病んでる僕は、

【改訂前】始まり

僕は期待外れ

「今日は転校生が来てる」

「「えぇーっ！」」
「こんな時期に？」
「イケメンかな？」
「可愛い系がいいな」
「王道転校生キターッ！」
ザワザワと騒がしいクラスの声を聞き、はぁー、とまたため息が出てしまう。
勝手に期待して、期待を裏切られる彼らの顔はどんなものだろうか。

「さぁな、お前らの目で確かめろ。夜霧、入ってこい。」
「…はい。」

ガラッと扉を開けて、入るとビシバシと視線が刺さるのを感じた。

「なんだよ根暗かよ」

誰かがそう呟くと、それに釣られて他の奴らも口々に言葉を交わす。

「残念、ハズレだね。」
「期待して損した」
「てか、さっき先生に名前呼びされてなかった？」
「確かに」
「根暗のくせに生意気」
「王道じゃなかった…」

だからこの世はつまらない…。

無意識にまたため息が出て思わず口に手を当てる。
このままじゃ、ため息が癖になってしまうな。
心の中で苦笑しつつ、自己紹介しろ、と目で訴える先生を一瞥して口を開いた。

「東屋夜霧、です。よろしく…お願いします。」

クラスの数人と目が合った気がしたが直ぐにそらす。

よろしく、と言っても社交辞令。
こんな根暗なやつとなんて誰も友達になりたがらないだろう。

「あー…アレだ。仲良くしなくてもいいが俺に迷惑かけんなよ。」

数人がそれは教師としてどうなんだ、などと呟いてるが、僕としてはとても助かる。

先生に目をやると目が合って、すっと柔らかく目が細められた。

"好きなようにしろ"

何となくそう言われたような気がした。

「んじゃ、夜霧の席はあそこの…あの寝てる金髪の奴の隣な。」
「…はい。」

窓際の1番後ろの席だ。
日当たりも良さそうだし、いい感じ…かな？

席に向かう途中、足がわざとらしく伸ばされていた。

なんというか…幼稚だな。
ここは金持ちエリート校と聞いていたが、やはりそれは上部の人間だけ、ということだろう。

とりあえず、不自然にならないようにすっと避ける。

チッと大きく舌打ちをされ睨まれたが僕には関係ない。
第一、僕は何もしていない。

…もし、仮に前に会ったことがあるにしても覚えてない。


足を伸ばしてたのは1人じゃなかったみたいだ。
数人の足をすいすいと避けつつ、席に着くと、隣の金髪男が目を覚まして眠たげにこちらを見ている。

とりあえず、隣だし、いわゆる美形という部類に入るだろうそいつにぺこっと小さく頭を下げてから前を向く。

この学校がホモの巣窟と気づいた今、美形に関わることは危険、と脳が警鐘を鳴らしていた。