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第4話 初めてのデートです
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「千代晴、どこ行きますかっ? どこ連れてってくれますか?」
「いやちょっと、腕組むなって……!」
「おれ、千代晴と遊べる所行きたいです! いっぱい動いて、いっぱい汗かける所がいいです!」
「そんじゃ、ラブホ直行だな」
ニヤつきながらからかうと、意味を分かっていないヘルムートが目を輝かせて俺に抱きついてきた。
「らぶほ? 千代晴とラブホ行きます!」
「う、嘘だっつの、デカい声で叫ぶなっ!」
まだ駅にも着いていないのに、既に俺は疲れていた。相変わらずヘルムートは腕を組んで引っ付いてくるし、頭を肩にくっつけてくるせいで、妙に爽やかで甘い匂いがするし……。
「ヘルムート。地球人のカップルは、夏はあんまりベタベタして歩かねえんだ」
「えっ。そ、そうなんですか?」
「ああ、単純にお互い暑いだろうしよ。それに俺は、二人きりの時にベタベタする方が好きだし。その方が外で距離取ってた分、余計に燃えるだろ……って何言ってんだ俺は」
勝手なことをつい喋り過ぎた俺の腕から、するりとヘルムートの手が離れて行く。その顔は若干赤くなっているものの、どこか挑戦的で嬉しそうだ。
「分かりました。二人きりになったらおれ、千代晴から離れませんから」
「……お、おう」
普段は子供っぽいヘルムートの、一瞬だけ急に見せた大人の顔。不覚にもドキッとして余計に汗をかいてしまう。
*
「お店がいっぱいあります!」
上り方面に電車で三駅、この辺りでは一番栄えている河浜市の駅と隣接したデパート、駅ナカの地下街。
「見て下さい千代晴! 素敵な服がたくさん売ってます!」
「ああ、あれはゴルフとかを嗜む若干おじさん寄りの服屋だな。お前が着られそうな服屋だと……駅ビルの四階か」
「おれの服、千代晴が買ってくれますかっ?」
予想もしていなかったらしく、ヘルムートは顔を真っ赤にして両手の拳を握りしめている。
「だってお前、一着しか持ってねえだろ。服どころか下着まで俺のだし」
「ち、千代晴からのプレゼント……」
大きな目を更に丸くさせ、茹でダコのように赤くなるヘルムート。両手の人差し指を合わせてもじもじしている様を見ていると言いにくいが、あいにくプレゼントというよりは支給品だ。
駅ビルの四階に移動し、ヘルムートが好きそうな派手なデザインの服屋「KO★ロック」に入る。中はカラフルでごちゃごちゃしていて、服屋というよりはおもちゃ屋みたいだった。
「可愛いです!」
早速ヘルムートが一枚のTシャツを広げて俺に見せた。白いTシャツにはカートゥーンのような絵柄の「目玉と舌がびよーんと飛び出しているウサギ」のプリントがついていて……感想が何も出てこなかったが。
「もう少し無難な柄の方がいいんじゃないか? いや、本当にそれが良いならいいけど……」
「うーん。それじゃあ、こっち……。それか、こっちですか?」
ヘルムートの選ぶデザインは殆どが奇抜なプリントのもので、ゴアチックというかサブカル的というか、……とにかく一風変わっていた。本人がふわふわしているから、青空とか雲とかキラキラお星さまとか、そういうファンシーなデザインの方が似合いそうなものだが。
「あっ、でもこれは、千代晴からの大事なプレゼントです……! 千代晴に選んでもらわなきゃ、意味がありません!」
重要なことに気付いたとでも言わんばかりに、ヘルムートが手を叩いて俺に顔を向ける。
「俺が選んでいいのか? 何でもかぁ?」
頭の中でエロい衣装を思い描きながらニヤつく俺を見て、ヘルムートがニッコリ笑った。
俺の妄想はともかく……取り敢えず外出用の服が、上下合わせて五~六着くらい必要だろうか。それと下着、これは安いやつでいいだろう。部屋着は俺のを貸せばいいし。
店の真ん中で考えていると、まだヘルムートが始めのウサギのTシャツを見ているのに気付いて思わず笑ってしまった。
「いやちょっと、腕組むなって……!」
「おれ、千代晴と遊べる所行きたいです! いっぱい動いて、いっぱい汗かける所がいいです!」
「そんじゃ、ラブホ直行だな」
ニヤつきながらからかうと、意味を分かっていないヘルムートが目を輝かせて俺に抱きついてきた。
「らぶほ? 千代晴とラブホ行きます!」
「う、嘘だっつの、デカい声で叫ぶなっ!」
まだ駅にも着いていないのに、既に俺は疲れていた。相変わらずヘルムートは腕を組んで引っ付いてくるし、頭を肩にくっつけてくるせいで、妙に爽やかで甘い匂いがするし……。
「ヘルムート。地球人のカップルは、夏はあんまりベタベタして歩かねえんだ」
「えっ。そ、そうなんですか?」
「ああ、単純にお互い暑いだろうしよ。それに俺は、二人きりの時にベタベタする方が好きだし。その方が外で距離取ってた分、余計に燃えるだろ……って何言ってんだ俺は」
勝手なことをつい喋り過ぎた俺の腕から、するりとヘルムートの手が離れて行く。その顔は若干赤くなっているものの、どこか挑戦的で嬉しそうだ。
「分かりました。二人きりになったらおれ、千代晴から離れませんから」
「……お、おう」
普段は子供っぽいヘルムートの、一瞬だけ急に見せた大人の顔。不覚にもドキッとして余計に汗をかいてしまう。
*
「お店がいっぱいあります!」
上り方面に電車で三駅、この辺りでは一番栄えている河浜市の駅と隣接したデパート、駅ナカの地下街。
「見て下さい千代晴! 素敵な服がたくさん売ってます!」
「ああ、あれはゴルフとかを嗜む若干おじさん寄りの服屋だな。お前が着られそうな服屋だと……駅ビルの四階か」
「おれの服、千代晴が買ってくれますかっ?」
予想もしていなかったらしく、ヘルムートは顔を真っ赤にして両手の拳を握りしめている。
「だってお前、一着しか持ってねえだろ。服どころか下着まで俺のだし」
「ち、千代晴からのプレゼント……」
大きな目を更に丸くさせ、茹でダコのように赤くなるヘルムート。両手の人差し指を合わせてもじもじしている様を見ていると言いにくいが、あいにくプレゼントというよりは支給品だ。
駅ビルの四階に移動し、ヘルムートが好きそうな派手なデザインの服屋「KO★ロック」に入る。中はカラフルでごちゃごちゃしていて、服屋というよりはおもちゃ屋みたいだった。
「可愛いです!」
早速ヘルムートが一枚のTシャツを広げて俺に見せた。白いTシャツにはカートゥーンのような絵柄の「目玉と舌がびよーんと飛び出しているウサギ」のプリントがついていて……感想が何も出てこなかったが。
「もう少し無難な柄の方がいいんじゃないか? いや、本当にそれが良いならいいけど……」
「うーん。それじゃあ、こっち……。それか、こっちですか?」
ヘルムートの選ぶデザインは殆どが奇抜なプリントのもので、ゴアチックというかサブカル的というか、……とにかく一風変わっていた。本人がふわふわしているから、青空とか雲とかキラキラお星さまとか、そういうファンシーなデザインの方が似合いそうなものだが。
「あっ、でもこれは、千代晴からの大事なプレゼントです……! 千代晴に選んでもらわなきゃ、意味がありません!」
重要なことに気付いたとでも言わんばかりに、ヘルムートが手を叩いて俺に顔を向ける。
「俺が選んでいいのか? 何でもかぁ?」
頭の中でエロい衣装を思い描きながらニヤつく俺を見て、ヘルムートがニッコリ笑った。
俺の妄想はともかく……取り敢えず外出用の服が、上下合わせて五~六着くらい必要だろうか。それと下着、これは安いやつでいいだろう。部屋着は俺のを貸せばいいし。
店の真ん中で考えていると、まだヘルムートが始めのウサギのTシャツを見ているのに気付いて思わず笑ってしまった。
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