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メアリーの婚約者
しおりを挟む「今日は国王の誕生パーティーですからあなたも参加しないとですわよ。他の国からも大切なゲストがいらっしゃいますからね。絶対に参加してもらいますよ」
「はい・・・おばあさま・・・」
引きこもりもこれで終わりにしなければならないだろう。ターニャはメアリーの卒業式後にマークとの婚約発表をしようと意気込んでいる。
「おばあさま、私・・・ランディ侯爵と婚約したくありません・・・」
「あなたは誰でもそう言うじゃないですか。まさかあのリチャードという男とまだ結婚したいと言うのではないでしょうね・・・」
「・・・」
「もう爵位も捨ててどこにいるか分からない男忘れなさい。ランディ侯爵程しっかりした血筋で財力のある男性はいませんよ」
ターニャは国王の誕生パーティーでのメアリーの同伴をランディ侯爵にお願いしたそうだ。彼から毎週のようにプレゼントが届き「早く結婚したい」というメッセージが添えられていた。
(・・・やっぱり修道院に逃げるしかないのかしら・・・それともリチャードを探す旅に出ればいい?)
リチャードはもしかするとメアリーのいない新しい生活を過ごし、そこで一緒に過ごしている素敵な女性がいるのかもしれない。しかしメアリーはどうしてもリチャードを諦めたくなかったのだ。
(どうしたら・・・いいの・・・)
+
+
+
「今日は私の送った服を着てきてくれたんだな。嬉しいよ」
「素敵な衣装・・・ありがとうございました」
ランディ侯爵におくられた服は、白と黒がベースとなっており、スカートはパニエが入っていた。頭にヘッドドレスを付けて薄く化粧をのせれば、メアリーは世界一美しいマリオネットのようになった。
「さあ、行こうか」
「はい・・・」
パーティー会場には多くの来賓がつめかけていた。
『ラヌリスの国王とワーナーの国王もいらっしゃってるそうよ』
『急遽東国の皇帝もいらっしゃったみたいよ』
『まぁ、本当に?凄い面子ね・・・』
メアリーは噂話に耳を傾けながら、会場入りした。ランディ侯爵は多くの知り合いがいるらしく、会話を始めていく。
「ランディ侯爵・・・こちらの素敵なお嬢さんは?」
「私の大切なヒトですよ」
ランディ侯爵はメアリーをまるで婚約者かのように紹介をする。メアリーはそんなランディ侯爵に吐き気がした。
(まだ決まってないのに・・・)
「これはこれは、ランディ侯爵の好みピッタシの女性ですなぁ。夜は私もお貸ししていただきたい」
「はっはっは、まずは調教して人形にしてから、夜お貸ししますよ」
──ゾクッ──
ランディ侯爵と特に仲が良さそうな男がメアリーを値踏みするかのように舌なめずりをして見ていた。メアリーはゾクゾクと寒気が襲う。
「ほら、暑いだろう。少し外に出ようか」
「だ、大丈夫です・・・」
ランディ侯爵がメアリーを外に誘う。しかしメアリーは人気のないところには彼と行きたくなかった。メアリーは拒否しようとするも、ランディ侯爵はメアリーを掴み、外に導いた。会場から音楽が聞こえてきており、もし助けを求めても声がかき消えそうである。
「さあ、お仕置きタイムだよ」
「わ・・・私何もしていません・・・」
「私の友人に色目を使っただろう?」
「そ、そんな事してない・・・」
「うるさい!!早く四つん這いになれ!!」
ランディ侯爵は相当ワインを飲んだのか酔っぱらっている。目は据わっていて恐怖で震える。メアリーは脱げない紐で括られた黒のヒール靴を穿いており走ってもきっとすぐ追い付かれてしまうだろう。メアリーは指示通り四つん這いになった。
「歯ぁくいしばれ」
「や、やめてください・・・ァアアアアア!!」
ランディ侯爵は足を思い切り振り上げ、メアリーのお尻を蹴り上げた。衝撃で体が倒れてしまう。メアリーは衝撃で放心状態であったが、ジンジンとお尻が痛みだす。これは前回よりも酷い痣になっているだろう。
「ふっ・・・ううう・・・やめて下さい・・・やめて、パパ・・・パパ助けて・・・」
メアリーはリチャードの助けを求める。来ないと分かっているが、言わずにはいられなかった。
──バァァン!!──
「ぐぁああ!!な、なんだてめえ!!」
涙に滲む目を開けて鈍く響いた音の方向を見ると、ランディ侯爵が吹き飛ばされ地面に倒れているのがみえた。
「私の、私のメアリーに・・・なんてことを・・・死ね・・・お前は死んで償え」
(この・・・声は・・・)
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