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3 優しい光
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どれくらいそうしていたのか、ふと気付くとその場に人が増えていた。
王太子の話を聞いた黒髪を肩で揃えた藍色の瞳の小柄な子が俺の目を見て優しく声をかけてくれた。
「心配ないですよ。綺麗に直りますよ。隷属なんて最低な魔法、消しちゃいましょうね」
その優しい声にホッとする。その直後にぱあっと輝いた光に目が眩んで思わずぎゅっと目を瞑る。
眩しいのに暖かくて柔らかい日だまりのような光が消えて、ふと身体の痛みがないことに気付いた。
さっきまで折れてプラプラしていた手首が動いて思わず起き上がる。
ぐっぱっと手のひらをにぎにぎしても違和感ない。足もちゃんと動く。
───何より・・・・・・。
「うそ・・・・・・だろ?」
声が、喉が直ってる。この一年、全く話せなかったのに、ちゃんと、声が出てる。
俺はハッとして、思わず直してくれた小柄な子を見て、その子が頷くのを見てから王太子の方を見た。
その彼の隣にはもう一人、アイスブルーの瞳で長い銀髪の、王太子によく似た顔の男が立っていた。
この子と一緒に来た人だろうか。
さっきはもう死にたいってそればかり考えてて気付かなかった。
それはともかく───。
俺は身体を彼らに向けると、日本で最上級の謝罪の体勢───土下座をした。
「スミマセンでした! いやありがとうございます!」
まさか、死ぬと思っていたこんな状態で、こんなことになるなんて。
「本当に・・・・・・本・・・・・・当に・・・・・・こんな日が来るなんて」
そう言って頭を下げ続けていたら王太子がちょっとバツが悪そうに声をかけてきた。
「───いや、まあ。私もバキバキ骨砕いちゃったし」
いやいや、貴方は身を護るための当然のことで正当防衛だから。悪いのは俺だから謝らないで!
そう思っていたら肩をポンと叩かれた。
「何があったか詳しく話してくれるか?」
弾かれるように顔をあげたら、そう真剣な目で見つめる王太子と目が合って。
闇ギルドの場所とか言うなと(そもそも口が聞けないんだが)言われていたが隷属魔法は解除されているから、もう好きなだけ話せるんだ。
「私達も同席していいか? 何やら訳ありみたいだし、ナツメもここまで関わったから気になっているだろうし」
「ああ、頼む」
さっきからいる銀髪の男の人と俺を直してくれた小柄な子もこのままいるようだ。
王太子に促されてソファに座ると俺の右隣に王太子が座った。
・・・・・・なぜかピッタリとくっ付いている。何で?
向かいのソファには銀髪の男の人と小柄な子がこれまたピッタリとくっ付いて座った。なんなら銀髪の男の人が自分の膝の上に小柄な子を乗せようとして拒否されてショボンとしている。
・・・・・・何なんだ? 二人の関係性が全く分からない。
そんな疑問もこのあと解消されることになる。
「まずは自己紹介をしよう。私はこの国の王太子でミリオネア。二〇歳だ」
「では次は私達だな。私はササナギ・エンドフィール。一九歳で次期侯爵だ」
うん。王太子はミリオネア様。で、銀髪の人はササナギ様で次期侯爵様。
・・・・・・爵位は世界史で調べたことがあったし異世界モノのラノベとかでよく出るから知ってる。
かなりの地位の貴族ってことだ。
ふんふんと小さく頷いているとササナギ様が続けた。
「彼はナツメ。私の夫で絶賛妊娠中だから気をつけてくれ」
「ナツメです。一八です。ササナギのつ、夫です! きょ、今日から王立魔導師団員です!」
───え、夫? 男だよね? え、妊娠中? 男で妊娠するの?
俺は戸惑い、呟く。しかも子供だと思ってた子が俺と二つしか違わないなんて。
俺は目を瞑り、気持ちを落ち着かせる。
隣で苦笑するような声が聞こえる気がするがスルーだ。
ココは異世界。日本の常識なんてあってないようなモノ。郷に入っては郷に従え、だ。
疑問は一旦呑み込んで、気持ちを切り替える。
「ええと、俺は草壁睦月と言います。睦月が名前です。今はたぶん誕生日が過ぎてて、二〇歳になったと思います。地球という星の日本という国に住んでました」
───こうして俺は、異世界転移してから今日までの出来事を彼らに打ち明けることになったのだった。
※11月29日ササナギとナツメの容姿の描写を加筆しました。初見の人でもイメージ出来るかと思います。
王太子の話を聞いた黒髪を肩で揃えた藍色の瞳の小柄な子が俺の目を見て優しく声をかけてくれた。
「心配ないですよ。綺麗に直りますよ。隷属なんて最低な魔法、消しちゃいましょうね」
その優しい声にホッとする。その直後にぱあっと輝いた光に目が眩んで思わずぎゅっと目を瞑る。
眩しいのに暖かくて柔らかい日だまりのような光が消えて、ふと身体の痛みがないことに気付いた。
さっきまで折れてプラプラしていた手首が動いて思わず起き上がる。
ぐっぱっと手のひらをにぎにぎしても違和感ない。足もちゃんと動く。
───何より・・・・・・。
「うそ・・・・・・だろ?」
声が、喉が直ってる。この一年、全く話せなかったのに、ちゃんと、声が出てる。
俺はハッとして、思わず直してくれた小柄な子を見て、その子が頷くのを見てから王太子の方を見た。
その彼の隣にはもう一人、アイスブルーの瞳で長い銀髪の、王太子によく似た顔の男が立っていた。
この子と一緒に来た人だろうか。
さっきはもう死にたいってそればかり考えてて気付かなかった。
それはともかく───。
俺は身体を彼らに向けると、日本で最上級の謝罪の体勢───土下座をした。
「スミマセンでした! いやありがとうございます!」
まさか、死ぬと思っていたこんな状態で、こんなことになるなんて。
「本当に・・・・・・本・・・・・・当に・・・・・・こんな日が来るなんて」
そう言って頭を下げ続けていたら王太子がちょっとバツが悪そうに声をかけてきた。
「───いや、まあ。私もバキバキ骨砕いちゃったし」
いやいや、貴方は身を護るための当然のことで正当防衛だから。悪いのは俺だから謝らないで!
そう思っていたら肩をポンと叩かれた。
「何があったか詳しく話してくれるか?」
弾かれるように顔をあげたら、そう真剣な目で見つめる王太子と目が合って。
闇ギルドの場所とか言うなと(そもそも口が聞けないんだが)言われていたが隷属魔法は解除されているから、もう好きなだけ話せるんだ。
「私達も同席していいか? 何やら訳ありみたいだし、ナツメもここまで関わったから気になっているだろうし」
「ああ、頼む」
さっきからいる銀髪の男の人と俺を直してくれた小柄な子もこのままいるようだ。
王太子に促されてソファに座ると俺の右隣に王太子が座った。
・・・・・・なぜかピッタリとくっ付いている。何で?
向かいのソファには銀髪の男の人と小柄な子がこれまたピッタリとくっ付いて座った。なんなら銀髪の男の人が自分の膝の上に小柄な子を乗せようとして拒否されてショボンとしている。
・・・・・・何なんだ? 二人の関係性が全く分からない。
そんな疑問もこのあと解消されることになる。
「まずは自己紹介をしよう。私はこの国の王太子でミリオネア。二〇歳だ」
「では次は私達だな。私はササナギ・エンドフィール。一九歳で次期侯爵だ」
うん。王太子はミリオネア様。で、銀髪の人はササナギ様で次期侯爵様。
・・・・・・爵位は世界史で調べたことがあったし異世界モノのラノベとかでよく出るから知ってる。
かなりの地位の貴族ってことだ。
ふんふんと小さく頷いているとササナギ様が続けた。
「彼はナツメ。私の夫で絶賛妊娠中だから気をつけてくれ」
「ナツメです。一八です。ササナギのつ、夫です! きょ、今日から王立魔導師団員です!」
───え、夫? 男だよね? え、妊娠中? 男で妊娠するの?
俺は戸惑い、呟く。しかも子供だと思ってた子が俺と二つしか違わないなんて。
俺は目を瞑り、気持ちを落ち着かせる。
隣で苦笑するような声が聞こえる気がするがスルーだ。
ココは異世界。日本の常識なんてあってないようなモノ。郷に入っては郷に従え、だ。
疑問は一旦呑み込んで、気持ちを切り替える。
「ええと、俺は草壁睦月と言います。睦月が名前です。今はたぶん誕生日が過ぎてて、二〇歳になったと思います。地球という星の日本という国に住んでました」
───こうして俺は、異世界転移してから今日までの出来事を彼らに打ち明けることになったのだった。
※11月29日ササナギとナツメの容姿の描写を加筆しました。初見の人でもイメージ出来るかと思います。
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