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15 検査結果 3
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笑い転げていよいよもって、俺の腰は死んだ。
ミリィが片手で摘まめる一口サイズのサンドイッチを用意してくれてたので、行儀が悪いがミリィの胸に寄りかかりながら給仕して貰った。
───うん? この場合は給餌かな? まあいいか。
一息吐いたところで扉をノックする音が聞こえて、扉にいた近衛騎士が確認をするとササナギ夫夫とティメール師団長の来訪を告げてきた。
「入って貰ってくれ」
「畏まりました」
「───さっき言ってた特殊の説明?」
「それもあるがナツメに治癒を頼もうと思ってな。私のせいだが腰はもとより全身辛いだろう?」
微笑んでそう言うミリィに、記憶がないが魔力譲渡のアレやコレを想像してしまって顔が赤くなった。
それをニヤリと笑うミリィを睨むと、煽ってるのかと口付けされた。
何で!?
「……おい、バカップル。イチャつくならベッドでやれ」
するといつの間にか入室していた三人のうちのササナギがチッと舌打ちして言った。
うわ、見られた! 恥ずかしい!
顔をミリィの胸に埋めてぐりぐりしていると更に舌打ちされた。いやごめんて。
そのあとナツメがそばに来て俺の腰を擦りながら聖魔法で治癒してくれた。
「すぐに来られなくてごめん。後処理とか忙しくて」
「いや、とんでもない。俺のせいだろう? ありがとう。これでやっとまともに動ける」
「どういたしまして。でも体力や魔力は回復できないからちゃんと休んでね」
「分かった」
ナツメの言葉に頷くとミリィに言って左隣に座らせて貰う。ミリィは渋々膝から下ろしてくれた。
向かいのソファにササナギとナツメが座り、俺たちの斜め右の一人がけのソファにティメール師団長が座った。
使用人が紅茶を淹れてからミリィが人払いをする。
部屋には俺達四人と扉で警護する近衛騎士だけになった。
近衛騎士は事情を知っているのと箝口令が出ているからいても大丈夫なんだって。
「今回は災難でしたね」
微笑みながら最初に口火を切ったのはティメール師団長。
ササナギは相変わらず無表情だけどナツメは心配そうな顔をしていた。
「今回って?」
俺は一瞬ついさっきのことかなと思ったけど、さっきの今だから魔力暴走のことかなと思って聞き返した。
そうしたら返ってきた言葉が───。
「貴方を襲った暗殺者のことですよ」
「……え、え?」
さっきだよね、それ。なのにもう知ってるの?
ミリィを思わず見ると苦笑された。
「ムツキの事情を知っている者に限りすでに通達されている。報連相は基本だからな」
「はー……まあ確かに。というか、やっぱり俺を狙ってたんだ?」
ティメール師団長の言葉は疑問形じゃなくて確信した言い方だったけど。
「ええ、ここに来る前にちょっと地下牢に様子を見に行きましてね、自白系の魔法でチョチョッとね」
「───自白、系の魔法? そ、そんなのあるんだ?」
「ええ昔からあるのですが、実は私が試行錯誤して改良した魔法でまだまだ使える者が少ないんですけど、従来のモノは強力過ぎて精神に後遺症が残って廃じ───」
「───煩い」
俺がちょっと顔を引きつらせてそう言うと嬉々として語り出した師団長。
俺はドン引きでマシンガントークを続ける師団長を見ていたが、たまりかねたササナギが師団長の後頭部をバシッと張り倒した。
「話が脱線してるぞ。今日来たのは昨日の鑑定の結果の続きを教えるためだろう」
「あ、そうでした。ええと、昨日の結果の続きなんですが、クサカベ侯爵様は気を失ってしまったのでご存じないでしょうが、魔力の上限が桁違いに高いことが分かりました」
ハッと我に返った師団長は張り倒されたことを特に気にせず、本題とばかりに話を切り替えた。
ナツメもミリィも平然としているので、師団長はコレが平常運転なのだろう。
……いいのか、長がこんな感じで。
それはともかく、今は自分のことだ。師団長によると、昨日の検査で俺の属性が特殊なモノで光と闇だと分かったんだよな。そこで俺が魔力暴走して今ココ。
それで魔力の上限が桁違いだということを言われたわけだけど。
「ええと、それってどれくらい?」
魔法なんてない世界の住人に感覚で言われても想像できないから、できたらゲームみたいに数値とかないかなと思い、聞いてみたら───。
「そうでした。過去に転移してきた方がやはり魔法は数値化した方が分かりやすいというので、今の鑑定の魔導具が開発されたんですが───」
師団長の説明によると、魔力値は生まれたての赤ちゃんが一〇〇前後で一般人が三〇〇前後。
貴族は政略結婚とかで魔力の高い子供が生まれやすく平均して高い。でもピンキリで五〇〇から七〇〇。
一般人でも飛び抜けてそれくらい高い人も稀にいるそう。だから平民でも魔導師団にスカウトされて入団する人もいるんだって。
貴族は家の後継の嫡男やスペアとなる次男以外は王立魔導師団に入団する人が多いそうだ。
中には魔力も剣の腕前も高くて王立騎士団に入団する者もいるらしい。
「それで私くらいになると一〇〇〇以上ある訳なんですが」
「へえ。かなり凄いってことですか?」
「まあ、一騎当千という言葉が当てはまるくらいには」
説明してくれている師団長ではなく、ミリィが師団長を一騎当千と評した。
なるほど。やっぱり凄いんだ。
「お褒めいただきありがとうございます。まあそんな私でもかなわないのが異世界転移者様です! 過去の例を見てもズバ抜けて高いんですよ! 平均して一〇〇〇〇ですよ!」
「……えええ……」
ちょっと待って。言われたとおりに桁がまず違う!
師団長十人分!?
「そんな中でもクサカベ侯爵様は段違い!」
「……あの、面倒なのでムツキでいいですよ」
「分かりました、ムツキ様! いえムツキ様の魔力の数値は更に上で一五〇〇〇いってるんです! コレは過去最高ですよ!」
「……はぁ」
興奮マックスで鼻息荒くそう言われても実感はないわけで。
ぐいぐい迫ってくるティメール師団長にめちゃくちゃ引いていると再び師団長の後頭部をバシッと張り倒す音が聞こえた。
「いい加減にしろ! この魔法バカ!」
……ササナギ、俺の代わりにありがとう。
致したことで疲労困ぱいだったのに更に疲れた俺はササナギに心の中でお礼を言うのだった。
*更新そうそう誤字をいくつか訂正してます。他にも見つけ次第修正します。すみません。
ミリィが片手で摘まめる一口サイズのサンドイッチを用意してくれてたので、行儀が悪いがミリィの胸に寄りかかりながら給仕して貰った。
───うん? この場合は給餌かな? まあいいか。
一息吐いたところで扉をノックする音が聞こえて、扉にいた近衛騎士が確認をするとササナギ夫夫とティメール師団長の来訪を告げてきた。
「入って貰ってくれ」
「畏まりました」
「───さっき言ってた特殊の説明?」
「それもあるがナツメに治癒を頼もうと思ってな。私のせいだが腰はもとより全身辛いだろう?」
微笑んでそう言うミリィに、記憶がないが魔力譲渡のアレやコレを想像してしまって顔が赤くなった。
それをニヤリと笑うミリィを睨むと、煽ってるのかと口付けされた。
何で!?
「……おい、バカップル。イチャつくならベッドでやれ」
するといつの間にか入室していた三人のうちのササナギがチッと舌打ちして言った。
うわ、見られた! 恥ずかしい!
顔をミリィの胸に埋めてぐりぐりしていると更に舌打ちされた。いやごめんて。
そのあとナツメがそばに来て俺の腰を擦りながら聖魔法で治癒してくれた。
「すぐに来られなくてごめん。後処理とか忙しくて」
「いや、とんでもない。俺のせいだろう? ありがとう。これでやっとまともに動ける」
「どういたしまして。でも体力や魔力は回復できないからちゃんと休んでね」
「分かった」
ナツメの言葉に頷くとミリィに言って左隣に座らせて貰う。ミリィは渋々膝から下ろしてくれた。
向かいのソファにササナギとナツメが座り、俺たちの斜め右の一人がけのソファにティメール師団長が座った。
使用人が紅茶を淹れてからミリィが人払いをする。
部屋には俺達四人と扉で警護する近衛騎士だけになった。
近衛騎士は事情を知っているのと箝口令が出ているからいても大丈夫なんだって。
「今回は災難でしたね」
微笑みながら最初に口火を切ったのはティメール師団長。
ササナギは相変わらず無表情だけどナツメは心配そうな顔をしていた。
「今回って?」
俺は一瞬ついさっきのことかなと思ったけど、さっきの今だから魔力暴走のことかなと思って聞き返した。
そうしたら返ってきた言葉が───。
「貴方を襲った暗殺者のことですよ」
「……え、え?」
さっきだよね、それ。なのにもう知ってるの?
ミリィを思わず見ると苦笑された。
「ムツキの事情を知っている者に限りすでに通達されている。報連相は基本だからな」
「はー……まあ確かに。というか、やっぱり俺を狙ってたんだ?」
ティメール師団長の言葉は疑問形じゃなくて確信した言い方だったけど。
「ええ、ここに来る前にちょっと地下牢に様子を見に行きましてね、自白系の魔法でチョチョッとね」
「───自白、系の魔法? そ、そんなのあるんだ?」
「ええ昔からあるのですが、実は私が試行錯誤して改良した魔法でまだまだ使える者が少ないんですけど、従来のモノは強力過ぎて精神に後遺症が残って廃じ───」
「───煩い」
俺がちょっと顔を引きつらせてそう言うと嬉々として語り出した師団長。
俺はドン引きでマシンガントークを続ける師団長を見ていたが、たまりかねたササナギが師団長の後頭部をバシッと張り倒した。
「話が脱線してるぞ。今日来たのは昨日の鑑定の結果の続きを教えるためだろう」
「あ、そうでした。ええと、昨日の結果の続きなんですが、クサカベ侯爵様は気を失ってしまったのでご存じないでしょうが、魔力の上限が桁違いに高いことが分かりました」
ハッと我に返った師団長は張り倒されたことを特に気にせず、本題とばかりに話を切り替えた。
ナツメもミリィも平然としているので、師団長はコレが平常運転なのだろう。
……いいのか、長がこんな感じで。
それはともかく、今は自分のことだ。師団長によると、昨日の検査で俺の属性が特殊なモノで光と闇だと分かったんだよな。そこで俺が魔力暴走して今ココ。
それで魔力の上限が桁違いだということを言われたわけだけど。
「ええと、それってどれくらい?」
魔法なんてない世界の住人に感覚で言われても想像できないから、できたらゲームみたいに数値とかないかなと思い、聞いてみたら───。
「そうでした。過去に転移してきた方がやはり魔法は数値化した方が分かりやすいというので、今の鑑定の魔導具が開発されたんですが───」
師団長の説明によると、魔力値は生まれたての赤ちゃんが一〇〇前後で一般人が三〇〇前後。
貴族は政略結婚とかで魔力の高い子供が生まれやすく平均して高い。でもピンキリで五〇〇から七〇〇。
一般人でも飛び抜けてそれくらい高い人も稀にいるそう。だから平民でも魔導師団にスカウトされて入団する人もいるんだって。
貴族は家の後継の嫡男やスペアとなる次男以外は王立魔導師団に入団する人が多いそうだ。
中には魔力も剣の腕前も高くて王立騎士団に入団する者もいるらしい。
「それで私くらいになると一〇〇〇以上ある訳なんですが」
「へえ。かなり凄いってことですか?」
「まあ、一騎当千という言葉が当てはまるくらいには」
説明してくれている師団長ではなく、ミリィが師団長を一騎当千と評した。
なるほど。やっぱり凄いんだ。
「お褒めいただきありがとうございます。まあそんな私でもかなわないのが異世界転移者様です! 過去の例を見てもズバ抜けて高いんですよ! 平均して一〇〇〇〇ですよ!」
「……えええ……」
ちょっと待って。言われたとおりに桁がまず違う!
師団長十人分!?
「そんな中でもクサカベ侯爵様は段違い!」
「……あの、面倒なのでムツキでいいですよ」
「分かりました、ムツキ様! いえムツキ様の魔力の数値は更に上で一五〇〇〇いってるんです! コレは過去最高ですよ!」
「……はぁ」
興奮マックスで鼻息荒くそう言われても実感はないわけで。
ぐいぐい迫ってくるティメール師団長にめちゃくちゃ引いていると再び師団長の後頭部をバシッと張り倒す音が聞こえた。
「いい加減にしろ! この魔法バカ!」
……ササナギ、俺の代わりにありがとう。
致したことで疲労困ぱいだったのに更に疲れた俺はササナギに心の中でお礼を言うのだった。
*更新そうそう誤字をいくつか訂正してます。他にも見つけ次第修正します。すみません。
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