異世界で平和ボケしてたオレのドタバタ七日間

ぐるぐる

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やっと着いたけどまだ半分。復路が待っています。

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少し休憩してなんとか動けるようになった。

ジャーキー号は与えたエサを全部食べて休憩&散策中。
オレはナビの指示で草取りだ。
スキルも多少の魔力を消費するから省エネモード。
目的の草をひとつ採取したらあとは自分で同じのを探せと。

この辺にある価値のある草。
それはさまざまなポーションに使われる草で、一般的なケガの治癒や軽い病気に効く薬草だったり、眠り薬に使う草だったり、高価なポーションや薬に使う稀少な草も少しあるみたいだ。
売ってお金にすることができる。
収納しておけばいつでも新鮮だし、困った時にはお金にしてもいいね。

ラノベでよく読んだ素材採取の冒険者になったかのようで楽しく、時間なんて忘れて夢中になって探しまくってた。

ナビがそろそろ出発するようにウィンドウ出してきたから、またジャーキー号に乗らなきゃ。
束の間の森林セラピーだったな。
それでもかなり癒された。
自然は素晴らしいね!



「はあああああ」

現実に引き戻されて盛大なため息を吐いてしまった。
また馬に磔にされて、さながら市中引き回しの刑にされた犯罪者かのように……街道を走るんだ……見せ物みたいに……

やだなぁ

そんな事を考えながらも、自分の体をまた馬に括り付けていくと、思いついた。
拝借してきたシーツを体に羽織れば、多少は縛っているロープが隠れるよね!
すげー良いアイデアだ!

自画自賛してシーツを上手く体に巻き付けて、準備はOK

『よーし! 全回復したからな、また全速力で行くぜ!』

ヒヒーン!

嘶いて、前足を蹴り上げてクールベット!!

「うわー!」

体が後ろに傾いて浮遊感を感じたあと、前につんのめった。

いて!

そのパフォーマンスはいらないだろ!!
なんなんだお前は!

オレが怒り狂ったのは一瞬だった。
ジャーキー号が朝と同じように物凄い速さで走り出したから、怒りは恐怖に。
そして朝と同じようにオレは無意識に魔力を使って己を守り、魔力切れになって気絶した。




ピロン

『寝ているアトラスにかわり、ナビが状況報告します』



気絶したアトラスを気遣う事なく、ジャーキー号は侯爵邸に全速力で走った。
さすがに人が多い街中は走らなかったが、街道にもそこそこ人が居て、背に白い荷物を乗せた大きな馬が、商人らの馬車を追い越して行ったのを何人もの人に目撃されていた。

時刻は14:47

侯爵邸の門前に着いた。

「お、おい!この馬は!じゃじゃ馬ジャーキー!?」

「間違いない、ジャーキー号だ! なんでここに??」

門番の騎士はジャーキー号を迎え入れて上司の隊長に連絡を入れた。

ジャーキー号は以前、この侯爵家に買われたのだが、馬具を嫌って装着しない、人を乗せるのも嫌がるなど、とにかく反抗ばかりだった。
そのため、じゃじゃ馬と呼ばれ、誰もこの馬の手綱を掴むことが出来なかったので、軍馬にはせず、次世代の従順な軍馬を生産するための種馬として、アトラスに出会ったあの農場に預けられたのだった。

騎士がジャーキー号の背に乗っている白い荷物を確認するため、シーツをはがすと気を失った少年、アトラスが出てきた。
ロープで体が落ちないようにぐるぐる巻きにされている様子はとにかく異様で異常だった。

「おい!坊主!大丈夫か!?」

騎士が声をかけながらロープを解いていく。
ジャーキー号の背からアトラスを抱き上げ、頬を軽く叩くと、うっすらと目を開けた。

「こ……ここは……」

「ここは侯爵様の邸だ。一体何があった?」

アトラスは目的地に着いたとわかり涙が出そうになったが、やるべき事があるため、グッと堪えて、子爵様の手紙を出してみせた。

「子爵様から侯爵様へ、緊急なお手紙をお届けに参りました…。侯爵様へ御目通りを…!」

息も絶え絶え懇願した。

「では手紙を預かろう」

「だ、ダメです!…子爵様より、侯爵様へ、手渡しするように厳命されています…侯爵様…侯爵様…」

魔力切れからの回復中のため、頭痛が酷い。
体もまたあちこち痛くて、騎士に運ばれていくしかない。
侯爵様へお知らせするために別の騎士が走って行った。
アトラスは譫言のように侯爵様を呼んでいた。

異常な状況に何かを感じ、侯爵はアトラスに会うことにした。

「おい、坊主!侯爵様に御目通り叶ったぞ。しっかりしろ!」

アトラスはその言葉に力を振り絞って目を開けた。
目の前に口髭を上品に整えた金髪碧眼のイケオジがいて、ナビの矢印が突き刺さっていた。
鑑定で間違いなく、手紙を渡す相手、侯爵様である。

「侯爵様…どうか子爵様をお助けください…」

アトラスは手紙を差し出して、侯爵様が受け取ると、安堵して再び気を失った。



やっと…やっと手紙をお渡しできた…



アトラスは呑気に寝てしまったが、このあと子爵邸に次期さまが帰宅する前に、来た道を帰るという苦行が待っているのだった。



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