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5 初めての友人と謁見(略式)とお風呂
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「私抜きで話を進めるな。まあおおよそその通りだが。というわけでササナギ達は帰っていいぞ。助かった」
「全くだ。貸し一つだぞ」
「コレくらいなんでもないです」
そう言ってミリオネア様がササナギ様達を帰らせようとするのを慌てて止めた。
「───あのっ、本当にありがとうございました」
そう言ってまた頭を下げるとミリオネア様が微笑んだ。
「君は被害者なんだから気にすることはないよ」
するとササナギ様がニヤリと笑って言った。
「そうだ。ミリオネアに虐められたのだろう? 可哀想に」
「虐めてない。正当防衛だ」
「別にどうでもいい」
「おいコラ!」
「───っふ、ぁ、スミマセン。仲がいいんですね?」
その反論にササナギ様は心底関心ががないように言ってミリオネア様が即座にツッコむから思わず吹き出してしまった。
「・・・・・・はとこだからね。それなりに付き合いは長いから」
「そうなんですね。俺は物心つく頃に事故で両親を亡くしてからは施設育ちで、親類もいなくて寂しかったから・・・・・・羨ましいです」
そう漏らしたらナツメ様がギュッと抱き付いてきて驚いた。すぐにササナギ様に引き剥がされたけど。
「───っ、僕も、孤児で本当の家族がいなかったから分かる気がします! 僕達、仲良くなれそう」
「・・・・・・じゃああの、友達に、なってくれますか?」
「はい!」
そう言ってお互いの手を握りしめたが、今度は場の空気を読んだのか許容範囲だったのか引き剥がされなかった。よかった。
俺のこの世界での初めての友人───。
「また明日」
そう言って別れた。
ササナギ様達が帰ったあと、ミリオネア様が俺に言った。
「ムツキには申し訳ないが、コレから父───国王陛下に会って貰う。といっても私室で事情説明くらいだと思うが、ムツキの身分をしっかりさせたいのでな」
「・・・・・・分かりました」
俺は神妙な顔で頷いた。
そうして夜も遅い時間だったがソルト国王陛下の私室で簡略的な謁見をした。
こうしてみると色味が同じなせいか親子というよりか兄弟かと思うくらいそっくりな若い王様だった。
ミリオネア様が詳しい経緯を説明して、うんうんと頷いていた国王陛下が、俺に空いている侯爵位をポンと叙爵してくれた。
───え、そんな簡単にホイホイ信じて爵位あげちゃって大丈夫なの!? 貴方の御子息を殺そうとした元暗殺者ですよ!?
でもまあ、異世界の常識があるのかもだし、何か信用に足る確たる証拠でもあるのかも?
お礼を言いつつも申し訳なくて、そこまでして貰っていいのかと聞くと───。
「これは詫びでもある。逆に痛めつけられて辛かったろう? ミリオネアは敵には容赦しないからね。怖かったよね?」
「え、あ、はい?」
え? と戸惑って曖昧な返事をしたら、何か勘違いしたのか一人うんうんと頷いて話を続ける。
「とにかく今日はミリオネアの部屋で休むといい。明日になったらムツキ用にミリオネアの隣の部屋を整えるからな」
「あ、りがとう、ございます?」
なぜミリオネア様の隣の部屋?
まあ、ミリオネア様が笑って何も言わないから大丈夫なのかな?
意味が分からないままミリオネア様の部屋に戻ると、さっきミリオネア様を襲って乱闘した脱衣所が綺麗に整えられていた。
おお、さすがプロの使用人。散らかしてごめんなさい。
その奥の扉をミリオネア様が開くと、湯気が上がった浴槽が見えて思わず頬が緩んだ。
「・・・・・・わあ、お風呂! 大きい!」
見れば大人が数人入っても余裕そうなサイズの浴槽に並々とミルク色の濁り湯が溜まっている。
「───お風呂好きなのか?」
「はい、日本人はお風呂好きで有名なんです! この一年、見たことも入ったこともないから、この世界にはないのかと思ってました!」
ミリオネア様に微笑ましそうにそう言われて、テンション高く話す俺。
「そうか。まあ庶民が個人で所有するにはちょっと維持費とか浴槽自体高いから仕方ない。じゃあ一緒に入るか。あと敬語はなしで、私のことはミリィと」
そう言われて、お風呂に一緒に入るのはいいんだけど、愛称は───と思ったところで、さっき俺が出来ることは何でもしますって言ったのを思い出す。
───うん。コレもその一つだよな。王子様って言っても俺と同い年だし。
「え、あ・・・・・・うん。えっと、ミリィ」
それでもちょっと照れてもじもじしながらそう言ったら、ミリオネア様───ミリィがふわりと嬉しそうに微笑んでくれて、俺はなぜか顔が赤くなった。
イケメンはコレだからいけない。
「全くだ。貸し一つだぞ」
「コレくらいなんでもないです」
そう言ってミリオネア様がササナギ様達を帰らせようとするのを慌てて止めた。
「───あのっ、本当にありがとうございました」
そう言ってまた頭を下げるとミリオネア様が微笑んだ。
「君は被害者なんだから気にすることはないよ」
するとササナギ様がニヤリと笑って言った。
「そうだ。ミリオネアに虐められたのだろう? 可哀想に」
「虐めてない。正当防衛だ」
「別にどうでもいい」
「おいコラ!」
「───っふ、ぁ、スミマセン。仲がいいんですね?」
その反論にササナギ様は心底関心ががないように言ってミリオネア様が即座にツッコむから思わず吹き出してしまった。
「・・・・・・はとこだからね。それなりに付き合いは長いから」
「そうなんですね。俺は物心つく頃に事故で両親を亡くしてからは施設育ちで、親類もいなくて寂しかったから・・・・・・羨ましいです」
そう漏らしたらナツメ様がギュッと抱き付いてきて驚いた。すぐにササナギ様に引き剥がされたけど。
「───っ、僕も、孤児で本当の家族がいなかったから分かる気がします! 僕達、仲良くなれそう」
「・・・・・・じゃああの、友達に、なってくれますか?」
「はい!」
そう言ってお互いの手を握りしめたが、今度は場の空気を読んだのか許容範囲だったのか引き剥がされなかった。よかった。
俺のこの世界での初めての友人───。
「また明日」
そう言って別れた。
ササナギ様達が帰ったあと、ミリオネア様が俺に言った。
「ムツキには申し訳ないが、コレから父───国王陛下に会って貰う。といっても私室で事情説明くらいだと思うが、ムツキの身分をしっかりさせたいのでな」
「・・・・・・分かりました」
俺は神妙な顔で頷いた。
そうして夜も遅い時間だったがソルト国王陛下の私室で簡略的な謁見をした。
こうしてみると色味が同じなせいか親子というよりか兄弟かと思うくらいそっくりな若い王様だった。
ミリオネア様が詳しい経緯を説明して、うんうんと頷いていた国王陛下が、俺に空いている侯爵位をポンと叙爵してくれた。
───え、そんな簡単にホイホイ信じて爵位あげちゃって大丈夫なの!? 貴方の御子息を殺そうとした元暗殺者ですよ!?
でもまあ、異世界の常識があるのかもだし、何か信用に足る確たる証拠でもあるのかも?
お礼を言いつつも申し訳なくて、そこまでして貰っていいのかと聞くと───。
「これは詫びでもある。逆に痛めつけられて辛かったろう? ミリオネアは敵には容赦しないからね。怖かったよね?」
「え、あ、はい?」
え? と戸惑って曖昧な返事をしたら、何か勘違いしたのか一人うんうんと頷いて話を続ける。
「とにかく今日はミリオネアの部屋で休むといい。明日になったらムツキ用にミリオネアの隣の部屋を整えるからな」
「あ、りがとう、ございます?」
なぜミリオネア様の隣の部屋?
まあ、ミリオネア様が笑って何も言わないから大丈夫なのかな?
意味が分からないままミリオネア様の部屋に戻ると、さっきミリオネア様を襲って乱闘した脱衣所が綺麗に整えられていた。
おお、さすがプロの使用人。散らかしてごめんなさい。
その奥の扉をミリオネア様が開くと、湯気が上がった浴槽が見えて思わず頬が緩んだ。
「・・・・・・わあ、お風呂! 大きい!」
見れば大人が数人入っても余裕そうなサイズの浴槽に並々とミルク色の濁り湯が溜まっている。
「───お風呂好きなのか?」
「はい、日本人はお風呂好きで有名なんです! この一年、見たことも入ったこともないから、この世界にはないのかと思ってました!」
ミリオネア様に微笑ましそうにそう言われて、テンション高く話す俺。
「そうか。まあ庶民が個人で所有するにはちょっと維持費とか浴槽自体高いから仕方ない。じゃあ一緒に入るか。あと敬語はなしで、私のことはミリィと」
そう言われて、お風呂に一緒に入るのはいいんだけど、愛称は───と思ったところで、さっき俺が出来ることは何でもしますって言ったのを思い出す。
───うん。コレもその一つだよな。王子様って言っても俺と同い年だし。
「え、あ・・・・・・うん。えっと、ミリィ」
それでもちょっと照れてもじもじしながらそう言ったら、ミリオネア様───ミリィがふわりと嬉しそうに微笑んでくれて、俺はなぜか顔が赤くなった。
イケメンはコレだからいけない。
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