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二夜(5)
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尿をかけられびしょ濡れの俺と全裸で縛られたダリスという通報待ったなしの姿だったが、意外にもトラブルひとつなく家にたどり着いた。
「っくしゅん!」
背負っていたリュックサックを下ろしていると、小動物かと思うほどかわいらしいくしゃみが前方から聞こえた。玄関はこの前掃除したばかりだが、と疑問を持ちかけたところで、夜の地下通路をほぼ裸で歩かせたことに思い当たった。
「よく頑張ったな。その辺にある俺の服なら適当に着てくれて構わない。」
「………………。」
「あぁ、風呂はそこのドアだ。冷えたろう?好きに使ってくれ」
「紐解いてよ」
「それは無理だな」
肩を落としたダリスがドアの奥に消える。
少々やりすぎたかもしれないが、今回に至っては明らかにダリスが反省すべきだ。今晩から明日まできっちり悔い改めてもらわなくては、甘やかしてはいけない。そう思いながらその背中を見送った。
「っっなにこれ?!?!?!???」
顔を真っ青にしたダリスが風呂場から飛び出る。
「ねぇなにマジあれなにどうなってるの???おれの目がいかれた?なんなのあんたの家、」
「?、蜘蛛でも出たか?」
動揺するダリスの指す風呂場に入る。全く平凡でいつもどおりの自宅の風呂場が視界に映った。
「何だ?どうかしたのか」
「どうにもなにも天井!!!!アインあんた目ついてる?おれがおかしいの?!!」
風呂場の天井を見上げる。
「うむ。平常通り、異常なし」
「うそねぇあんた天井のあれじゃあ何?!」
「ディルドだな」
「見えてんじゃん!!!!」
「こらうるさいぞ。明日夫婦喧嘩は程々にしろと隣から苦情が来てしまう」
「~~~~ッッ」
大きく息を吸って吐いたダリスが、今度は声を抑えて話しだす。
「……なんであんたは風呂場の天井に…その、ディルドを貼ってるわけ」
「見ればわかるが多いだろう?置き場に困ってな。言っておくが、全部お前のためのものだ」
「気持ち悪い、天井から降ってきたディルドで頭打って死ね」
「全部俺のものより小さいから大丈夫だ。きっとダリスのかわいいアナルにも入るだろう」
「話聞け。あと見栄張んな」
「あまり派手な言葉を使うんじゃない。キスするぞ」
「……………」
冗談のつもりの警告が本気で効いてしまったことと、自分のキスが彼にとっての嫌なことに該当することに若干の虚しさを感じるが、気にしないことにする。
「とりあえずおれシャワー浴びるから。」
出て行って、と暗に含んだ口調に追い出された俺は、覗く用の穴でも開けておくべきだったと若干の後悔を胸にしながら、リュックサックに詰めていた玩具を整理しだした。
暇を持て余しはじめたあたりでようやく風呂場の扉が開く。俺の日用バスタオルはダリスにとっては十二分に大きいらしく、体に巻くことを諦めて頭から被るようにしていた。
「花嫁みたいだな」
「は?」
「ほらその、……あれだ、あれ、ウェディングベール?みたいな」
「バカじゃないの。丸裸でベールだけ被って縛られてるお嫁さんなんているわけないでしょ」
濡れた紐が気持ち悪いらしく緊縛を解いて欲しいことを示唆される。適当にあしらって、続いて風呂場に入った。
むわっとした湿度と彼の残り香の広がる風呂場。シャンプーの位置もボディたわしの位置も何もかもが秩序を失っていたことや、俺の家であるのを良いことに風呂桶ギリギリまでたっぷり湯船が張られていたことに気がついて、彼らしいなと微笑ましく感じた。
風呂場に入ってまず、ボディソープを使って丁寧に風呂桶を洗い、慎重に風呂水を汲んで、日頃タオルを置いているラックに安置した。今日は湯を張っていないのだから、この湯はダリス以外誰も入っていない。あえて言うならばダリス汁。これを保存しないわけがない。
ダリス汁保存の義務を終え、軽く体を洗い、湯船に足をつけんと風呂桶を跨ぐ。一本の毛が視界に映った。薄茶と金を足して割ったような色の、短い縮れ毛。無論、地毛が黒髪である以上俺のものではない。サラサラで、肩にこそつかないが短髪とは言い難い長さをした愛しのダリスの顔が思い起こされるが、あくまでその髪はゆるやかな曲線を描く程度の癖しかなく、この毛までに縮れてはいない。とするとこれはどこの誰の何の毛なのか。
全てを理解した俺は、そっと浴槽に張り付いたその毛を指でつまみ取った。鼻の近くですん、と臭いを嗅ぐ。ほのかに彼の香りがした。
もう一度浴槽に目をやり、目を皿にして隅々まで浴槽を確認する。水面に浮かんだり浴槽に張り付いたりしているダリスの陰毛を寄せ集めて、掌に乗せて眺める。これが先ほどまで彼の体についていた陰毛なのかと思うと興奮が止まらない。今すぐこれで抜きたいが、これから彼とセックスするのだから我慢しなくてはいけないのが辛い。浴槽蓋の分かりやすい位置に集めた陰毛を置いて、俺は今度こそ浴槽に入った。
以前ダリスと入浴したときにはない、奇妙な緊張を感じながら湯船に浸かる。ざば、と派手な音。彼と俺の大きさの差だけダリス汁が浴槽から流れ出た。湯船から香る彼の薄い匂い。鼻先まで湯に浸かって、口を開いた。ぬるいダリス汁がこぷこぷと口内に入る。ダリスの全身はこんな味なのか、と感慨に浸りながらそれを飲み込んで、再び口を開いてを繰り返す。一生こうしていたいが、これから始まる彼とのセックスの最中尿意に気が紛れるのも嫌だなと思い至り、湯船から上がった。
「っくしゅん!」
背負っていたリュックサックを下ろしていると、小動物かと思うほどかわいらしいくしゃみが前方から聞こえた。玄関はこの前掃除したばかりだが、と疑問を持ちかけたところで、夜の地下通路をほぼ裸で歩かせたことに思い当たった。
「よく頑張ったな。その辺にある俺の服なら適当に着てくれて構わない。」
「………………。」
「あぁ、風呂はそこのドアだ。冷えたろう?好きに使ってくれ」
「紐解いてよ」
「それは無理だな」
肩を落としたダリスがドアの奥に消える。
少々やりすぎたかもしれないが、今回に至っては明らかにダリスが反省すべきだ。今晩から明日まできっちり悔い改めてもらわなくては、甘やかしてはいけない。そう思いながらその背中を見送った。
「っっなにこれ?!?!?!???」
顔を真っ青にしたダリスが風呂場から飛び出る。
「ねぇなにマジあれなにどうなってるの???おれの目がいかれた?なんなのあんたの家、」
「?、蜘蛛でも出たか?」
動揺するダリスの指す風呂場に入る。全く平凡でいつもどおりの自宅の風呂場が視界に映った。
「何だ?どうかしたのか」
「どうにもなにも天井!!!!アインあんた目ついてる?おれがおかしいの?!!」
風呂場の天井を見上げる。
「うむ。平常通り、異常なし」
「うそねぇあんた天井のあれじゃあ何?!」
「ディルドだな」
「見えてんじゃん!!!!」
「こらうるさいぞ。明日夫婦喧嘩は程々にしろと隣から苦情が来てしまう」
「~~~~ッッ」
大きく息を吸って吐いたダリスが、今度は声を抑えて話しだす。
「……なんであんたは風呂場の天井に…その、ディルドを貼ってるわけ」
「見ればわかるが多いだろう?置き場に困ってな。言っておくが、全部お前のためのものだ」
「気持ち悪い、天井から降ってきたディルドで頭打って死ね」
「全部俺のものより小さいから大丈夫だ。きっとダリスのかわいいアナルにも入るだろう」
「話聞け。あと見栄張んな」
「あまり派手な言葉を使うんじゃない。キスするぞ」
「……………」
冗談のつもりの警告が本気で効いてしまったことと、自分のキスが彼にとっての嫌なことに該当することに若干の虚しさを感じるが、気にしないことにする。
「とりあえずおれシャワー浴びるから。」
出て行って、と暗に含んだ口調に追い出された俺は、覗く用の穴でも開けておくべきだったと若干の後悔を胸にしながら、リュックサックに詰めていた玩具を整理しだした。
暇を持て余しはじめたあたりでようやく風呂場の扉が開く。俺の日用バスタオルはダリスにとっては十二分に大きいらしく、体に巻くことを諦めて頭から被るようにしていた。
「花嫁みたいだな」
「は?」
「ほらその、……あれだ、あれ、ウェディングベール?みたいな」
「バカじゃないの。丸裸でベールだけ被って縛られてるお嫁さんなんているわけないでしょ」
濡れた紐が気持ち悪いらしく緊縛を解いて欲しいことを示唆される。適当にあしらって、続いて風呂場に入った。
むわっとした湿度と彼の残り香の広がる風呂場。シャンプーの位置もボディたわしの位置も何もかもが秩序を失っていたことや、俺の家であるのを良いことに風呂桶ギリギリまでたっぷり湯船が張られていたことに気がついて、彼らしいなと微笑ましく感じた。
風呂場に入ってまず、ボディソープを使って丁寧に風呂桶を洗い、慎重に風呂水を汲んで、日頃タオルを置いているラックに安置した。今日は湯を張っていないのだから、この湯はダリス以外誰も入っていない。あえて言うならばダリス汁。これを保存しないわけがない。
ダリス汁保存の義務を終え、軽く体を洗い、湯船に足をつけんと風呂桶を跨ぐ。一本の毛が視界に映った。薄茶と金を足して割ったような色の、短い縮れ毛。無論、地毛が黒髪である以上俺のものではない。サラサラで、肩にこそつかないが短髪とは言い難い長さをした愛しのダリスの顔が思い起こされるが、あくまでその髪はゆるやかな曲線を描く程度の癖しかなく、この毛までに縮れてはいない。とするとこれはどこの誰の何の毛なのか。
全てを理解した俺は、そっと浴槽に張り付いたその毛を指でつまみ取った。鼻の近くですん、と臭いを嗅ぐ。ほのかに彼の香りがした。
もう一度浴槽に目をやり、目を皿にして隅々まで浴槽を確認する。水面に浮かんだり浴槽に張り付いたりしているダリスの陰毛を寄せ集めて、掌に乗せて眺める。これが先ほどまで彼の体についていた陰毛なのかと思うと興奮が止まらない。今すぐこれで抜きたいが、これから彼とセックスするのだから我慢しなくてはいけないのが辛い。浴槽蓋の分かりやすい位置に集めた陰毛を置いて、俺は今度こそ浴槽に入った。
以前ダリスと入浴したときにはない、奇妙な緊張を感じながら湯船に浸かる。ざば、と派手な音。彼と俺の大きさの差だけダリス汁が浴槽から流れ出た。湯船から香る彼の薄い匂い。鼻先まで湯に浸かって、口を開いた。ぬるいダリス汁がこぷこぷと口内に入る。ダリスの全身はこんな味なのか、と感慨に浸りながらそれを飲み込んで、再び口を開いてを繰り返す。一生こうしていたいが、これから始まる彼とのセックスの最中尿意に気が紛れるのも嫌だなと思い至り、湯船から上がった。
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