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第四章 クールなノンケ豪商もホモの悦びに目覚めて
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「さてと、そう言えば夕飯時ですね。ちょっと遅くなったけど」
「そうだな……。腹が減った。気持ちよすぎて忘れていたが……」
再び風呂を使い、ベッドの上でふたりで戯れる。外はすっかり暗くなり、夕食の機会を逸していた。
「エドワード様、夕飯はどうするおつもりですか?」
「そういえば……。考えていなかった……。家に帰ってからでは遅いしな」
エドワードには特に食べるあてがあるでもないらしい。
(これは……好機到来ではないか……?)
里実の脳に閃きが降りてくる。客にリピーターとなってもらう方法はいろいろある。それこそ性技に限らない。
「よければ食べて行かれませんか?まかない飯ですが、けっこういけますよ?」
「そうだな……。お相伴に預かるとしようか」
男妾館で出る食事とはどんなものか、興味を持ったらしい。里実はガウンを羽織ると1階の台所へと向かう。ほどなく、食欲を誘うにおいとともに戻ってくる。まかない飯はカレーだった。付け合わせに、レタスをちぎってワインビネガーをかけただけの簡素なサラダがついている。
「珍しい料理だが……うまそうなにおいじゃないか」
見慣れないビジュアルに戸惑うのも一瞬。エドワードはよだれをたらしそうになる。スパイスと炒められた小麦の香りに、食欲をそそられるのは自明だった。
「では頂きましょう」
「うん。…………。おお、これはうまい!」
一口食べて、イケメンの豪商が驚きの表情になる。どうやら気に入ってくれたらしい。その後無言でひたすら食べ続けたのがその証左。美味しい料理は人を無口にする。
「いやあ、うまかったよ。男妾っていうのは毎日こんないけるものを食ってるのかい?」
「ははは。日にもよりますがね」
食後、お茶を頂きながら談笑する。
「しかし……。ここまでうまいものを作れるとなると相当の腕前の料理人だろう?給料も高いんじゃないのかい?」
「いえいえ。全くそんなことは。なにせ、作ったの僕ですから」
里実の応答に、エドワードの目が点になる。
嘘は言っていない。まかないは自分の作成したレシピ通りに作られているのだから。
こちらにも米の類いはあった。ただしタイ米に近い長粒種だったが。いわゆる姫飯(白いご飯)には向かなかったが、チャーハンやカレーには十分使える。香辛料やらニンジンやらジャガイモやらを集めて、試行錯誤の果てに再現したのだ。
男妾たちにも好評だったので、レシピを紙にしたためて台所の壁に貼り付けてある。まかないは下っ端の男妾立ちの当番制だ。が、みんなが食べたがるカレーを作れて一人前とされるようになった。こうして客に出しても好評だ。
「うーむ……。これだけうまいと毎日でも食いたくなるな……」
「ははは。毎日ではさすがに飽きますよ。まかないのメニューは日替わりですから、また別の日に来て頂ければ美味しい物を食べて頂けますよ」
「他のメニューも……。君が作っているのかい……?」
「全部ではありませんがね。僕が作るものは割と皆好評でして」
ついドヤ顔になってしまう。
こちらに来て、高級男妾になっていくつかの発明品を世に出した。懐に余裕ができたので、あちらの世界の食べ物を再現してみることにした。豆腐や湯葉、醤油、味噌、漬物etc……。いずれも好評で、美食好みの貴族たちがレシピを知りたがるほどだ。
「差し支えなければ……。今後のメニューを教えてもらえないか?」
「はい、喜んで」
できる限り詳しく献立を書いた紙を渡す。
が、これが少しだけまずかった。
…………………………………………………………………
「うん。このソバというのもいいじゃないか。ハシの使い方がまだ慣れないけど」
たぬき蕎麦に舌鼓を打つエドワードの表情を、里実は素直に喜べなかった。
(うーむ……リピーターになってもらえたのはいいけれど……)
彼が男妾館に通うのが、少し頻繁になりすぎている。ちゃんと家で夫として父として役目を務められているのか不安になるほどに。
無論、豪商でメイドも執事も何人もいる。奥様や赤ん坊のお世話をする人手にはことかかないだろう。だが、夫と父親の代わりは余人には務まらない。
そして、不安はこの後的中することになる。
「そうだな……。腹が減った。気持ちよすぎて忘れていたが……」
再び風呂を使い、ベッドの上でふたりで戯れる。外はすっかり暗くなり、夕食の機会を逸していた。
「エドワード様、夕飯はどうするおつもりですか?」
「そういえば……。考えていなかった……。家に帰ってからでは遅いしな」
エドワードには特に食べるあてがあるでもないらしい。
(これは……好機到来ではないか……?)
里実の脳に閃きが降りてくる。客にリピーターとなってもらう方法はいろいろある。それこそ性技に限らない。
「よければ食べて行かれませんか?まかない飯ですが、けっこういけますよ?」
「そうだな……。お相伴に預かるとしようか」
男妾館で出る食事とはどんなものか、興味を持ったらしい。里実はガウンを羽織ると1階の台所へと向かう。ほどなく、食欲を誘うにおいとともに戻ってくる。まかない飯はカレーだった。付け合わせに、レタスをちぎってワインビネガーをかけただけの簡素なサラダがついている。
「珍しい料理だが……うまそうなにおいじゃないか」
見慣れないビジュアルに戸惑うのも一瞬。エドワードはよだれをたらしそうになる。スパイスと炒められた小麦の香りに、食欲をそそられるのは自明だった。
「では頂きましょう」
「うん。…………。おお、これはうまい!」
一口食べて、イケメンの豪商が驚きの表情になる。どうやら気に入ってくれたらしい。その後無言でひたすら食べ続けたのがその証左。美味しい料理は人を無口にする。
「いやあ、うまかったよ。男妾っていうのは毎日こんないけるものを食ってるのかい?」
「ははは。日にもよりますがね」
食後、お茶を頂きながら談笑する。
「しかし……。ここまでうまいものを作れるとなると相当の腕前の料理人だろう?給料も高いんじゃないのかい?」
「いえいえ。全くそんなことは。なにせ、作ったの僕ですから」
里実の応答に、エドワードの目が点になる。
嘘は言っていない。まかないは自分の作成したレシピ通りに作られているのだから。
こちらにも米の類いはあった。ただしタイ米に近い長粒種だったが。いわゆる姫飯(白いご飯)には向かなかったが、チャーハンやカレーには十分使える。香辛料やらニンジンやらジャガイモやらを集めて、試行錯誤の果てに再現したのだ。
男妾たちにも好評だったので、レシピを紙にしたためて台所の壁に貼り付けてある。まかないは下っ端の男妾立ちの当番制だ。が、みんなが食べたがるカレーを作れて一人前とされるようになった。こうして客に出しても好評だ。
「うーむ……。これだけうまいと毎日でも食いたくなるな……」
「ははは。毎日ではさすがに飽きますよ。まかないのメニューは日替わりですから、また別の日に来て頂ければ美味しい物を食べて頂けますよ」
「他のメニューも……。君が作っているのかい……?」
「全部ではありませんがね。僕が作るものは割と皆好評でして」
ついドヤ顔になってしまう。
こちらに来て、高級男妾になっていくつかの発明品を世に出した。懐に余裕ができたので、あちらの世界の食べ物を再現してみることにした。豆腐や湯葉、醤油、味噌、漬物etc……。いずれも好評で、美食好みの貴族たちがレシピを知りたがるほどだ。
「差し支えなければ……。今後のメニューを教えてもらえないか?」
「はい、喜んで」
できる限り詳しく献立を書いた紙を渡す。
が、これが少しだけまずかった。
…………………………………………………………………
「うん。このソバというのもいいじゃないか。ハシの使い方がまだ慣れないけど」
たぬき蕎麦に舌鼓を打つエドワードの表情を、里実は素直に喜べなかった。
(うーむ……リピーターになってもらえたのはいいけれど……)
彼が男妾館に通うのが、少し頻繁になりすぎている。ちゃんと家で夫として父として役目を務められているのか不安になるほどに。
無論、豪商でメイドも執事も何人もいる。奥様や赤ん坊のお世話をする人手にはことかかないだろう。だが、夫と父親の代わりは余人には務まらない。
そして、不安はこの後的中することになる。
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