どっちも好き♡じゃダメですか?~After Story~

藤宮りつか

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After Story

   Winter Vacation(6)

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 だがしかし、恋人と過ごすクリスマスは、お互いにプレゼントを渡し合うだけで終わるはずもなく――。
「さて。クリスマスプレゼントも渡したことだし、この後はやっぱり……だよね」
 と言い出す雪音に、俺は内心ギクリとしてしまった。
 そりゃまあ、俺もそういう流れは全く想像していなかったわけじゃないし、むしろ、そういう流れになるものだと思っていたけれど……。
 でも、こうして三人で一緒にいる間は、どういう流れでそういう展開になるのかがわからなかったし
(まさか、また三人で一緒にっていう流れになるんじゃ……)
 という不安がないでもなかった。
 三人でセックスすることに全く抵抗がない雪音は、たまには三人でするセックスが新鮮で楽しいと思っている節がある。
 そして、そういう経験が増えていけば増えていくほど、頼斗にも抵抗や拒否感がなくなっていく気がする。それが俺的にはちょっと怖かったりもするんだよね。
 俺は自分の意志で二人の人間を恋人にしているから、同じ時期に二人の人間とセックスすること自体には、罪悪感や抵抗というものを感じていないけれど、三人でするセックスには抵抗があるし、できることなら避けたいと思っている。
 多分、回数を重ねたところで一生慣れないんじゃないか……とも思っている。
 だから、今日も「三人で」なんて流れは勘弁して欲しいところなんだけど、何かしら特別な日になると「三人で」という流れになりがちなんだよね。
 昨日のクリスマスイブに何もしなかった以上、二人とも今日のクリスマスでは絶対にそういう展開を期待しているだろう。
 そう考えると、どうして昨日のクリスマスイブに何もしなかったのか……という後悔をしてしまいそうになる俺だけど、今日うちでクリスマスをすることはかなり前から決まっていたことだから、俺もクリスマスの特別感は今日に詰め込んでしまいたかったのかもしれない。
「ちなみに、お前は昨日深雪に手を出してねーんだよな?」
「うん。だって、せっかく今日クリスマスをしようって話になっているなら、今日深雪と愛し合いたいって思うじゃん」
「そうか」
 待って待って。一体何の確認なんだよ。この会話はもう嫌な予感しかしない。
「頼斗こそ、どうして昨日は深雪に何もしなかったの? クリスマスってさ、クリスマス当日よりイブの方が盛り上がったりしない?」
「ん? まあ、一瞬悩みはしたんだけどな。でも、俺もお前と同じで、せっかくクリスマスを今日やるなら、その時に深雪と……って思っちまって」
「やっぱりそうなっちゃうよね。僕達ってさ、変なところで考え方が同じだよね」
「だな」
 いやいやいや。そこで妙な意気投合はしなくていいんだよ。ほんと仲良しだな、この二人。
 そこで二人の思考が一致してしまうのも、俺としては困っちゃうっていうのに。
「ってなると、今日もやっぱり三人でってことでいいのかな?」
「クリスマスだしな。お互いに譲れない時はそうする以外に道はないだろ」
「っ⁉」
 ちょっとぉぉぉ~っ! ついに頼斗が全くの無抵抗っ⁉ この展開に一ミリも戸惑う顔すら見せないとはどういう事なのっ⁉ そこはちょっとくらい戸惑いや抵抗の姿勢を見せて欲しいんですけどっ!
(ああ、ダメだ……。雪音と頼斗の友情が固く結ばれてしまった今、頼斗に3Pというものに対する抵抗がなくなってしまったんだ……)
 あまりにも雪音からの提案をあっさり飲んでしまう頼斗に、俺は最早絶望しかなかった。
 二人とも俺の大事な彼氏だから、二人には仲良くして欲しいと思っちゃいるけど、二人の仲が良くなっていくほどに、俺自身は不利な状況に陥ってしまうこともあるんだよね。
 まあ、もう〈今更〉って感じではあるんだけど。
 それでも
「いや……今日はクリスマスだし……。一人ずつ順番に愛し合うっていう選択も……」
 往生際悪く俺がそう言うと、二人は一瞬心が揺れるような顔をしたが
「うーん……。それは確かに魅力的な意見でもあるんだけどさ」
「それだと待ってる間にモヤモヤする」
「三人で一緒に愛し合った方が、いつもと違う特別感みたいなものがあるし、幸せも二倍、三倍になっていい気がするんだよね」
 俺の意見はやんわりと却下されてしまった。
 更に
「それに、今日はもたもたしてると日が変わっちゃう可能性もあるから」
「それだけは絶対に避けたい」
 と言われてしまうと、俺は何も言い返せなくなってしまった。
 そうなんだよね。今日は夕飯の後に家族の団欒ってやつをたっぷりとしちゃったから、俺達三人が二階に上がってきた時には、時計の針も午後十時半を過ぎていた。
 三人とも今日終業式を迎えて、明日から冬休みに入るものだから、あまり時間を気にしていなかったせいだと思う。
 早起きしなくてもいい日の夜って、時間の感覚がゆっくりになっちゃうものだから。
 でも、そのせいでクリスマスの残り時間が少なくなってしまったことは失敗だったな。
 俺もクリスマスの夜が何事もなく穏やかに終わると思っていなかったんだから、時間配分はしっかりしておくべきだったのかもしれない。
 とは言っても、最初からそのつもりでいる自分もどうかと思うから、こういう流れはいつも二人任せな俺だったりする。
 だって、俺から二人を誘うのって恥ずかしいんだもん。
「つまり、今日はもう三人でする以外の選択肢がないんだよ。潔く諦めて、深雪」
「そ……そんな……」
「どうせ冬休みの間にもう一回は三人でする事になるだろうから、俺ももう諦めてる……っつーか、慣れることにした」
「は⁉」
 ちょっと待って。それって一体どういう意味⁉ 何で「冬休みの間にもう一回は三人でする事になる」だなんて言えるの⁉ 俺にそんな予定はないんだけどっ⁉
 っていうか、今日もまだ三人でする事を承諾したわけじゃないんですけどっ!
「ちょっ……」
「あー、確かにね。年明けにまたそういう事になりそうだよね。姫始ってことで」
「姫っ……⁉」
 ああ、なるほど、そういう事か。年が明けて新年を迎えたら、今度はそういう展開が待っているわけか。
(まだクリスマスも終わっていないのに……)
 今日、二学期の終業式が終わったばかりの俺は、クリスマスのことで頭がいっぱいで、年末年始のことまでは考えていなかった。
 でも、クリスマスが終わってしまうと、世の中は一気に年末年始モードになっちゃうよね。
 実際クリスマスからお正月までは一週間もないし。
 だから、俺がのんびりしているだけで、普通の人はクリスマスと一緒に年末年始のことを考えているものなのかもしれない。
 だからといって、年明け一発目にする恋人とのセックスのことまで考えている雪音や頼斗は、ちょっと気が早過ぎるんじゃないかと思っちゃう。
「あ……あのさ、何か俺達の中で〈特別な日は三人で〉って流れになっているような気がするんだけど……」
 終業式が終わったばかりなのに、明日から始まる冬休みが不安で仕方なくなってしまう俺は、恐る恐るといった感じで口を開いてみた。
 すると、二人からは
「だって、その方が一々揉めなくて平和じゃない? 深雪も嫌ってわけじゃなさそうだし」
「最初は俺も抵抗があったんだけどな。でも、たまには三人でスるのもいいんじゃないかって気になってきた。だって、俺達二人から同時に攻められるお前ってエロいし。頻繁にってわけじゃないなら、三人でスるのも悪くないって思えるようになった」
 そんな無情な返事が返ってきた。
「~……」
 三人一緒の方が揉めなくて済む――という言い分はわかる。実際にその通りだと思うし。
 でもね、「深雪も嫌ってわけじゃなさそうだし」とか、二人から同時に攻められている時の俺がエロいっていうのが、正当な理由になるとは思えない。
 そりゃまあ、俺だって好きな人とするセックスだから嫌だとは思ってないよ。三人でするセックスに興奮しちゃうのも事実だし。
 だけど、尋常じゃなく恥ずかしいのも事実なんだよ。
 だから、できる事なら一人ずつとゆっくり愛し合いたいっていうのが本音ではある。
 三人でするセックスは物凄く気持ち良くはあるんだけど、気持ち良くなり過ぎちゃって、何が何だかわからなくなっちゃうんだもん。
 俺としては、愛し合っているというよりも、愛され倒されてるって感じになって、二人からの愛に翻弄されているだけみたいになるのが悔しかったりもするんだよね。
「もうさ、いっそのこと〈特別な日は三人でセックスする〉って決めちゃった方が良くない?」
「は⁉」
「確かにな。その方が俺も最初から心の準備ができるし、場合によっては、お前と事前に打ち合わせができていいかもな」
「なっ……! 打ち合わせって何⁉ 何の打ち合わせだよっ!」
 ちょっと待ってよ! 勝手にそんな決まり事を作られても困るよっ! 
 というより何より、この二人は三人でするセックスを週に一回のセックスの数に入れてくれないから、本来は週に一回ずつのセックスっていう約束が、三人でした週はオーバーしちゃうんだよね。
(ひょっとして、それを狙っている?)
 俺にあまり体力がないことは二人もよく知っているから、今のところは週に一回の約束を守ってくれている。
 三人でしよう、って話になる時も、何か特別な日でもない限りは言い出さない。
 でも、二人が週に一回のセックスだけじゃ物足りないと思っていることは俺もわかっている。
 だから、たとえ三人一緒のセックスになっても、週に一回以上、俺とセックスできるチャンスは逃したくないと思っているのかもしれない。
 俺の中では、そこもちゃんと数に入れて欲しいと思っているのに。
「打ち合わせは打ち合わせだよ」
「そうそう。今日はどっちが先にれる? とか」
「深雪にどんな格好をさせようかとか、そういう話もできるよな」
「何か新しいプレイを二人で考えるのも楽しそうだし」
「そういう打ち合わせなら絶対にしないで欲しいんだけどっ! 何⁉ 新しいプレイって! 普通でいいよっ!」
 全くもう……。二人に仲良くして欲しい気持ちはあるけれど、そういうところで仲良くして欲しいわけじゃないんだってば。
 むしろ、そこは今まで通り、しっかりライバル同士でいてくれた方が助かるのに。
「まあまあ。今日は普通にするつもりだから安心してよ」
「今後そういう可能性もあるってだけの話だから」
「だから、それが……ぁっ……」
 とても今から恋人同士で愛し合うような雰囲気ではなかったはずなのに……。
 立ち上がった雪音と頼斗の腕が俺を軽々しく持ち上げてくると、俺はあっという間にベッドの上へと運ばれてしまった。
「ちょっ……んっ……」
 二人の手によって優しくベッドの上に下ろされた俺は、まだ話は終わっていないと言わんばかりに、ちょっとだけ怖い顔になって二人を睨んでやったんだけど
「メリークリスマス、深雪」
「今夜はいっぱい愛し合おうね」
 俺の怖い顔にも全く怯む様子がないどころか、俺に向かって柔らかい笑みを浮かべてくる二人の前では、俺の頼りない主張なんて何の役にも立たないと思った。


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