異世界で平和ボケしてたオレのドタバタ七日間

チキンハートを強化する方法

あの後、優しい子爵様に声をかけていただいたけど、涙を誤魔化し、いつものように対応して自室に戻った。

いつものように、微笑むことができてなかった気がする。
声も震えちゃってた。

女への怒りで立ち直るかと思ったけど、チキンはチキンだったよ。

子爵様に心配かけちゃったな。
っていうか、天国の遣いであるアトラスがカッコ悪いな･･････

あー女ってこえーなー
世の中にはあんなこえー女が居るんだな
オレのかーちゃんマジ聖母さまじゃん
数少ない使用人のおばちゃんやねーちゃんたちも優しいぜ？
でもオレんちの使用人ってみんな平民なんだよね。
一応身分を弁えて接してくれてんのかな。
わかんないけど、学園に入学したら貴族の女たくさんいるしなー
嫌な未来しか見えないよ
オレって女の子とちゃんと結婚できるかなー
かーちゃんみたいな優しい女の子はいるのかなー
あ、かーちゃんの血筋から探せば大丈夫な気がする！
早速手紙で相談しよう。

女嫌いになってしまいそうなのを踏みとどまって、時間まで腹筋することにした。

メンタルがチート覚醒してくれなかったからな！
自力で強化するんだ！

チキンハートを強化する方法。
それは地道に腹筋を鍛える事。

前世で読んだ本によると、腹筋をすることで心を強くすることが出来るんだって！
筋トレなんて柄じゃないけど、同じ失態を繰り返さない程度には、心を強くしようと思う。

応援してくれ。

ピロン

『がんばれ』

ありがとう！


自分で自分を応援しているみたいな変な気分になっちゃった。



腹筋３０回でギブアップしましたけど、継続は力なり、だ。
毎日頑張ります。


そんなこんなで薬の時間になってしまった。

腹筋３０回くらいでチキンハート脱出できるわけがない。
やだよー怖いよー行きたくないよ･･････
でも行かなきゃもう片方の頬も叩かれちゃうかも。

動悸息切れが激しいけど、渋々薬瓶をひとつ持って子爵の部屋へと向かった。

クソ女が言った通り、薬を用意して子爵の部屋で待っていると、またノック無しに入室してきた。

怖くて顔を上げられない。

「子爵様、本日のお薬です」

女を待っている間、オレは子爵様に、毒をすり替えたので普通に飲むように伝えていた。
女の監視の目が気になって、手がめちゃくちゃ震えてしまった。
水が溢れそうなのを必死にもう片方の手で押さえ付けてなんとかした。
キレイに飲み干した後、子爵様の枕を低くして再び寝てもらった。

もう用はないだろう。

女と距離を保ってそそくさと退室すると、女も黙ってついてきた。

無言！
終始無言の監視！
怖すぎ。


「待ちなさい」

ひ！！！

ついに声がかかってしまった。
自然と早歩きになってしまったのが気に食わなかったのだろうか？

体がブルブル震えちゃって可哀想なオレ君。

振り返ることもできず、その場で立ち止まった。
立ち竦んだ、の間違いかな？

「あんた、生意気なのよ！」

ゴス！

背中に何か尖ったものが強く当たってオレは前に倒れた。
どうやらメイドらしからぬ高いヒールで、オレの背中を蹴ったようだ。
ヒデェ
っていうか、イテェ
マジいて･･････

女は痛がるオレを見て笑いながら去っていった。

ほんっとに痛い。
絶対アザになるな。
多分きっと血は出ていないと思う。

女って怖い
都会って怖い
もうやだー田舎に帰りたい
こんな異世界嫌いだ