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13 検査結果 2
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───暖かい何かが頬をなぞっている。
滑らかなのにところどころマメのようにゴツゴツした場所があたって、なんだろうと意識が浮上した。
ぼんやりと目を開けるが、眠たくて怠くて、目蓋が重い。
何でこんなに疲れてるんだろう、俺。
「───ツキ───、──て───」
・・・・・・誰かが、俺を・・・・・・呼んでる?
優しくて暖かくて、安心する声───。
これは、俺の大好きな───。
「・・・・・・ミ、リ───ッ」
「おはよう、ムツキ。あっ待って、今、水を───」
ベッドの隣にはミリィが寝そべっていた。
俺、いつ寝たんだろう?
寝起きだからか、自分の声のあまりのガサガサ具合に眉をひそめる。
するとそれに気付いたミリィがサイドテーブルのピッチャーに手を伸ばしコップに水を注ぐと自分の口に含み、そのまま俺の唇に口を合わせて静かに口移しをしてきた。
「!?」
そんな経験ないからビックリして口を開けると少しずつ水が口腔内に入ってきて、俺は反射的に嚥下した。
思ったよりも水分を欲していたようで、それからは俺が満足するまで続けられた。
まあなぜか身体がだる重くて動かなかったから助かったんだけどね。
「・・・・・・落ち着いた?」
「───うん・・・・・・うん?」
人心地ついて冷静になって気付いた。
俺もミリィももしかしなくてもすっぽんぽんじゃないですか!?
どうりで肌の感触がやたらと鮮明だったんだね!?
そりゃあお互い素肌を触れさせてれば分かりますよね!?
内心で誰に言ってるのか分からないような混乱ぷりに顔を赤くしたり青くしたり。
でも身体が動かないから逃げることも顔を隠すことも出来ずにワタワタしていたら、ふっと笑ったミリィが俺をぎゅうっと抱きしめた。
「・・・・・・ミリィ?」
「───ムツキが無事で・・・・・・生きててよかった───」
「───っ」
そうだよ。俺、確か魔法の検査で魔導師団に行って鑑定して貰ったあと───。
「・・・・・・ごめん。よく分からないけど、何かやらかしちゃったんだね、俺・・・・・・」
「・・・・・・急に、魔力が溢れてきて、止められなかった。私こそすまない。そういう危険もあったのに説明を怠った」
「・・・・・・いやでも、聞いてもたぶんその、魔力暴走ってヤツ? 自分でも抑えられなかったと思うし」
「だからこそ、こちらがキチンと対応してから行うべきだった」
───あー、コレは責任感じちゃってるな。気にしないでと言ったところで聞き入れなさそうだし。
ヨシ、話の矛先を変えよう。
俺は重い腕を何とか持ち上げて背中に回すと頑張って抱きしめた。
「無事だったんだからたらればは止めよう? それよりねえ、今は何時? アレからどのくらいの時間が経ってて俺は今、どういう状態?」
出来ればそっちを把握したい。
「そうだな。今は昼過ぎ二時頃で、アレから丸一日経っている。魔力暴走で魔力枯渇に陥ったムツキを、魔力が安定するまで抱いて胎に魔力を直接注いでいた。数時間前まで」
「・・・・・・はあ、丸一日・・・・・・はあっ!? あっ! いててっ」
俺の顔を見て微笑みながらそう言ったミリィにポカンとしてから思わず大きな声を出してしまい、腰に響いた。
いや数時間前まで!? マジ!?
そりゃあ疲れて眠いし怠いし腕も上がらないよな!
要するに抱き潰されたわけだもんね!
「大丈夫か? 無理せず横になってて。今着替えを持ってくるから、あと食事も軽く食べよう」
「ううう・・・・・・お願いします」
俺はそう言って寝室をあとにしたミリィを見送り、遠慮なくベッドに横になった。
「・・・・・・ふぁあ・・・・・・あ、ヤバい。このまま寝ちゃいそう・・・・・・」
疲れは極限まで溜まっていたようで、うとうととしていると誰かが寝室に入ってきて来た気配を感じて意識が覚醒する。
───ミリィじゃないのは確実。使用人か? それにしたってこの気配の消し方はどうみても───。
目を瞑ったままそう考えていると使用人らしき女の人から一瞬殺気が漏れて、条件反射でシーツを相手に絡めて手に持っていたアイスピックのような武器を蹴り飛ばす。
そのままシーツで全身を拘束して、ついでに自害できないように口の中にもシーツの角を丸めてツッコんでおく。
そこまでしてホッとすると途端に全身───主に腰がぐきっとなって思わず声が出た。
「い、いででで・・・・・・っ!」
「ムツキ! 無事か!? 今物音が・・・・・・! うわっ! 近衛騎士はソイツを連れて早く出て行け! ムツキ!」
ミリィが慌てた様子で寝室に入ってきて、ベッド下に腰を擦って四つん這い状態の俺の間抜けな格好とシーツに拘束された不審者な使用人を見て状況を察したようで、自分の着ていたガウンを急いで脱いで俺に着せてくれた。
あ、ミリィは簡素なシャツとズボンをちゃんと身につけてた。
よかった、ガウンの下が素っ裸じゃなくて。
そうじゃなかったらお互い間抜けな格好だったよ!
ホントありがとう! もう動けなかったから助かる!
さっきの?
アレは条件反射と火事場の馬鹿力ってヤツだよ。
アレで俺の腰はトドメを刺されて死んだ。
*ミリィが衣服を身に着けている描写が抜けてましたので追記しました。
安心して下さい。ちゃんと着てますよ!
滑らかなのにところどころマメのようにゴツゴツした場所があたって、なんだろうと意識が浮上した。
ぼんやりと目を開けるが、眠たくて怠くて、目蓋が重い。
何でこんなに疲れてるんだろう、俺。
「───ツキ───、──て───」
・・・・・・誰かが、俺を・・・・・・呼んでる?
優しくて暖かくて、安心する声───。
これは、俺の大好きな───。
「・・・・・・ミ、リ───ッ」
「おはよう、ムツキ。あっ待って、今、水を───」
ベッドの隣にはミリィが寝そべっていた。
俺、いつ寝たんだろう?
寝起きだからか、自分の声のあまりのガサガサ具合に眉をひそめる。
するとそれに気付いたミリィがサイドテーブルのピッチャーに手を伸ばしコップに水を注ぐと自分の口に含み、そのまま俺の唇に口を合わせて静かに口移しをしてきた。
「!?」
そんな経験ないからビックリして口を開けると少しずつ水が口腔内に入ってきて、俺は反射的に嚥下した。
思ったよりも水分を欲していたようで、それからは俺が満足するまで続けられた。
まあなぜか身体がだる重くて動かなかったから助かったんだけどね。
「・・・・・・落ち着いた?」
「───うん・・・・・・うん?」
人心地ついて冷静になって気付いた。
俺もミリィももしかしなくてもすっぽんぽんじゃないですか!?
どうりで肌の感触がやたらと鮮明だったんだね!?
そりゃあお互い素肌を触れさせてれば分かりますよね!?
内心で誰に言ってるのか分からないような混乱ぷりに顔を赤くしたり青くしたり。
でも身体が動かないから逃げることも顔を隠すことも出来ずにワタワタしていたら、ふっと笑ったミリィが俺をぎゅうっと抱きしめた。
「・・・・・・ミリィ?」
「───ムツキが無事で・・・・・・生きててよかった───」
「───っ」
そうだよ。俺、確か魔法の検査で魔導師団に行って鑑定して貰ったあと───。
「・・・・・・ごめん。よく分からないけど、何かやらかしちゃったんだね、俺・・・・・・」
「・・・・・・急に、魔力が溢れてきて、止められなかった。私こそすまない。そういう危険もあったのに説明を怠った」
「・・・・・・いやでも、聞いてもたぶんその、魔力暴走ってヤツ? 自分でも抑えられなかったと思うし」
「だからこそ、こちらがキチンと対応してから行うべきだった」
───あー、コレは責任感じちゃってるな。気にしないでと言ったところで聞き入れなさそうだし。
ヨシ、話の矛先を変えよう。
俺は重い腕を何とか持ち上げて背中に回すと頑張って抱きしめた。
「無事だったんだからたらればは止めよう? それよりねえ、今は何時? アレからどのくらいの時間が経ってて俺は今、どういう状態?」
出来ればそっちを把握したい。
「そうだな。今は昼過ぎ二時頃で、アレから丸一日経っている。魔力暴走で魔力枯渇に陥ったムツキを、魔力が安定するまで抱いて胎に魔力を直接注いでいた。数時間前まで」
「・・・・・・はあ、丸一日・・・・・・はあっ!? あっ! いててっ」
俺の顔を見て微笑みながらそう言ったミリィにポカンとしてから思わず大きな声を出してしまい、腰に響いた。
いや数時間前まで!? マジ!?
そりゃあ疲れて眠いし怠いし腕も上がらないよな!
要するに抱き潰されたわけだもんね!
「大丈夫か? 無理せず横になってて。今着替えを持ってくるから、あと食事も軽く食べよう」
「ううう・・・・・・お願いします」
俺はそう言って寝室をあとにしたミリィを見送り、遠慮なくベッドに横になった。
「・・・・・・ふぁあ・・・・・・あ、ヤバい。このまま寝ちゃいそう・・・・・・」
疲れは極限まで溜まっていたようで、うとうととしていると誰かが寝室に入ってきて来た気配を感じて意識が覚醒する。
───ミリィじゃないのは確実。使用人か? それにしたってこの気配の消し方はどうみても───。
目を瞑ったままそう考えていると使用人らしき女の人から一瞬殺気が漏れて、条件反射でシーツを相手に絡めて手に持っていたアイスピックのような武器を蹴り飛ばす。
そのままシーツで全身を拘束して、ついでに自害できないように口の中にもシーツの角を丸めてツッコんでおく。
そこまでしてホッとすると途端に全身───主に腰がぐきっとなって思わず声が出た。
「い、いででで・・・・・・っ!」
「ムツキ! 無事か!? 今物音が・・・・・・! うわっ! 近衛騎士はソイツを連れて早く出て行け! ムツキ!」
ミリィが慌てた様子で寝室に入ってきて、ベッド下に腰を擦って四つん這い状態の俺の間抜けな格好とシーツに拘束された不審者な使用人を見て状況を察したようで、自分の着ていたガウンを急いで脱いで俺に着せてくれた。
あ、ミリィは簡素なシャツとズボンをちゃんと身につけてた。
よかった、ガウンの下が素っ裸じゃなくて。
そうじゃなかったらお互い間抜けな格好だったよ!
ホントありがとう! もう動けなかったから助かる!
さっきの?
アレは条件反射と火事場の馬鹿力ってヤツだよ。
アレで俺の腰はトドメを刺されて死んだ。
*ミリィが衣服を身に着けている描写が抜けてましたので追記しました。
安心して下さい。ちゃんと着てますよ!
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