オメガバースは突然に

マカロン

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第ニ章

『言うのが遅い!』『お前がそれを言うな』

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「それじゃあ、まず基本的なアナルセックスについての講義をしていくから。このタブレットの端末を観て欲しい」


五條はそう言って、真面目な顔でどこで拾ってきたのか、えぐい内容の動画を見せてくる。動画でなくて口頭、もしくは文字だけでもよかったのではないかと思ったが、五條が俺の為を思ってわざわざ準備してきてくれたことへの好意は有り難いことだから黙って画面を見ながら五條の説明に耳を傾ける

「初めに、男同士でのセックスにおいて、もっとも重要なこととして、性交の前に受け入れてくれる側がアナル洗浄をする時間をちゃんと設けることがエチケットだ。
アナル洗浄は、受け入れてもらう側がしなければならない行為だが、挿れる側の人間もちゃんと知っておくことは相手への配慮として必要だ。
男同士の場合、入れる穴は、女性とは違う。準備なくしてスムーズな挿入はあり得ない。男性の場合は排泄用の穴という事を忘れずにきちんと浣腸の用意を忘れるな。それを使って全て出し切ったあとシャワーでアナルを洗って、カプセル型のローションを穴に事前に入れておくことでアナル内部を傷つけずスムーズな挿入が見込める。ここまでの下準備に関しての主なやり方がこの動画だ。」

画面の中の男性には顔にモザイクがかかっている。
モザイクと言ってもあとから五條が編集で顔にスタンプを施したのだろう。男性の顔が里芋ちゃんになっている。ここで里芋ちゃんを使うのはどうかと思うが今更仕方が無い。

「因みにモザイクがかかっているが、これは柚木ではないぞ、サイトから拾ってきた赤の他人だ」

「いや、それは分かる」

恋人の身体をサンプルにそんな動画を五條が作成するはずが無いのは百も承知だ。
しかし、、、

「他人の顔が映っていると、三ツ矢が顔にばかり意識がいって、一連の下準備の大事な部分に集中出来ないと思ってモザイクをかけておいた」

そのモザイクが里芋ちゃんの顔であることによって余計集中力が削がれるのだが、、、。それを今更言って仕方が無い。
アナル洗浄の一連の工程動画を2度程繰り返され
一旦動画が停止される。

「いいか三ツ矢、洗浄が済んでアナルにローションを入れておいたとしても、いきなり指を突っ込むのはダメだぞ。まずは相手の気持ちいい所を探って触ってあげながら、緊張を解すんだ。身体の性感を高めることでアナルへの挿入の痛みが軽減されるからそこに時間を惜しみなよ。丁寧な愛撫で相手の性感を高めたところでまずはアナルへ指を1本挿入する」

そう言ってまた続きの動画が再生される

これは、、、キツイ
赤の他人の肛門のドアップ。
体毛処理の施された見やすい肛門ではあるが、それにしても、キツイ。
しかし観ない訳にはいかない。
何故なら五條は至って真剣だからだ。
ふざけて面白可笑しく俺に意地悪をしているのなら、もう観たくない、と中断させることも出来るのだが、五條はいつだってどんなこと柄に対しても常に真剣だ。きっとその真剣さが、飯塚柚木にも伝わって、高校時代のあんな無茶で強引でストーカーまがいのやり口でことを進めても婚約し同棲することに対して飯塚柚木に拒否されることなく了承を得たのだと思っている。頭が良いくせに無鉄砲でどこかイカれた奴だが五條の真面目で一本筋の性格は嫌いじゃない。

従って俺はイヤでもこの動画を最後まで観るしか道はない。

「アナルに指を入れる時は、まずこの動画のように、アナルの皺を伸ばすように揉む。それから優しく指先でトントンと叩き、揺らすようにグリグリと指を当てて、それからゆっくり優しく指を入れる。入れることに成功したら、そのまま奥まで指を挿入させ第二関節を相手のお腹側に曲げて」

そう言って五條が自分の指でレクチャーする。

俺も自分の指を見て第二関節を確認しながら五條と同じように指を曲げる。

「そうだ、そうやってアナルの中で指を曲げたら、他とは感触の違うツルツルした部位がある、それが前立腺だ」

「なるほど」

これは勉強になる。

「いいか三ツ矢、前立腺を見つけたからと言って、いきなりガシガシと触るなよ。アナルは内臓だ、軽く押し当て、つつきながら解かすんだ。その時、相手の性器を触ってあげると痛みは和らぐからその辺は臨機応変にやってくれ、アナルが緩んで来たらこんな感じで指を増やしていって、、、」

その後も動画は続き

性器挿入のタイミング、セックスの主な体位、メスイキのさせ方などを経て、長い講義が終わった。

アナルに性器を入れられてる時は交感神経が優位になるから、相手の身体中どこを撫でても気持ちよくなっているから、それを十分堪能してくれ。
最後にヒソヒソと俺に耳打ちしてきた時の五條だけは、厭らしさを滲ませていたから

俺は苦笑いで返した。

ここまでの五條の長いセックス講義を聞き終えて

なにか質問は?

と聞かれ

ここに来て
俺は口角を上げた。

別に騙すつもりはなかったし。
隠していた訳でもないが。
伝えるタイミングが分からなくて


質問は無いが
言い忘れていた

「恋人の橘秋良は、オメガで、アルファである俺の運命の番だ」


「・・・・・」

俺の放った暴露に五條はみるみる顔色を変え

驚きと怒りの混じったような複雑な表情を浮かべ

「三ツ矢!それをはやく言えよ!言うのが遅い!」

興奮気味に声を荒らげて言った五條の姿に

カウンターの中にいた飯塚柚木が思わぬ反応を見せ

凄い剣幕でこちらへ近づいて来たかと思うと

徐に五條の耳を引っ張って

「お前がそれを言うな!」

と、何故か激怒している。
飯塚柚木が何故ご立腹なのか俺には分からないが、
どうやら五條の発言した『言うのが遅い』という言葉が飯塚柚木の地雷だったらしく金輪際その言葉をお前が使う資格はない。と柚木に言い切られた五條は柚木に謝罪の言葉を口にすると共に柚木の言いつけは死んでも守る。と五條が宣言したことで終結した。


目の前で完全な主従関係を見た俺は、そんな風に叱られてもどこか嬉しそうにしている五條を見て、無性に恋人である橘秋良に会いたくなった。

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