重たすぎる愛~【重たい愛】のもう一つの物話~

エウラ

文字の大きさ
17 / 21

16 検査結果 4

しおりを挟む
ササナギに張り倒されて再び我に返るティメール師団長が、誤魔化すようにゴホンと咳払いをした。

今更遅いよ?

「失礼しました。ええと、何ですっけ? あ、そうそう。とにかく器は凄いんですが先日まで隷属魔法で縛られていた弊害でしょう。今のムツキ様の体内魔力量はほんのわずかしかありません」
「……よく分からないんだけど、魔力って普通はどういう風に回復させるの? さっきナツメは休まないと回復しないからって言ったよね?」

ティメール師団長の言うことは何となく理解できた。
そもそも最初に捕まったときに魔法が使えないって決めつけられてたから、もしかしたら隷属魔法で魔力回復できないような縛りがあったのかもしれない。実際、魔導具はおろか生活魔法すら使えなかったわけだし。

今となってはどうだったのかなんて分からないけれど。

そして元々この世界の住人じゃない俺は基本的な常識なんて全然分からないから、ミリィによるセッ……セックスでミリィから、つまり致した相手から分けて貰うっていうのしか知らないんだよね。

俺の問いに応えてくれたのはミリィとササナギ。

「あー、上限にもよるが基本的には食事や睡眠でほとんど回復する。あとは魔力回復薬MPポーションというモノがあるが一度に使用できる上限が決まっているんだ」
「MPポーションはそれなりに強い薬で、体質に合わなかったり飲み過ぎると、人によっては吐き気や頭痛などを起こす。二日酔いみたいなモノだな」

ああ、エナジードリンクとお酒を合わせたような? やっぱり適量があるんだな。

「ただ、奴隷だったときはこの世界に身体が馴染んでいなくて魔力がゼロだったからなんともなかったが、今は魔力が解放されただろう?」
「うん」
「魔力の器がちゃんと出来たことで今度は最低コレだけはないと魔力枯渇で危険だという状態になっているんだ。ただ、初日に私が魔力を多く含む精を注いで私の魔力がムツキに蓄えられていたからぎりぎり大丈夫だったらしい」
「……ふーん?」

つまり、暴走した昨日の俺の魔力は自前じゃなくてミリィから貰ったモノだったってことか。
俺は今、自分の貯金がゼロってことね。

「でも昨日の魔力暴走で私の魔力を使い切ってしまった。その上ムツキは上限が桁違い過ぎて、自然回復を待っている余裕がなくて命の危険があったから───」
「───ああ、それで夕べのセックスアレに繋がった訳か。……なるほど」

アレは手っ取り早く安全に魔力を譲渡して回復させる手段だったわけだ。
つまり単なる医療行為ってことで……。何だ、そういうことか。

「何を思ってるのか何となく分かるが。精を注ぐのだって魔力の相性があって、拒否反応で具合が悪くなったり不快感や嫌悪感も出る場合があるんだぞ」
「───えっ!? 誰でもいいんじゃないのか!?」

ミリィが眉にしわを寄せてものすごく不本意そうな声で付け足す。
それを聞いた俺は思わず叫んでいた。

「そんなわけあるか。誰にでもするわけないだろう。愛あればこその行為だ。今までもないけど、コレから一生ムツキ以外にはしないよ」

そう言うミリィのあとに、それまで黙って聞いていたナツメが顔を赤くして話しかけてきた。

「……あの、ムツキはミリオネア様とは、その……拒否とか拒絶とか、大丈夫だったんでしょ?」
「え? そりゃあ、別に何とも……。何ならとても気持ちい───って違う! 今のなし!」

思わず口が滑った。恥ずかしい!

「それだよ、それ! 相性がよすぎると感じやすくて僕も……その、凄いんだよね───エッチアレが」
「……え、ええええ!? マジ!?」
「……マジ」

いくらこの五人プラス近衛騎士しかいないとはいえ、お互いの赤裸々な性生活の暴露に俺とナツメは羞恥でゆでだこ状態になったのだった。

反対に超冷静なミリィとササナギは優雅にお茶を口にしているし、ティメール師団長は和やかに俺たちの魔力の相性具合をたぶんノートにメモしてた。

近衛騎士は空気になって───いや生暖かい目で見ていたと思う。

「はいはい。独身の私にはとても耳に痛くて興味深い内容ですが、進まないのでココで仕切り直しましょう!」
「お前が言うな」
「話の進行を足止めした張本人だろうに」

ティメール師団長がノートを閉じて朗らかにそう言うとササナギとミリィがそうツッコミを入れた。

俺とナツメもハッとして、一度落ち着こうとお茶を飲む。

「まあまあ。それじゃあ次行きましょうか」

何とも言えない空気の中、全く気にした様子のないティメール師団長が手を打ってそう言った。

……この人、鋼の心臓の持ち主か、それともマイペース過ぎるのか。
ミリィ達もあまり気にしていないようだから俺も慣れないといけないのか……慣れるかな?

















*何とか今日は更新出来ましたが、コレから年末年始はたぶん不定期になります。他の作品もコミで。





しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

異世界から戻ってきた俺の身体が可笑しい

海林檎
BL
異世界転生で何故か勇者でも剣士でもましてや賢者でもなく【鞘】と、言う職業につかされたんだが まぁ、色々と省略する。 察してくれた読者なら俺の職業の事は分かってくれるはずだ。 まぁ、そんなこんなで世界が平和になったから異世界から現代に戻ってきたはずなのにだ 俺の身体が変なままなのはどぼじで??

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

聖獣は黒髪の青年に愛を誓う

午後野つばな
BL
稀覯本店で働くセスは、孤独な日々を送っていた。 ある日、鳥に襲われていた仔犬を助け、アシュリーと名づける。 だが、アシュリーただの犬ではなく、稀少とされる獣人の子どもだった。 全身で自分への愛情を表現するアシュリーとの日々は、灰色だったセスの日々を変える。 やがてトーマスと名乗る旅人の出現をきっかけに、アシュリーは美しい青年の姿へと変化するが……。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

「君を一生愛すから」って言ってたのに捨てられた

豆子
BL
女神の加護を持つ国フィアラテールに齡十六で神子として召喚され、女神から授かった浄化の力で各地の魔物を倒し、瘴気で汚れた土地を蘇らせ、世界に平和と安寧をもたらし、ついでに共に戦った王子と文字に起こすと辞書並みの厚さになるラブストーリーを繰り広げ、永遠の愛を誓ってから二十年後「俺と別れて欲しい」とあっさりすっぱり捨てられたところから始まる話。 恋人の王子に捨てられたおっさん神子が長年の従者と第二の人生を歩む話です。 無表情獣人従者×三十路の神子

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?

処理中です...