ブリキの著述士と霜天の剣姫

 アレは頭上を色鮮やかな虹が一閃となって突き抜け、空を二つに切り裂いた頃……。



 僕は妙に生温かい荒凉たる地上で横たわっていた。


 
 左に首をもたげると、そこには、翠緑の真珠の装飾の施された剣を地に突き刺し、それを両手で握り、威風堂々気を失ったまま立ち続ける騎士の姿があった。



 何とか手を、その騎士に触れたくて手を伸ばす。



 けれど、腕も脚も上がらなかった。眼も見えなかった。



 僕は一眼一手足、そしてこの時あるモノを失った。



 これは不出来な部下と優れる上司の物語。



 物語はこの事件の約2年前から描かれる。


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 兵隊だった父と大黒柱として家族を支えた母を戦争によって奪われた少年イブニス・ジェームズ・ヴァレンシュタインは満15歳を満たしたとき、邦の徴兵制度により雑兵として召集された。その時すでに、その身に降りかかる“死の恐怖”は彼から明るさを奪い去っていた。だが戦地で巡り会った剣姫アリシアはまだ“死”に悲しみを感じれるイブニスにその素晴らしさを見せ付けた。逆に“死”をものともしない剣妃に着いて行く事を決意したイブニスだったが、ある決戦によって利き手の右腕と利き足の左脚を失い、ブリキの手脚を身に纏う事になる。
そんな少年が幼き頃、母と父から言われた「小説家」という将来の夢を思い出し、憧れである剣姫やさまざまな人々に幸せを届けるべく物語を綴る物語。
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