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お婆様
しおりを挟む「そこのお兄さん、恋人にプレゼントはいかがかな?」
「・・・ああ、ちょっと見せてもらおうかな」
宝石屋の店主が二人に声をかける。メアリーを恋人と呼び、二人はカップルであると思っているようだ。実際年齢も十二歳差なので兄妹に間違われることはあっても親子と思う者はいない。しかも今はイチャイチャと手を繋いでいるので尚更だ。
(これ、リチャードの瞳の色にそっくり)
「お目が高いね、お嬢さん。それは純粋で濁りのないエメラルドだから、とっても珍しい品だ」
「へぇ・・・」
「いくらかな?」
リチャードに店主が聞かれ、それを店主は伝えた。貴族でも躊躇うような金額であったがリチャードはそれを購入すると言う。
「・・・でも・・・」
「気にいったんだろう?」
「・・・だってリチャードの瞳の色に似てるから・・・」
リチャードはメアリーの頭をポンポンと優しく叩き、それを購入した。
「・・・ありがとう・・・大切にするね」
「ほら、付けてあげよう」
リチャードはメアリーの後ろに回り、ネックレスになったチェーンを取りつける。まるでリチャードに守られているようなそのネックレスにメアリーは笑顔が溢れた。
「そのチェーンは水にも強いから、お風呂に入っても大丈夫だ。メンテナンスも無料でしてあげるからまたおいでね」
「ありがとう、店主さん」
そう言って店を出た。ルンルンと笑顔で歩くメアリーを見てリチャードもクスリと笑っている。
「可愛いな、メアリーは。もう食べたくなっちゃう」
「ん・・・だめ、リチャード、こんなとこで・・・」
リチャードはネックレスのチェーンと共に、首筋にキスを浴びせた。メアリーは顔を真っ赤にして抗議する。そんな怒るメアリーも可愛いなとリチャードはそれを止めない。
「・・・メアリー・・・あなた・・・メアリーじゃないの・・・」
「・・・ターニャおばあ、さま」
(なんでここに・・・おばあさまが)
そこにいたのはメアリーの祖母であるターニャであった。彼女は前国王の妹で、母シスリーの母である。王都から外れている場所なので知り合いに会わないとメアリーたちは油断していた。
「あなた・・・メアリーに・・・なんて破廉恥なことを・・・」
リチャードを虫ケラのように見下してターニャは怒鳴り付けた。ターニャは王族主義で、血を重んじる女性なのだ。彼女は厳しく、母シスリーが亡くなった際もターニャがメアリーを受け入れたいと言ったのだが、ターニャは外国の田舎に滞在していたので断っていた。
「・・・なんてこと、なんてことなのかしら、ああ、メアリー、すぐに私と来るのです!!」
「ターニャおばあさま、違うんです、これには訳が・・・」
「何が違うと言うのですか!!血の繋がっていない父親と・・・恋人のように・・・ああ、寒気がする」
ターニャはメアリーを馬車に乗せ、馬車を無理やり出発させた。それを泊めようとするリチャードはターニャの連れていた男性の使用人に引き離され、メアリーは馬車の中から離れていくリチャードを見て泣き叫んだ。
「リチャード、リチャード!!」
「お黙りなさい、メアリー!!あんな平民の血を持った男などにあなたを預けるんじゃなかったわ・・・」
+
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「さあ、あなたの部屋も準備致しますからね」
ターニャは外国からこの国に戻り暫く生活をする予定だそうだ。大きなタウンハウスは使用人で溢れ、メアリーに一人護衛が付く。
「これからはここに住むのですよ。マナーも学び直さなければなりませんから忙しくなりますわよ」
「ターニャおばあさま・・・少し話だけでも・・・」
問答無用と言ってメアリーは大きすぎるタウンハウスで生活することとなった。休暇中は再び貴族マナーを学び直させられ、誰かが常に監視していた。
「あなたは、あの男と、何もなかったのでしょうね・・・」
「何もなかったって・・・どういうことですか、ターニャおばあさま」
「言うのもおぞましいですけど・・・あなたはその、純潔を・・」
ターニャは恐る恐るメアリーに聞いた。この国ではそれほど純潔にこだわる国ではないのだが、ターニャにとっては重大なことだ。
「・・・それは、まだです・・・でも、私の純潔は、彼に捧げるって決めてます」
「・・・そんなこと許される訳がないでしょう・・・今後一切彼に会うことは禁止ですからね。あなたにはちゃんとしたお相手を探して差し上げますわ」
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