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マイ・スィート・ショコラ
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恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。
「俺達からの誕生日プレゼントだ」と、しれっと松岡さんが渡してきた雀夜とのDVD。どこの世界に好きな男とのハメ撮り動画を誕生日プレゼントにされる奴がいるだろう。
「おい、いつまでも不貞腐れてんじゃねえぞ」
「不貞腐れてないっ、恥ずかしくて消えたいだけ!」
マンションに戻ってから枕に顔を埋めたまま転がる俺の元に、雀夜がやって来て言った。
「これ、お前が作ったのか」
「え? ……あっ、それは……」
ダイニングテーブルに置きっ放しだったチョコレート。シンプルなハート型なのに歪で、初心者丸出しの手作り感溢れる代物。
「計画してたんだろ。その割には随分な見た目だな」
「別に食わなくていいし。ていうか別に雀夜のために作ったんじゃねえし。俺が自分で食うやつだもん」
……むくれる俺の前に、小さな箱が差し出された。
「え、……?」
「感謝しろ。俺がこんな真似するのは初めてだからな」
表情から察するに照れくさかったのだろう。雀夜が自分で箱を開け、中を見せた。
「う、嘘──」
そこに輝いていたのは指輪だった。婚約指輪とか結婚指輪とかの類じゃなくて、いかにも雀夜のセンスで選びましたって感じの、少しごつめの、鈍く光るシルバーリングだった。
「雀夜……」
「口開けろ、桃陽」
「え?」
馬鹿みたく開いていた俺の口に、歪なハートのチョコレートが放られる。
「あ、甘い……、ん……」
それから、深く口付けられた。
「んぅ、ん……あ……」
俺と雀夜の舌の間で溶けてゆくチョコレート。甘ったるさに頬が熱くなり、嬉しくて腰が抜けそうになる。
今まで嫌なこと、悲しいこと、いっぱい耐えてきた。
死にたくなったことも、夜通し泣いたことも、数え切れないほどたくさんあった。
「誕生日おめでとう、桃陽」
だけど今は幸せ。少なくとも今日は、世界で一番幸せだ。
二月十四日 追記
夜、彼から電話がありました。
恥ずかしくて冷たい態度を取ったと謝られました。
彼も私を好きだったと言ってくれました。
涙が止まらないです。今、凄く幸せです。
コメントくれた桃さんありがとうございます。桃さんの恋も上手く行きますように、ずっと祈っています。
「あのさぁ、どの指にもデカすぎてゆるゆるなんだけど。普通は指のサイズくらい確認して買うだろ」
「くれてやっただけ有難く思え」
「雀夜からのチョコレートは? バレンタインの」
「ケーキ食っただろ、俺が金出した」
「ショートケーキだし……」
「文句あるか」
「ありませんけどさぁ。……あ、でもバレンタイン用でくれたってことは、雀夜も俺のこと好きってこと?」
「………」
「ご、ごめん。嘘です」
「ある程度好きじゃなきゃ、同じベッドで寝かせねえよ」
「ある程度、ね」
「眠くて堪んねえ。もう寝るぞ」
「おやすみ雀夜」
大好きな人と密着して眠れることの幸せ。
今日だけじゃない。多分俺は、雀夜と出会ってからずっと幸せだったんだ。
「……桃陽」
「はい」
「チンコ触るな」
「ご、ごめん。つい……」
意地悪で素っ気なくてクールな男だけど。
大好きな雀夜が隣にいる限り、俺は世界一の幸せ者だ。
終
「俺達からの誕生日プレゼントだ」と、しれっと松岡さんが渡してきた雀夜とのDVD。どこの世界に好きな男とのハメ撮り動画を誕生日プレゼントにされる奴がいるだろう。
「おい、いつまでも不貞腐れてんじゃねえぞ」
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マンションに戻ってから枕に顔を埋めたまま転がる俺の元に、雀夜がやって来て言った。
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「雀夜……」
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「え?」
馬鹿みたく開いていた俺の口に、歪なハートのチョコレートが放られる。
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それから、深く口付けられた。
「んぅ、ん……あ……」
俺と雀夜の舌の間で溶けてゆくチョコレート。甘ったるさに頬が熱くなり、嬉しくて腰が抜けそうになる。
今まで嫌なこと、悲しいこと、いっぱい耐えてきた。
死にたくなったことも、夜通し泣いたことも、数え切れないほどたくさんあった。
「誕生日おめでとう、桃陽」
だけど今は幸せ。少なくとも今日は、世界で一番幸せだ。
二月十四日 追記
夜、彼から電話がありました。
恥ずかしくて冷たい態度を取ったと謝られました。
彼も私を好きだったと言ってくれました。
涙が止まらないです。今、凄く幸せです。
コメントくれた桃さんありがとうございます。桃さんの恋も上手く行きますように、ずっと祈っています。
「あのさぁ、どの指にもデカすぎてゆるゆるなんだけど。普通は指のサイズくらい確認して買うだろ」
「くれてやっただけ有難く思え」
「雀夜からのチョコレートは? バレンタインの」
「ケーキ食っただろ、俺が金出した」
「ショートケーキだし……」
「文句あるか」
「ありませんけどさぁ。……あ、でもバレンタイン用でくれたってことは、雀夜も俺のこと好きってこと?」
「………」
「ご、ごめん。嘘です」
「ある程度好きじゃなきゃ、同じベッドで寝かせねえよ」
「ある程度、ね」
「眠くて堪んねえ。もう寝るぞ」
「おやすみ雀夜」
大好きな人と密着して眠れることの幸せ。
今日だけじゃない。多分俺は、雀夜と出会ってからずっと幸せだったんだ。
「……桃陽」
「はい」
「チンコ触るな」
「ご、ごめん。つい……」
意地悪で素っ気なくてクールな男だけど。
大好きな雀夜が隣にいる限り、俺は世界一の幸せ者だ。
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