異世界で平和ボケしてたオレのドタバタ七日間

ぐるぐる

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子爵が生きることを選択してから、怒涛の如く情報が入ってきて、あやうく神の使者っぽいオレがぶっ倒れそうになった。
神の使者が倒れたらカッコ悪いだろ!

『ダウンロードしました』

ナビからお知らせがきた。

いや、ダウンロードする前に教えてくれると助かるんだけどなー!?
心の準備ってものがあればもっと踏ん張れたと思うよ。
驚くこともなかったしね!?
なんだかナビのオレに対する扱いが大丈夫なのかなと心配になってきた。
オレの存在があってのナビの存在だと思うんだ。
だって、ナビはオレの鑑定スキルなんだからね!

『時間がありません』

オレの怒りを逸らすためなのかわからないけど、オレの思考をうまく反らすね!

そう、膨大な量の情報が頭にダウンロードされて、さらにタイマーが別ウィンドウで表示されたのだ。

決戦の七日目までの六日間、やらなきゃいけない事が細かく順序よく提示されていて、タイマー付きでいつからいつまでにアレしろコレしろと、オレは指示通りに動かなければならなかった。

すげーヒットしてたアメリカドラマのようだよ。
因みにそのドラマは観てないよ。
だからその主人公のようにやってやるー!とか思わない。
オレにあるのは子爵ともどもオレ達が勝つ!生きるんだ!やるしかない!という気持ちだけ。
だから、ナビ様に従いますとも!
なんか、癪だけどね!?

「かしこまりました。
 では、生き延びるための条件として、ひとつお約束してください。
 私の指示に従い、行動していただくことです。」

これもナビが用意してくれたセリフだ。
多分今後、子爵様との会話はずっとナビがしてくれるんだろうね。

「従おう」

淀みのない子爵の返事にオレは軽く礼をする。

「それでは子爵様、侯爵様へ助けを求める手紙をお書きください。
 使用人がいないひとりきりの時に書き、手紙を誰にも見つからないように気をつけてください。
 その手紙は明日午前中に受け取りに参ります。」

「寄親の侯爵様へか」

「左様でございます」

何を考えているのか、何を言いたいのか、またもやじっとオレを見つめてきた子爵。
貴方の気持ちはとてもよくわかります。

養子が勝手に連れてきた男爵家の三男如きが、なぜこの子爵家の寄親を知っているのか。
その男爵家は良い教育をしているだけでなく、将来平民になるであろう未来しかないこの三男も、真面目にしっかりと勉強してしている賢い子なんだな。
いや、神の使者であったか。
と思っているに違いない。

タイマーがチカチカしてカウントダウンがゼロに迫ってきていた。

「では、時間がありませんので、これにて本日は失礼致します。
 明日は11時過ぎまで寝たふりをして、声をかけられても決して反応してはなりません。
 それは毒の効果により、睡眠時間が少しずつ日々長くなるためです。演技をしてくださいませ。」

「わかった」

丁寧に一礼をした後、部屋に併設されている小さな流し台に、生活魔法で出した水と共に毒を流し、布巾の一部を濡らした。

布巾の一部を濡らしたのは、薬という名の毒を飲んだ後に、口の周りをキレイに拭き取ったかのように見せかけるためのものだ。

まさか布巾を確認する奴がいるなんて、と思うが、ナビが念のためにやれっていうから従い、退室した。

カウントダウンタイマーは退室をするところまでで、タイマーの時間が延びていた。
次のタイマーは部屋を出てから次の部屋に入るまで。

あと15秒。

邸のマップが出てきてオレの部屋ではなく、厨房へ行くまでのただの空き部屋。
ナビによると、オレの姿を使用人に極力見られないように、ということで隠れるんだそうだ。

足音を出さないようにという指示に従いながら、急ぎ足で向かった。

邸が広いし、普段どれくらいの時間で次の部屋に移動できるのかなんて考えて行動なんてしないから、マップとタイマーを見てあれ?あれ?と焦り出した。

あと8秒・・・・・・
間に合わなくね???
残り7秒でめちゃくちゃダッシュした!

もちろん足音は立てていない。

ゴールの部屋に近づくと左に曲がる廊下から誰かの足音が微かに聞こえてきた。

こいつか!
こいつに見られちゃダメなのか!

タイマーは2秒を切った。

もうゴールの部屋の前だ。
転ばないように急停止して、音を立てないように慎重に、でも急いでドアノブを回して体を滑り込ませて静かにドアを閉めた。

ドアを閉める時も、ドアノブから手を離すときも、音が出ないように神経を使った。

残り2秒でタイマーを見る余裕はなかったけれど、どうやら間に合ったようだ。

次は始めから走って移動、とか注釈入れて欲しいよ、ナビさま。
バカでチキンなオレの心臓は跳ね、息も絶え絶え、汗ダラダラだった。


ダウンロードされた情報によると、次期さまは、なんと横領していて、邸内の化粧ハデハデお色気ぷんぷんメイドちゃんと恋人関係にあり、豪遊しているとか。

横領の証拠がマップに表示されている。
なんで証拠を残しているのかおバカなオレには理解できない。

さらに使用人、メイド達の2割くらいは次期さまの息のかかった者達に入れ替えられていたんだと。
だから子爵は常に監視されていたが、今後はオレも監視される。
怪しまれないように、とにかく姿を極力見られないようにするのが1番良いのだそうだ。
演技力がなくって、言い訳が下手くそなオレのために、ナビはちゃんと考えてくれてるんだなぁ。


そんな感じで今後、邸の中ではオレの姿を誰の視界にも入らないように六日間行動することになった。

つかれるー!
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