Nora First Edition

鷹美

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第二話

第2話 4

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


†都市中枢部 ビル内†



アイク達は、うまい具合にビルの中に入っていた。
しかし、なんていう建物かは知らないようだ。



「アイク様、この建物は?」

「知らん。」


アンナは、やっぱりと言ったような微笑を浮かべてアイクの横を走っていた。
ハゲもシオも、アイク達の後ろをついていくように走っている。


「大丈夫か、アイク?
何も知らないと、そろそろ辛いんじゃねーか?」

「うるさい、ハゲ。
知らないからそこの調査だろ?」



とりあえず、監査カメラの類いはうまくかわしてきたようで、これといった騒ぎはない。
監視の目が薄いであろう、廊下の隅でアイク達は小休憩をとった。



「シオ、体力は持ちそうか?
…って、シオ?」


シオの姿が見えなくなっていた。


アイクの中で嫌な予感が頭を過ったが、自動ドアが開く音が聞こえた。


「シオ!!」


ドアが開いていた部屋のすぐそばに、シオは立って正面を見ている。
声にもならない叫びだったのか、口をパクパクとさせて体は震えていた。

アイクは、シオの震えている原因が分かると一呼吸を置いて口を開く。




「…そうか、間についてはベルに情報をある程度遮断されていたんだっけな。
アイツには悪いが、良い機会だ。

間っていうのはな…強制労働の中にも獣の子を生産するための奴隷のことも指すんだよ。」



シオの両肩に手を置くと、アイクも目の前を見る。
目の前には、足を大きく開いた全裸の女性が大量に並べられていた。

手足は椅子に固定されて、目隠しで目は視界は塞がれて口には水を供給するためのポンプが繋がれている。



「強制労働されている男も確かに辛いだろうが、間にされた女はもっと酷い。

したくない事をヤらされたあげく、生みたくもない奴のガキを生まなければならないんだからな。」



アイクはギリッと大きく歯軋りの音をたてた。



「…それに加えて、最近では人間の女が少ないからと言って男を連れて、人間の子供を作らせているらしい。」


ハゲは、苦々しい表情を浮かべて補足するようにそう言った。

確かに思い浮かべるだけだとしても、辛いのだろう。
アンナも何か思うことがあるのようで誰よりも苦々しい表情を浮かべていた。



「…なんで獣は僕達を使って子孫を作る。」



少し落ち着きを取り戻したシオは、声を絞り出すようにそう言った。


「まだ、仮説の段階だが…獣のメスがいない若しくは、個体数が少ないからだと言われている。」



シオの質問にアイクは、そういうと立ち上がって歩きだした。
それに続くように、ハゲとアンナも歩き出す。


「さぁ、休憩は終わりにしましょう。
休んでばかりで遅くなってしまうと、スパルタなエグザス様達にマレ様がコッテリ縛られてしまいますわ。」


アンナは、暗くなった空気を明るくする為かクスクスと少しだけ笑ってそう言った。



苗床の間を出たアイク達は、他の情報を求めて間の人たちを置いて違う部屋に移動を始める。
脱出ルートが無い以上、間を救出しても意味がないからだ。



「しかし…ここは、なんだ?」



扉を開くと緑色の半透明の大きな石が大量に並んでいる大きな部屋にたどり着いた。

遠目でみると石の中には、琥珀の中に入っている虫や葉のように何かが入っているようだった。


アイクは、それを確かめる為に更に石に近づく。



「アイク様、上!!」



アイクは、アンナの叫び声が響くと剣形態だったキーウエポンを上に構えてアンナが叫んだ攻撃を防ぐ。


「掛け声のお陰とは言え、良く我が攻撃を防げたものダ。」



声の主は、そういうとアイクから距離をとった。
金色と青色の左右の色が違う瞳をした銀毛の獸がハルバートを携えて俺を睨んでいる。


明らかに、今まで戦ってきた獣達とは雰囲気が違う。



「我が名は、“フェムト”!!
銀狼のフェムト!!!

この神聖な場所を汚す害虫を駆除するのが我が使命!!

覚悟しロ!!」



“フェムト”と名乗った獣は、ハルバートを振り回した後に再び、アイクに向かっていった。
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