私、「自然」に愛されて育ちました!

つきの

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秋の章

秋の味覚狩りに行きました。

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あれから、千春は自分の気持ちに迷いながらも、
出来るだけ普通に接することに決めた。

時間が解決してくれるだろうと。
アクラスも待ってくれると言っていた。

自分なりにこれからたくさんアクラスと話したり、触れ合う事でこの気持ちもはっきりする筈だと思ったのだ。







季節は食欲の秋。


「もう栗の季節ね。モンブランに、栗ご飯に、栗きんとん…!食べたいなぁ。」


「…千春様?栗とはもしやあの凶暴そうな針を従えた植物ですか?時折人間を狙って落ちてくるという…。」


「えぇ!?ふふ。ここではそんな扱いなの?とっても美味しいのよ?」


「あ、あれがですか?信じられませんわ…。」


「それはアンナが棘だけをイメージしてるからでしょ?その中に美味しい実がつまってるのよ!」


「そうなのですね!それは興味がありますわ。」


「それなら、皆で行きましょう!!
たくさん穫れたら私が甘味を作ってあげるわ!」




というわけで、いつものメンバーは秋の味覚狩りーー

栗拾いへと向かっていた。




「へー、栗って食べれるのか。想像つかねぇなー。」


「そうですね…。私も以前狙われた事がありましたから。」


「ふふ、あれは狙ってなんかないですよ。栗は熟すと自然と落ちますから。でも、時間が経つと傷むので、早めに収穫できたらとてもいいんですけど。」


「そうか。千春殿は博識なんだな。あれが食料だと分かれば、民も喜ぶんじゃないか?あの木は沢山ある。」


「私も楽しみですわ!あれが食べ物だなんて。どんな味なのでしょう?」


そうして一行は栗の木が茂った山へと辿り着いた。



「っ…わぁー!栗がいっぱ~い!!」
千春は目をキラキラとさせた。


「ははっ、嬉しそうだな、千春殿。」
アクラスは愛しそうに微笑む。


「はい!いっぱい穫れたら、私がモンブラン作りますね!」


「確か甘味だったな。それは楽しみだ。」


千春達は棘に注意しながら拾っていく。



「ぅおっ!あぶね、今俺狙われたぞ⁈」


「トニーさん!今落ちたやつ新鮮ですよ!確保です!」


「っあぁ、分かった……ぅおお!あぶねー!!」

なぜかトニーの周りばかりに栗が落ちる。


「…スエロ殿がトニーにイタズラしてるんじゃ?」
トレインが呟く。


「ふふ、それは無いですよ。私が呼ばないと意識は生まれませんから。」


「まぁっ、こんなにじっくり見たことは無かったですが、
本当に良く尖ってますのね。刺さったら痛そうですわ。」


「うん、棘は本当に刺さるから、気をつけてね……っ痛ぁ!!」

そう注意した矢先に千春の指に棘が刺さる。指先から少し血が出ていた。


「はは、自分で言ったそばから恥ずかしい…。」


「千春様、私に構っていたばかりに!
大丈夫ですか⁈すぐに手当を…!」


するとアクラスが千春の元へと来る。

「千春殿、手を。」


アクラスにそう言われ、素直に手を差し出すと手首を掴まれてすぐ近くの川まで連れて行かれる。

そして傷を洗うと清潔な布で覆った。


「…棘は入っていないようだ。よかった。」


「あ、ありがとうございます。」


「あぁ。だが、女性が傷をつけてはいけない。それが貴女なら尚更だ。十分気をつけてくれ。」

そう言い傷を優しく撫でる。


「は、はい。(普通に接しようと思ってたのにー!ドキドキしちゃうじゃない!)」

千春は顔を真っ赤に染めた。




それを遠目に見ていた3人は…


「おぉー、結構良い雰囲気じゃん?」


「え?あのおふたり、そういう関係ですの⁈」


「つい、最近ねー。団長が告白して、千春様の返事待ち。」


「まぁ!千春様ったら、教えてくだされば、もっと素敵に着飾ってみせましたのに!栗拾いだからとあなどっていましたわ!」


「…そうなるからじゃね?」


「…そうですね。」



そうしてそれぞれがカゴ一杯に栗を集め、城へと戻った。




翌日。厨房へーー


「愛し子様。栗で何を?」

料理長が興味深そうに尋ねる。


「料理長さん、厨房を貸してくれてありがとうございます!
これから栗を使って甘味を作ろうと思いまして。」


「栗で甘味ですか。それは興味がありますな。」


厨房の者や、アクラス達に見守られながら、千春は淡々と作っていく。


まずは一晩水に晒した栗をマロンペーストに。

それからタルト生地を作り、焼き上げる。
それからマロンクリーム作りへ。

焼き上げたタルトに生クリームと砂糖で作った固めのクリームを敷き詰め、その上からマロンクリームをくるくると円を描きながら絞れば、あとは冷蔵庫でしばらく冷やすだけだ。


「これからしっかり冷えるまで少し時間がかかるので、出来たら知らせますよ。」


「へぇー、どんな味なんだろうな。
見た目は綺麗だったな。」


「えぇ。楽しみですわ!」


「千春殿はこれをよく食べていたのか?」


「はい!モンブランタルトって言って、
とても美味しいんですよ!」



そして数時間後ーー

噂を聞いた者も含め、多くの者が談話室に集まっていた。
モンブランはたくさん作ってある。

アクラス達は休憩中にやってきた。



「おぉ、切ったらこんな感じか。層みたいになってるんだなー。」

トニーがカットされたモンブランを見て言う。


「どうぞ、皆さん召し上がって下さい!」



それから皆は初めて食べるモンブランの美味さに感動した。


「これは、美味い!栗がこんな甘味になるとは驚きだ。是非作り方を詳しく教えて欲しいものだ。」

料理長にそう言われ、千春は嬉しそうに了承した。


「はい!これからモンブランが食べられるなら喜んで!」


「…おぉ!美味いな。
千春ちゃん料理もできるなんて、女の鑑だな。
これならいつでもお嫁に行けるぜ!」


「お、お嫁ですか⁈(その手の話題はちょっと…。)」
トニーの言葉にチラリとアクラスを見ると…


「そうだな。俺はいつでもいいぞ。うん、美味い。」
そう平然と言った。


「…っ!」


「まぁまぁ!アクラス様ったら!うふふ。」


「おや、おふたりはそういう関係で?いいですなぁ。若い。」


「あ、あの!それは…!」
千春は赤くなりながら慌てる。


「…さて、私達もそろそろ行こう。
千春殿、美味い甘味を馳走になった。」


「い、いえ。」


「えー、もう?もうちょっと休んで良くない?」


「ほら行くぞ、トニー!」
トレインに連れられて行った。





それから好評だったモンブランのレシピを料理長に教え、
千春は自室でアンナとゆっくりしていた。



「(アクラスさん…待ってくれるって言ってるけど、こんな調子じゃ私の身がもたないよ…。もう、どうしたら…。)」


「千春様、何か悩んでおられますか?
もしやアクラス様との事で…?」


「う…、そうなの。ねぇ、アンナ。私どうしたらいい⁈
アクラスさんかっこいいし、素敵だし。好きかもしれないって自覚したのは本当に最近なの。

でも私と10歳も離れてて、本当に私でいいのかなって思うし、後から飽きたって言われたりしないかなって心配で。

アクラスさん程の人だもの、もっと大人っぽくて魅力的な人の方が釣り合うんじゃないかって思うの。」


「…魅力でいうなら、この間この国の1番になったではありませんか。アクラス様も大変喜ばれていましたわ。美しく可憐であったと。
それにアクラス様は飽きたなんて簡単に言える程、軽く考えてはいないはずですわ。」


「っでも…。」


「ちゃんと話し合うべきです。千春様はアクラス様とどういう関係でありたいのですか?」


「私は…、アクラスさんと一緒にいたい。こ、恋人になれたら素敵だし、嬉しいと思うよ。」


「それなら、答えはもう決まってるじゃないですか!次に会う時、頑張って今思ってた事を話してみてください。きっと上手くいきますわ。」


「…うん。行動しなきゃ進まないものね。
もっと、アクラスさんに見合う女性にならなきゃ。
私だってアクラスさんの事、す…好きなんだから!

っありがとう、アンナ!」


「ふふ、いいえ。ご報告、楽しみにしていますわ。」



そうして夜は更けて行った。
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