異世界で平和ボケしてたオレのドタバタ七日間

ぐるぐる

文字の大きさ
5 / 13

自腹を切ってたまるか!

しおりを挟む
子爵の朝食は1時間後に来る時に用意して、部屋に置きっぱなしにすることになった。

ひとまずオレは次期さまに報告だ。

「あの・・・・・・子爵様はいつもの時間に起床されませんでした。
 元気になるお薬なんですよね?」

次期さまの前ではオロオロして愚鈍そうに演じる。
っていうか、素の自分で全く問題ない。

「ははは、それは薬がよく効いている証拠だ。
 今後もしばらくは寝ている時間が長くなるだろうが、心配することはない。元気になる兆候だからな」

「そ、そうですか。承知しました。
 あ、あの、ひとまず何時にお目覚めになるかわからないので、食事をお部屋にご用意しておきたいと思います。」

「いいだろう。今日の午後も薬を受け取りに来い。」

いつもよりちょっと機嫌の良くなった次期さまに一礼して部屋を出た。
そしてオレはこの子爵家に古くから仕える家令なるおじい様に、子爵の状態の報告と、家族に手紙を出すための外出許可をいただいて、8時の時報がなる前にキッチンに来た。

「子爵様の朝食を」

そのひと言でシェフ達が動き出す。
いつもの光景に安堵するが、鑑定すると数名が敵だった。
キッチン内も監視されてるんだな、気をつけなくちゃ。

シェフ達の動きを気にしながら、いつものようにカートやカトラリーやら用意し、ついでに視界に入っている人参数本と、お高そうな未開封のお酒を一本、魔法で収納した。
お酒はバレないようになるべく奥にあったものを。

バレないかなとドキドキしたけど、みんなそれぞれ動いていたから物が消えたという変化に気付いた人は居ないみたいだった。

そしていつものようにトレイを受け取って、カートに載せて再び子爵の部屋へ。
摘めるようだったら少しずつ召し上がるように伝えて自室に戻った。

家族への手紙を書かなくちゃね。

・・・・・・みんな元気にしてるかなぁ会いたいなぁ会いたいよぉ
お休みもらって会いにいきたいなぁお休みもらえるのかなぁ
とりあえず今はオレも子爵様もお元気だよ。心配しないでね。
こっちで落ち着いて力をつけたら、いっぱい稼いでみんなに仕送りできたらいいなぁ

これでいっか。
変なこと書いたら心配かけちゃう。

11時には子爵との約束の通り、起床してもらった。
昼食は朝用意したものを摘むから、新しく用意しなくて良いと言われた。
もともと食が細くなってしまっていたので、そう言われるのではと思っていたけどね。

さて、いよいよ外出だ。
フード付きの外套を着て、顔を隠す。
一応貴族の端くれですからね!トラブルは極力避けねばね。

配達屋さんに向かういつもの道ではなく、ちょっと遠回りを示すナビさま。
これは、馬だな!馬に会いに行くんだな、うんうん。オレは動物が好きだから、死にそうなメンタルを癒すためのアニマルセラピーをナビが考えてくれたんだな、きっと。
さすがオレのナビだ!

馬が広い柵の中で自由に遊んでいるのを見ながら、農場主を訪ねた。

「こんにちはー!ごめんくださーい!」

とんとんとん

優しく戸を叩く。

シーン・・・・・・

留守でしょうか?
もう一度声をかけてみましょう。

「すみませーん!」

ドンドンドン!

さっきより大きく叩いてみた。
それでもうんともすんとも言わないからやっぱり留守なのかなぁ?

「だれだ!!」

急にドアが開いてでっかい図体の怖い人が出てきた!
「ひぃー!」
驚いて尻餅ついちゃった。

「チビがなんの用だ!!」

怖い人はオレの首根っこを掴んで立たせてくれた、のではなく、自分の視線の高さまでオレを片手で持ち上げた!
なんて怪力なんだ!
怖すぎて今すぐ死にそうだよオレは!

ナビが酒を渡せと一所懸命ウィンドウを出してきた。

言葉は出なくなっちゃったけど、酒で解決出来るなら、キッチンで収納してきた酒をこの怖い人に捧げよう。
骨は拾ってください。

「酒か!とりあえず入れ!」

入るも何もオレの首根っこ掴んだまま家に入った怖い人。
拉致ではありませんか!?オレ君、大丈夫???

涙目になっているオレに、怖い人はホットミルクを出してくれた。

「飲め!」

なんでこの人は怒鳴るんだろう・・・・・・
相変わらず声が出ないオレは首を縦にコクコク振って、最小の動作でミルクをいただいた。

「それで、なんの用だ」

怖い人はオレが持ってきた酒を飲んで、声を少し抑えて訊いてきた。
実を言うと、オレも何の用かよくわからない。

ピロンとウィンドウがでてきた。

人参を出せば良いのか。
ゴトゴトゴト

「ふん、馬と遊びたいのか。いいだろう!好きなだけ遊んでけ!」

カカカ!と怖い人は笑って入ってきたドアとは違うドアを指差した。

怖い人の迫力にまだ慣れなくて、オレは逃げるようにそのドアから外に出た。
ああ!人参忘れた!
仕方なく走って戻り、人参を抱えて再び外へ。

怖い人がまたカカカと笑った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!

風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。 185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク! ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。 そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、 チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、 さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて―― 「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」 オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、 †黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...