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モブ令嬢と夢と茶番
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夢を見た。幼いころ、私とレイナが遊ぶ夢。レイナが死んでから、私は何度も、何度も何度も何度も、幼いころに戻りたいと、そう願っていた。この世界では、それが可能である。なぜなら、魔法があるから。時間魔法を使えば、昔にも未来にも行ける。それでも、私はそんなことしなかった。レイナが死んだことを知らされてからの初めての夜。私の夢に、今日と同じようにレイナが現れた。起きたことは仕方がない。時間は巻き戻さず、ヴィルの人生はヴィルの幸せのために使ってほしい、と。そう言われたのだ。
しょせんは私の夢。馬鹿馬鹿しいと思った。でも、その言葉はあまりにもレイナが言いそうな言葉で、私は、自身が勝手に見た夢にもかかわらず、夢でレイナが言った通り、時間を巻き戻すことはしなかった。
グルグルと夢について考えていると、不意に我に返り、ここはどこだろうと思考を移す。
私は、気を失った。一体どこで?自分の部屋ではない。確か、信頼している人の前で、涙を流しながら……
そこまで考えて、私は誰かのぬくもりが、自分に触れていることに気が付く。一体、このぬくもりは誰なのだろうか?
誰なのかはわからないのに、ずっとそばにいてほしい。このぬくもりが、何よりも愛おしいと、そう思っている自分に、私は驚きを隠せない。
微睡の中にいながら、私は誰に言うともなくつぶやく。
「私は……幸せになってもいいのかな……?」
(えぇ、勿論。むしろ、ヴィルには幸せになってほしい)
「もちろんだよ、ヴィル」
一つは、私の夢の中に出てきたレイナ。はて、では、もう一つの声は……
「おはよう、ヴィル」
「……」
私の顔を覗き込むのは、シュエル。そうだ、私は彼の前で気を失い、彼のぬくもりを愛おしいと、そう思ったのだ。そして、私の独り言に、返事をしてくれたのも、状況から察するに、彼であろう。
「まだ、眠いかい?」
「……ううん」
怖いぐらい穏やかなシュエルに、私は少し戸惑いながら、正直に答える。
「そうかい、それはよかった……たまには休憩も必要だよ?」
ここで、私の意識はようやく覚醒する。私は、こんなところでのんびりしている暇はない。なんとしてでも、一秒でも早く、ソフィアたちに復讐しなければならないのだ。
「……私には、休憩なんていらない」
シュエルには、自分のそばにいてほしいと言ったのに。私はシュエルを突き放す発言をしてしまう。彼は、私のことを思って言ってくれたのに。
やっぱり、私は自分自身が嫌いだ。気が強くて、傲慢なのに、すぐに気弱になって、誰かの助けがないと、生きていけない。私は、ソフィアなんかよりも最低な人間だ。
「ごめん、シュエル」
私はそうぽつりと謝り、人間界へと戻りたいと強く願い、人間界へと戻る。
今は、とにかく一人になりたかったのだ。
―――――
「テイラン先輩……?」
行く当てもなく、人気のないところをぶらぶらと歩いていると、聞き覚えのある声が、私を引き取める。
「ルナソル君……」
敵である彼を前にして、普段の私ならば真っ先に逃げたであろう。しかし、今はそんな余裕など、私にはなかった。
「どうしたんですか、テイラン先輩。……って、そういえば、先輩、テイラン家を追い出されたんでしたっけ?」
悪意なんて微塵も感じさせないテイランに、私はイラつきながら、本当のことなので何も返せずにいると……
「ルナソル君!!」
突然の大きな声に驚き、私が声のした方である背後を向くと、ソフィアがこちらへ、走りながら向かっているのが見えた。
「ソフィアさん!?」
ルナソルはそんなソフィアに、困惑半分、嬉しさ半分な声を上げる。
「――きゃっ!?」
だが、私とすれ違う瞬間、ソフィアは派手に転び、着ていた服が、地面の土で汚れてしまう。
「大丈夫ですか!?ソフィアさん!!」
そう言いながら、ルナソルはソフィアに駆け寄り、手を貸し、起き上がらせる。
「貴女ほどの人が、何もないところであんな風に転ぶだなんて……」
「違うの、ルナソル君。実は……信じられないことかもしれないけれど、私、ヴィル様にすれ違いざまに押されて、転んでしまったの……」
「なんですって!?」
また始まったよ、この茶番。
私は内心げんなりしながら、逃げたりしたら余計立場が危うくなると思い、このふざけた茶番に付き合うことにしたのだった。
しょせんは私の夢。馬鹿馬鹿しいと思った。でも、その言葉はあまりにもレイナが言いそうな言葉で、私は、自身が勝手に見た夢にもかかわらず、夢でレイナが言った通り、時間を巻き戻すことはしなかった。
グルグルと夢について考えていると、不意に我に返り、ここはどこだろうと思考を移す。
私は、気を失った。一体どこで?自分の部屋ではない。確か、信頼している人の前で、涙を流しながら……
そこまで考えて、私は誰かのぬくもりが、自分に触れていることに気が付く。一体、このぬくもりは誰なのだろうか?
誰なのかはわからないのに、ずっとそばにいてほしい。このぬくもりが、何よりも愛おしいと、そう思っている自分に、私は驚きを隠せない。
微睡の中にいながら、私は誰に言うともなくつぶやく。
「私は……幸せになってもいいのかな……?」
(えぇ、勿論。むしろ、ヴィルには幸せになってほしい)
「もちろんだよ、ヴィル」
一つは、私の夢の中に出てきたレイナ。はて、では、もう一つの声は……
「おはよう、ヴィル」
「……」
私の顔を覗き込むのは、シュエル。そうだ、私は彼の前で気を失い、彼のぬくもりを愛おしいと、そう思ったのだ。そして、私の独り言に、返事をしてくれたのも、状況から察するに、彼であろう。
「まだ、眠いかい?」
「……ううん」
怖いぐらい穏やかなシュエルに、私は少し戸惑いながら、正直に答える。
「そうかい、それはよかった……たまには休憩も必要だよ?」
ここで、私の意識はようやく覚醒する。私は、こんなところでのんびりしている暇はない。なんとしてでも、一秒でも早く、ソフィアたちに復讐しなければならないのだ。
「……私には、休憩なんていらない」
シュエルには、自分のそばにいてほしいと言ったのに。私はシュエルを突き放す発言をしてしまう。彼は、私のことを思って言ってくれたのに。
やっぱり、私は自分自身が嫌いだ。気が強くて、傲慢なのに、すぐに気弱になって、誰かの助けがないと、生きていけない。私は、ソフィアなんかよりも最低な人間だ。
「ごめん、シュエル」
私はそうぽつりと謝り、人間界へと戻りたいと強く願い、人間界へと戻る。
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―――――
「テイラン先輩……?」
行く当てもなく、人気のないところをぶらぶらと歩いていると、聞き覚えのある声が、私を引き取める。
「ルナソル君……」
敵である彼を前にして、普段の私ならば真っ先に逃げたであろう。しかし、今はそんな余裕など、私にはなかった。
「どうしたんですか、テイラン先輩。……って、そういえば、先輩、テイラン家を追い出されたんでしたっけ?」
悪意なんて微塵も感じさせないテイランに、私はイラつきながら、本当のことなので何も返せずにいると……
「ルナソル君!!」
突然の大きな声に驚き、私が声のした方である背後を向くと、ソフィアがこちらへ、走りながら向かっているのが見えた。
「ソフィアさん!?」
ルナソルはそんなソフィアに、困惑半分、嬉しさ半分な声を上げる。
「――きゃっ!?」
だが、私とすれ違う瞬間、ソフィアは派手に転び、着ていた服が、地面の土で汚れてしまう。
「大丈夫ですか!?ソフィアさん!!」
そう言いながら、ルナソルはソフィアに駆け寄り、手を貸し、起き上がらせる。
「貴女ほどの人が、何もないところであんな風に転ぶだなんて……」
「違うの、ルナソル君。実は……信じられないことかもしれないけれど、私、ヴィル様にすれ違いざまに押されて、転んでしまったの……」
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