっかり見ている。



そして、最後に千春の順番が来た。



ーーーー


「それでは、最後は皆様お待ちかねの、我らが愛し子様だーー!!」



ーーおぉ、待ってましたぁあ!!

ーーきゃーっ!愛し子さまぁっ!!




「千春様!頑張ってください!」


「うん。やれるだけやってみる。」

アンナに激励され、千春はそう微笑むと舞台へと足を踏み出した。





「ーーおっ!千春ちゃんだ!あの衣装も可愛いな!」

「あぁ。可憐だ、よく似合っている。」


「可愛らしいですねぇ。」

3人の反応も様々だ。







「(…私にはあなた達だけだから……。)


スエロアクアファイフィンシエロ。」




そう呟くと、その場に5人の美しい男女が現れた。



「…今日は、皆さんに私のお友達を紹介します!」






ーーそれからは圧巻だった。



千春がスエロの元へ駆け寄ると、スエロは嬉しそうに抱き上げた。

そして千春とスエロを中心にして、舞台は一瞬にして美しい色とりどりの花で覆われた。



観客は驚きつつも感嘆の吐息をらすーー



そして千春がスエロの腕からそっと舞台へ降りると、今度はフィンが千春の手をとった。


そこに心地よい風が吹いてきたかと思うと、
千春とフィンを中心にして花びらが天高く舞い上がり、そのまま城全体へと降り注がれる。

それはまるで女神が祝福を受けてるかのようだった。


「…なんて美しいの。」

「女神様みたいだ…。」


すると、突然大きな水の柱が千春を覆った。
その水は千春を隠しながら動物や人間など、いろんな形に変わり、観客を楽しませる。
アクアだ。




観客が水の芸を楽しんでいると、水は天高く舞い上がり、勢いよく八方に飛散する。

そこに現れた千春はファイに抱かれていた。



飛散した水が観客へ届いてしまうかと思ったところで、
ファイの力で水は全て蒸発され、白く細かな粒が太陽に照らされる。そうしてキラキラと観客達へと降り注いだのだ。


最後にシエロがゆっくり千春に歩み寄る。


ーー今度は何が起きるんだと皆が食い入るように見つめたその時、

シエロは千春の手をとり甲へと口付けた。

『これからも我らが敬愛する千春と共にーー』


その瞬間、薄い雲の隙間から光の柱、所謂いわゆる天使の梯子はしごが地上までいくつも降り注ぎ、そして城を覆うほどの大きな虹が姿を現したのだった。





「…っすげぇ!千春ちゃん…本当に女神様みたいだったな。」


「あぁ。
…隣にいれるあの方達が羨ましいな。

千春殿は本当に嬉しそうだ。誇らしいのだろうな。」

そうアクラスは小さく呟いた。その視線は千春に釘づけだ。


「…俺、うっかり息止めていましたよ。危なかった…。」

少し呼吸を荒くしてトレインが言った。





そしてもう1人…

「っ何よ!あんなのずるいじゃない!しかもあんな良い男達に囲まれて~っ!!」

アメリアだ。


魅力を競うルールなのだ。
あれを見せられたら、悔しくも認めざるを得ないのだった。



こうして、多くの者を魅了した千春は、
見事優勝したのだった。
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