2 / 21
1 俺の予想外の異世界転移
しおりを挟む
※暴力的で流血沙汰な表現あり。苦手な方はご注意ください。次話からはもう少し軽い話になる予定です。
ある日唐突に、それこそ何の前触れもテンプレな事故死もなく。
俺はどうやら異世界転移したらしい。
俺の名前は草壁睦月。十九歳の大学生だ。
黒髪に黒い瞳のいたって普通の日本人だ。
身長は一七〇cmいかなくてちょっとヒョロガリだけど。それがちょっとコンプレックスかも。
まあ物心ついた頃に事故で両親を亡くして施設で育ったこと以外はどこにでもいるその他大勢なわけだ。
そんな俺は今、知らない見たこともない森の中で横たわっていて、そのままの体勢でしばらく頭をフル回転させていた。
───確か昨日は夜のコンビニのバイトが終わって、アパートに着いてスマホの時計で日付が変わってたのを確認した。
寝惚けまなこでシャワーを浴びておざなりに髪を乾かして寝間着代わりのスウェットのパーカーとお揃いのズボンを履いて、明日は午前中の講義はないから朝寝坊でもするかと、ベッドで横になって───。
「・・・・・・どういうこと?」
今現在、横になっているのは見たことのない草の生い茂った地面が続く鬱蒼とした木々の森。
「夢? にしてはリアルな感触・・・・・・?」
ここでようやく身体を起こす。
日の差さない木陰はやたらと肌寒かった。
「寒いとか、青臭い匂いとか・・・・・・まさか、ね?」
そんな今流行の異世界転移とか? なんて乾いた笑いが出た直後、少し離れた藪の向こうでガサガサと音が聞こえて慌てて立つと、背後にある何かにぶつかった。
「え?」
後ろに木とかあったっけ? なんて振り向いた直後、その何かがボソボソと呟き、俺はくらりと倒れそうになった。
そして倒れそうな俺の身体をニヤリと見て笑う極悪人のような見た目のゴツい男の顔を最後に意識はなくなった。
次に目覚めたときには薄くて硬いマットレスのようなところに全身裸で横たわっていた。
ぼんやりと光るランプの明かり以外はなくて暗いそこは、小さなテーブルとスツールみたいな簡素な椅子があるだけの六畳間くらいの部屋みたいだ。
窓は木の板が打ち付けられていて外が見えないから、今が朝なのか夜なのか見当もつかない。
俺はギョッとして起き上がり、周りをキョロキョロとみるとテーブル上にワンピースみたいな被って着るタイプの上着と七分丈のズボンがあり、慌ててそれを着た。
その直後、俺のいた部屋の出入り口の扉が開いて、誰かが入ってきた。
思わず壁際に下がってしまう。
ジッと様子を窺っていると、俺に気付いたその男はゆっくりとこっちに向かってきた。
倒れる前に見た男とは違う、左目に黒い眼帯、その左頬にも鋭いかぎ爪痕があるデカくてゴツい大男だ。
よく見ればその男の後ろにあの男もいた。
「・・・・・・ん? ああ目が覚めたのか。おお、ご丁寧に服も身に着けて。まさか手が出せねえとは思わなかったが、まあいい」
そう言って俺に手を伸ばすと前髪をガッと掴んで動けないようにされた。
「ひっ・・・・・・な、何をっ───」
「そうやって煩く騒げねえように、こうするんだよ!」
男はそう言ってギラリとランプの明かりを反射したナイフを俺の目の前にチラつかせると、俺の首を横一文字に斬った。
「っ!? ─────っ!? っ!」
一瞬で激しい痛みが喉を襲い、口から血が溢れた。痛くて怖くてどうしようもなく涙が溢れて死ぬと思ったとき、なにかを傷にかけられた。
その数十秒後には痛みは消えた。
でも喉に残る違和感に声を出そうとして───出なかった。
「・・・・・・あ、名前を聞いてからやるんだったな。チッ、コレじゃ聞けねえや。隷属魔法が弱くなるが・・・・・・仕方ねえ」
どうやら喉を潰されたようだ。コレじゃ叫んで助けを呼ぶこともできない。
というか、魔法って言った?
「お前、何でか貞操の護りの魔法が常時発動しててよ、性奴隷にして啼かせようと思ってたのに使えねえ。そんなヤツに声なんかいらねえだろ」
「・・・・・・っ」
性奴隷!?
ラノベなんかでよくある話の設定!? ていうか、じゃあ俺も魔法が使える?
「魔力は最低限で魔法なんざこれっぽっちも発動しそうもねえ、性奴隷もムリなんて役立たずには暗殺訓練でも受けてもらって捨て駒だな」
「・・・・・・」
魔法が使えない?
その上、捨て駒で暗殺訓練って・・・・・・。
「ああ一つ。お前はすでにここ、闇ギルド【ダウン】に飼われた奴隷だから。うなじに隷属魔法刻んであるから逃げようとか反抗とか言うことを聞かなかったりすると───」
・・・・・・すると、何?
「気絶するほどの激痛が全身を襲うから気をつけな」
───嘘だろう?
じゃあなと軽く言って部屋を去った男の代わりに最初の男が近付いてきた。思わず身体が震える。
「さっきのはギルドマスターだ。ギルマスの命令でお前は今日から向こうの小屋で寝起きして訓練だ。可哀想によぉ。性奴隷の方が長生きできたろうに。そうそう、お前は十二番目でトェルって呼び名だ」
呆然と立ちすくんでいると最初の男に腕を掴まれて引き摺られていく。
そうして初めて、太陽が昇ったばかりで今が朝だと気付いた。
その小屋には俺のような奴隷にされた人が十人ほどいて、皆昏い目をしていた。
「おら、新入りだ。へっ、仲良くしろよ!」
そう言って俺を放り投げて去って行く男に再び呆然とする。
小屋の奴隷達はほとんど反応がなく、仕方なく自分で辺りを見廻ってトイレや何かの場所を確認して。
そのあとも無感情な奴隷達にビクビクしながら見よう見まねで暗殺訓練を受け、時々失敗して隷属魔法が発動して気絶する───のを繰り返すと、やがて俺も心を壊していった。
もう元の世界には戻れない。なら生きてても仕方ない。死んだら帰れるだろうか、せめて魂だけでも・・・・・・。
でも隷属魔法で死ねない。
───俺もこの奴隷達の中の一人になるのにさほど時間はかからなかったのだ。
◇◇◇
───そんな日々が一年ほど過ぎた頃、初任務だと言ってとある国の王太子暗殺を命ぜられる。
そこで運命の出逢いを果たすことになる。
※【重たい愛】からの続きになります。このあとはそちらを先に読むと分かりやすいと思います。
ある日唐突に、それこそ何の前触れもテンプレな事故死もなく。
俺はどうやら異世界転移したらしい。
俺の名前は草壁睦月。十九歳の大学生だ。
黒髪に黒い瞳のいたって普通の日本人だ。
身長は一七〇cmいかなくてちょっとヒョロガリだけど。それがちょっとコンプレックスかも。
まあ物心ついた頃に事故で両親を亡くして施設で育ったこと以外はどこにでもいるその他大勢なわけだ。
そんな俺は今、知らない見たこともない森の中で横たわっていて、そのままの体勢でしばらく頭をフル回転させていた。
───確か昨日は夜のコンビニのバイトが終わって、アパートに着いてスマホの時計で日付が変わってたのを確認した。
寝惚けまなこでシャワーを浴びておざなりに髪を乾かして寝間着代わりのスウェットのパーカーとお揃いのズボンを履いて、明日は午前中の講義はないから朝寝坊でもするかと、ベッドで横になって───。
「・・・・・・どういうこと?」
今現在、横になっているのは見たことのない草の生い茂った地面が続く鬱蒼とした木々の森。
「夢? にしてはリアルな感触・・・・・・?」
ここでようやく身体を起こす。
日の差さない木陰はやたらと肌寒かった。
「寒いとか、青臭い匂いとか・・・・・・まさか、ね?」
そんな今流行の異世界転移とか? なんて乾いた笑いが出た直後、少し離れた藪の向こうでガサガサと音が聞こえて慌てて立つと、背後にある何かにぶつかった。
「え?」
後ろに木とかあったっけ? なんて振り向いた直後、その何かがボソボソと呟き、俺はくらりと倒れそうになった。
そして倒れそうな俺の身体をニヤリと見て笑う極悪人のような見た目のゴツい男の顔を最後に意識はなくなった。
次に目覚めたときには薄くて硬いマットレスのようなところに全身裸で横たわっていた。
ぼんやりと光るランプの明かり以外はなくて暗いそこは、小さなテーブルとスツールみたいな簡素な椅子があるだけの六畳間くらいの部屋みたいだ。
窓は木の板が打ち付けられていて外が見えないから、今が朝なのか夜なのか見当もつかない。
俺はギョッとして起き上がり、周りをキョロキョロとみるとテーブル上にワンピースみたいな被って着るタイプの上着と七分丈のズボンがあり、慌ててそれを着た。
その直後、俺のいた部屋の出入り口の扉が開いて、誰かが入ってきた。
思わず壁際に下がってしまう。
ジッと様子を窺っていると、俺に気付いたその男はゆっくりとこっちに向かってきた。
倒れる前に見た男とは違う、左目に黒い眼帯、その左頬にも鋭いかぎ爪痕があるデカくてゴツい大男だ。
よく見ればその男の後ろにあの男もいた。
「・・・・・・ん? ああ目が覚めたのか。おお、ご丁寧に服も身に着けて。まさか手が出せねえとは思わなかったが、まあいい」
そう言って俺に手を伸ばすと前髪をガッと掴んで動けないようにされた。
「ひっ・・・・・・な、何をっ───」
「そうやって煩く騒げねえように、こうするんだよ!」
男はそう言ってギラリとランプの明かりを反射したナイフを俺の目の前にチラつかせると、俺の首を横一文字に斬った。
「っ!? ─────っ!? っ!」
一瞬で激しい痛みが喉を襲い、口から血が溢れた。痛くて怖くてどうしようもなく涙が溢れて死ぬと思ったとき、なにかを傷にかけられた。
その数十秒後には痛みは消えた。
でも喉に残る違和感に声を出そうとして───出なかった。
「・・・・・・あ、名前を聞いてからやるんだったな。チッ、コレじゃ聞けねえや。隷属魔法が弱くなるが・・・・・・仕方ねえ」
どうやら喉を潰されたようだ。コレじゃ叫んで助けを呼ぶこともできない。
というか、魔法って言った?
「お前、何でか貞操の護りの魔法が常時発動しててよ、性奴隷にして啼かせようと思ってたのに使えねえ。そんなヤツに声なんかいらねえだろ」
「・・・・・・っ」
性奴隷!?
ラノベなんかでよくある話の設定!? ていうか、じゃあ俺も魔法が使える?
「魔力は最低限で魔法なんざこれっぽっちも発動しそうもねえ、性奴隷もムリなんて役立たずには暗殺訓練でも受けてもらって捨て駒だな」
「・・・・・・」
魔法が使えない?
その上、捨て駒で暗殺訓練って・・・・・・。
「ああ一つ。お前はすでにここ、闇ギルド【ダウン】に飼われた奴隷だから。うなじに隷属魔法刻んであるから逃げようとか反抗とか言うことを聞かなかったりすると───」
・・・・・・すると、何?
「気絶するほどの激痛が全身を襲うから気をつけな」
───嘘だろう?
じゃあなと軽く言って部屋を去った男の代わりに最初の男が近付いてきた。思わず身体が震える。
「さっきのはギルドマスターだ。ギルマスの命令でお前は今日から向こうの小屋で寝起きして訓練だ。可哀想によぉ。性奴隷の方が長生きできたろうに。そうそう、お前は十二番目でトェルって呼び名だ」
呆然と立ちすくんでいると最初の男に腕を掴まれて引き摺られていく。
そうして初めて、太陽が昇ったばかりで今が朝だと気付いた。
その小屋には俺のような奴隷にされた人が十人ほどいて、皆昏い目をしていた。
「おら、新入りだ。へっ、仲良くしろよ!」
そう言って俺を放り投げて去って行く男に再び呆然とする。
小屋の奴隷達はほとんど反応がなく、仕方なく自分で辺りを見廻ってトイレや何かの場所を確認して。
そのあとも無感情な奴隷達にビクビクしながら見よう見まねで暗殺訓練を受け、時々失敗して隷属魔法が発動して気絶する───のを繰り返すと、やがて俺も心を壊していった。
もう元の世界には戻れない。なら生きてても仕方ない。死んだら帰れるだろうか、せめて魂だけでも・・・・・・。
でも隷属魔法で死ねない。
───俺もこの奴隷達の中の一人になるのにさほど時間はかからなかったのだ。
◇◇◇
───そんな日々が一年ほど過ぎた頃、初任務だと言ってとある国の王太子暗殺を命ぜられる。
そこで運命の出逢いを果たすことになる。
※【重たい愛】からの続きになります。このあとはそちらを先に読むと分かりやすいと思います。
214
あなたにおすすめの小説
異世界から戻ってきた俺の身体が可笑しい
海林檎
BL
異世界転生で何故か勇者でも剣士でもましてや賢者でもなく【鞘】と、言う職業につかされたんだが
まぁ、色々と省略する。
察してくれた読者なら俺の職業の事は分かってくれるはずだ。
まぁ、そんなこんなで世界が平和になったから異世界から現代に戻ってきたはずなのにだ
俺の身体が変なままなのはどぼじで??
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
聖獣は黒髪の青年に愛を誓う
午後野つばな
BL
稀覯本店で働くセスは、孤独な日々を送っていた。
ある日、鳥に襲われていた仔犬を助け、アシュリーと名づける。
だが、アシュリーただの犬ではなく、稀少とされる獣人の子どもだった。
全身で自分への愛情を表現するアシュリーとの日々は、灰色だったセスの日々を変える。
やがてトーマスと名乗る旅人の出現をきっかけに、アシュリーは美しい青年の姿へと変化するが……。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
「君を一生愛すから」って言ってたのに捨てられた
豆子
BL
女神の加護を持つ国フィアラテールに齡十六で神子として召喚され、女神から授かった浄化の力で各地の魔物を倒し、瘴気で汚れた土地を蘇らせ、世界に平和と安寧をもたらし、ついでに共に戦った王子と文字に起こすと辞書並みの厚さになるラブストーリーを繰り広げ、永遠の愛を誓ってから二十年後「俺と別れて欲しい」とあっさりすっぱり捨てられたところから始まる話。
恋人の王子に捨てられたおっさん神子が長年の従者と第二の人生を歩む話です。
無表情獣人従者×三十路の神子
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる