オメガバースは突然に

マカロン

文字の大きさ
3 / 57

五條禮鵺のターン② 「彼は俺の運命の番だ」

しおりを挟む
運命の番を見つけた俺がまずしたことは、同じ属性であるA組の奴らへの報告だ。
A組、つまりαの集まりであるクラスメイトは俺を含め4人だけ、そんな俺らのことをβの奴らが陰で
「αの4人組 (ALPHA FOUR)」、略してA4(エイ・フォー)と呼んでいるらしい。
そんなA4エイ フォーの奴らのことを特に信頼している訳でも深い絆があるわけではなかったが、αは言わずと知れた優秀な人間の集まりであり、無駄な馴れ合いはないが暗黙化でお互いをリスペクトしている連中だ。だから真っ先に報告した。
最初俺を除いた三人は俺の話を聞いて驚いていたが、すぐに状況を理解し俺から何か協力を仰ぐより先に今後どうすればその番と上手く付き合っていけるかの折衷案の話し合いがその場で始まった。

情報収集に3日かけた。
A4エイ フォーで手分けして集めたつがいの情報をホワイトボードに書き出す。

①氏名 飯塚 柚木(イイヅカ ユキ)
②年齢 17歳
③血液型 O型
④生年月日 2007年10月10日
⑤身長169㎝
⑥体重57キロ
⑦性別 男
⑧性格 内向的
⑨知能 平均値
⑩容姿 平均値
⑪家族構成 父、母、一人っ子
⑫趣味 読書(主に漫画)
⑬好きな食べ物 カツ丼、ケーキ(甘いもの全般)
⑭嫌いな食べ物 ピーマン
⑮部活 帰宅部
⑯通学 電車と徒歩
⑰二次性 β

3日もかけて集めた情報量としてはやや少ないが、内向的な性格が故に友人との交遊関係は極めて低く、更に彼に気付かれないように水面下での聞き取り調査の為これが限界だった。

この情報の中で気になる点は⑩番目の『容姿が平均値』というのが納得いかず

『彼は可愛い!!生まれ持った素地の良さと何とも言えない耽美さ。容姿端麗、品行方正、彼を称える賛美の言葉は汲んでも尽きない井戸のように枯渇することなく茫洋に語ることが出来る』

とαの三人に対して熱弁を振るったが、どこか優しい眼差しのその奥にまるで新種の生物にでも遭遇したかの如く俺を見つめ

『運命の番と出会うと、学年トップの五條禮鵺といえども知性を低下させ熱情を上昇させるのか』

と興味深げに俺の動向言動をメモり出す始末。

しかし、これといった反論は出来ない。
幼少期より恋愛というものに全く興味を持てなかった自分が二次性の出現により初めて誰かを好きになるという感覚、感情が芽生えてしまったのだから、自分でも自分の言動、行動の予測がつかない。

黙る俺にひとりのαが発言した。

『この情報の中で最も気になる点は、どう考えても⑰番だろ』

その発言に他のαも賛同し大きく頷いている。

⑰番?

俺は再度ホワイトボードに目を向ける。

二次性 β

『..あり得ない』

運命の番は
αにとってΩであることが当然の理のはずだ!!

まさか、もしかして、Ωということを知られるのがイヤでβだと偽っているのか?
いやいや、それはないか。
二次性が確立し、国民は二次性の安全や悪用回避の為、マイナンバーカードへの氏名、顔写真、二次性の印字が義務づけられている。
それによって正しくクラスが分かれているのだから、マイナンバーカードが偽造でない限り飯塚柚木いいづかゆきがβであることは間違いない。

『まったく意味が分からない』

飯塚柚木、彼は間違いなくΩのはず

『そして俺の運命の番だ!それは絶対間違いない』

俺がそうキッパリ断言するとひとりのαが言った。

『フェロモンの匂いが彼からするのか?』と。

俺はその言葉にハッとする。

...匂わない。
匂っていない。
匂いはない。

どういうことなんだ?

『まったく意味が分からない』

頭脳明晰と云われ続けてきたこの俺が、この奇妙な現状をまったく理解することが出来ない。

彼からΩ特有のαを誘うフェロモンを感じた訳ではない。
それなのに俺は彼に欲情し、直感で彼が俺の運命の番だと確信した。

しかしその根拠は何もない...。お手上げだ...。

もうこうなったら仕方がない。

『直接、飯塚柚木に二次性についての真意を確かめるしかない』

3日かけて情報収集をA4エイフォーの協力のもとやってきたがこれ以上は無理だ。
そう腹を括っている矢先

ひとりのαが

『俺達はまだ未成年であって、未成年者は、保護者経由で二次性についての告知を受けた訳だから、一番詳しい事情を理解しているのは保護者である親なんだから、ここはいっそ本人すっ飛ばして親に聞いてみたら?』

と言った。

名案だと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

処理中です...