灰に紛れた光

はる

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プロローグ 〜四つの気質が息づく街で〜

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この世界には、生まれながらにして人の“気質”を決める二つの分類がある。
ひとつは α・β・Ω。
もうひとつは Dom・Sub。

どちらも優劣ではなく、生存のために発達したただの特性だ。

けれど、古い価値観が根強く残る街では、
その“ただの特性”が、人の生き方や扱われ方を静かに左右していた。


αは判断力と統率力に優れ、
大きな組織では自然と中心に立つことが多かった。

βは最も一般的で、社会の大半を支える存在。

そしてΩは、感受性や共鳴性が高いとされ、
ときに「守られる側」という一方的な印象を押しつけられることもあった。
実際の強さや能力とは無関係なのに、
人々の中にはいまだその古い偏見を手放せない者もいる。

そして、Ωは他の気質とは違い、男性でも妊娠することが可能である。

αに頸を噛まれれば番として交わることができるが、αは何人も番を作ることが可能なことに対し、Ωはそれができない。

見放されればそれで終わり。

ただ孤独にその人生に幕を下ろす。

だからこそ、この世界でΩで生まれた子は奴隷として扱われることが多い。

身体が弱いからー。

子供を産めるからー。

道具としてーーー。



もう一つの気質。
Domは、周囲の空気を整え、
混乱や不安を敏感に感じ取って静める気質。

Subは、相手の感情の波を読み取り、
共鳴するように寄り添う感性を持つ。

本来これは、人と人がどう響き合うか――
その“相性”を表すだけの分類だった。

けれど、力をひけらかす者が多い街では、
Domは“支配する側”、
Subは“従う側”と短絡的に決めつけられてしまっている。

本当は誰も、そんな枠に収まる必要なんてないのに。


平等が掲げられた時代でも、
人の心は簡単には変わらなかった。



そんな街の片隅に――
後に、二つの気質を持つ二人が出会う。

αでDomの男と、
ΩでSubの青年。

そして物語は、その出逢いから動き出す。

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