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19 対策会議 2
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「───やはり譲渡でも表面からでは付加されませんね」
「……コレはいよいよもって拉致監禁の末の隷属魔法で凌辱決定だな」
「ササナギ! その言い方、止めてくれる!?」
物騒すぎるよ!
「いや、これくらい自覚しないと本当に危険だからね」
「ミリィも!?」
「ムツキ、冗談じゃないよ。そうなりたくなかったら、しっかり自覚して。じゃないと護る側も護りきれない」
「……ナツメ……。うん。皆が言うように危険なんだということを肝に銘ずるよ」
またあんな奴隷生活になんか戻りたくないし、何より───。
「ミリィ以外とあんなことしたくない」
「───ッムツキ! 必ず護るからな」
「うん。頼りにしてる。…………アレ、そういえば……」
「───? ムツキ? どうした……?」
ミリィ以外とセックスなんて冗談じゃないと思ったら、ふと一年前の転移直後のことを思い出した。
「いや、凌辱で思い出したんだけど、最初に奴隷にされたときにアイツら俺を性奴隷にしようとしてたらしいんだけど」
「───は?」
ミリィをはじめ部屋にいた全員の顔が強ばったが、俺は構わずに話を続けた。
「えっとね、確か……出来なかったんだって言ってた。えーと……貞操を護る魔法が? 常時発動してて手が出せないとか? それってどういう───」
「───っ!? ソレは本当か!? 今までよくそういう奴隷にされなかったと思ったが、まさかそういうことだったのか……」
俺の言葉にかぶせ気味にミリィが叫んで、それをきいていたササナギ達も驚きつつもホッとした。
「なるほど。ミリオネア以外には手が出せないということか。コレは僥倖だ。問題が一つ減ったぞ」
「よかったね、ムツキ!」
「……ええと、何が何だか分からないんだけど?」
皆は訳知り顔でうんうんと納得してるけど俺には意味不明なんだが?
疑問符を浮かべまくる俺に気付いたティメール師団長が苦笑して教えてくれた。
「すみません、ムツキ様。ソレは簡単に言うと本人の意思を無視した挿入が出来ない、つまり無理やり犯される心配がない魔法なんです」
「……はあ」
そんな魔法があるんだ?
さすが異世界としか言い様がないが、そういえば貴族なんかは純潔を重んじるらしいからそういう魔法も普通なのかもしれない。
「まあ普通はそういう魔法陣を書き込んだ魔導具を身につけるんですけどね」
私は身に付けていませんが装飾品に紛れさせて分からないようにね、と言う師団長。
確かにバレて奪われたら意味ないもんな。
「あとはその場その場で一定時間効果のあるその魔法をかけるんです。継続するには魔力もそれなりに消費するので自力で常時発動なんて普通はしません」
確かに使えば魔力は減るもんな。それをずっと一日中、ましてや何日もなんて魔力が保たないだろう。
「……でも、俺は常時発動してるってことでしょ? それも最初から。魔法なんて魔力が底辺で使えないって言われたのになぜ?」
そう思ったことを聞けば、師団長は頷いて言った。
「ですのでコレは神からの祝福ではないでしょうか? ムツキ様はこういう閨行為に何か思い入れがあったりします?」
「あー……、初めては好きな人とって、子供の頃からずっと思ってた───」
「それででしょうね。そして殿下と結ばれたなら、もう殿下以外には手出しできないのでしょう。神の祝福ならば、邪な心を持ってムツキ様に触れようものなら天罰が下りそうですよね」
ふふふ……と楽しそうに笑うティメール師団長に、まさか実験する気じゃないだろうなと俺は気が気じゃなかった。
それに気付いたミリィが俺を抱き寄せつつ師団長に牽制で睨みを効かせる。師団長は肩をすくめて苦笑した。
でもたぶんあの人諦めないよね。魔法バカ? オタクっぽいし。
それはともかく仕切り直して、ミリィが言った。
「偶然知ったこととはいえ、これでそれ以外のことに注力出来そうだ」
「───ということで、まずはこの特異性を外部に漏らさないことと、ムツキ様の魔力の回復、あとは常識とかの勉強に魔法を使う練習も必要ですね」
ティメール師団長がキリッとして真面目に話す。さっきとの対比が……違和感が凄いな。
ミリィは師団長に頷く。
「勉強云々はムツキの体調を見て決めよう。あとは警護の見直しだな」
そう言って俺をチラッと見るミリィにさっきの出来事を思い出す。
「ああ、昼間の襲撃の件? そういえば俺が忍び込んだ事案って、何か俺が特殊だったからってミリィ言ってなかった?」
俺が襲撃事件につられて思い出したことを言えばハッとするミリィ。
「───あ、忘れてた。先の事案が衝撃的すぎて。ティメール師団長、説明を頼む」
そう言うと師団長もあっと言う顔になって言った。
「え? ああ、はい。ムツキ様が王太子殿下の私室に忍び込んでた件ですね。アレはですね、ムツキ様が闇の属性を持っていたおかげですね」
「……そうなのか?」
「ええ。闇って言うくらいなので隠密系の魔法が得意なんですよね。まあムツキ様の場合は魔法じゃなくて技術なんですけど」
「……スキル?」
「はい。昨日の鑑定で出てました。暗殺技術を磨いてたとのことですが、そのおかげで隠蔽と隠密と気配隠滅、気配察知、認識阻害等など、普通こんなにスキル生えませんよ」
「……はあ、まあ、生き残るのに必死だったから。……いや違うな。これ以上隷属魔法の苦痛を味わいたくなくて必死だったんだっけ」
思わずぼそりと溢れた俺の言葉に部屋の空気が重くなって、俺はハッとして笑顔を作った。
「あ、ごめんね。今は全然そんなことないし、ほら、そのおかげで刺客を返り討ち出来たんだし。結果オーライだよ」
そう言ったらミリィがギュッと抱きしめてくれた。
強がりだってバレてる。
何も言わないけど、ミリィの気持ちが伝わってくる。
───うん。あとで、二人きりになったら、思い切り泣かせて貰おう。
きっと今ならあの辛い日々を涙で洗い流せそう。
「……コレはいよいよもって拉致監禁の末の隷属魔法で凌辱決定だな」
「ササナギ! その言い方、止めてくれる!?」
物騒すぎるよ!
「いや、これくらい自覚しないと本当に危険だからね」
「ミリィも!?」
「ムツキ、冗談じゃないよ。そうなりたくなかったら、しっかり自覚して。じゃないと護る側も護りきれない」
「……ナツメ……。うん。皆が言うように危険なんだということを肝に銘ずるよ」
またあんな奴隷生活になんか戻りたくないし、何より───。
「ミリィ以外とあんなことしたくない」
「───ッムツキ! 必ず護るからな」
「うん。頼りにしてる。…………アレ、そういえば……」
「───? ムツキ? どうした……?」
ミリィ以外とセックスなんて冗談じゃないと思ったら、ふと一年前の転移直後のことを思い出した。
「いや、凌辱で思い出したんだけど、最初に奴隷にされたときにアイツら俺を性奴隷にしようとしてたらしいんだけど」
「───は?」
ミリィをはじめ部屋にいた全員の顔が強ばったが、俺は構わずに話を続けた。
「えっとね、確か……出来なかったんだって言ってた。えーと……貞操を護る魔法が? 常時発動してて手が出せないとか? それってどういう───」
「───っ!? ソレは本当か!? 今までよくそういう奴隷にされなかったと思ったが、まさかそういうことだったのか……」
俺の言葉にかぶせ気味にミリィが叫んで、それをきいていたササナギ達も驚きつつもホッとした。
「なるほど。ミリオネア以外には手が出せないということか。コレは僥倖だ。問題が一つ減ったぞ」
「よかったね、ムツキ!」
「……ええと、何が何だか分からないんだけど?」
皆は訳知り顔でうんうんと納得してるけど俺には意味不明なんだが?
疑問符を浮かべまくる俺に気付いたティメール師団長が苦笑して教えてくれた。
「すみません、ムツキ様。ソレは簡単に言うと本人の意思を無視した挿入が出来ない、つまり無理やり犯される心配がない魔法なんです」
「……はあ」
そんな魔法があるんだ?
さすが異世界としか言い様がないが、そういえば貴族なんかは純潔を重んじるらしいからそういう魔法も普通なのかもしれない。
「まあ普通はそういう魔法陣を書き込んだ魔導具を身につけるんですけどね」
私は身に付けていませんが装飾品に紛れさせて分からないようにね、と言う師団長。
確かにバレて奪われたら意味ないもんな。
「あとはその場その場で一定時間効果のあるその魔法をかけるんです。継続するには魔力もそれなりに消費するので自力で常時発動なんて普通はしません」
確かに使えば魔力は減るもんな。それをずっと一日中、ましてや何日もなんて魔力が保たないだろう。
「……でも、俺は常時発動してるってことでしょ? それも最初から。魔法なんて魔力が底辺で使えないって言われたのになぜ?」
そう思ったことを聞けば、師団長は頷いて言った。
「ですのでコレは神からの祝福ではないでしょうか? ムツキ様はこういう閨行為に何か思い入れがあったりします?」
「あー……、初めては好きな人とって、子供の頃からずっと思ってた───」
「それででしょうね。そして殿下と結ばれたなら、もう殿下以外には手出しできないのでしょう。神の祝福ならば、邪な心を持ってムツキ様に触れようものなら天罰が下りそうですよね」
ふふふ……と楽しそうに笑うティメール師団長に、まさか実験する気じゃないだろうなと俺は気が気じゃなかった。
それに気付いたミリィが俺を抱き寄せつつ師団長に牽制で睨みを効かせる。師団長は肩をすくめて苦笑した。
でもたぶんあの人諦めないよね。魔法バカ? オタクっぽいし。
それはともかく仕切り直して、ミリィが言った。
「偶然知ったこととはいえ、これでそれ以外のことに注力出来そうだ」
「───ということで、まずはこの特異性を外部に漏らさないことと、ムツキ様の魔力の回復、あとは常識とかの勉強に魔法を使う練習も必要ですね」
ティメール師団長がキリッとして真面目に話す。さっきとの対比が……違和感が凄いな。
ミリィは師団長に頷く。
「勉強云々はムツキの体調を見て決めよう。あとは警護の見直しだな」
そう言って俺をチラッと見るミリィにさっきの出来事を思い出す。
「ああ、昼間の襲撃の件? そういえば俺が忍び込んだ事案って、何か俺が特殊だったからってミリィ言ってなかった?」
俺が襲撃事件につられて思い出したことを言えばハッとするミリィ。
「───あ、忘れてた。先の事案が衝撃的すぎて。ティメール師団長、説明を頼む」
そう言うと師団長もあっと言う顔になって言った。
「え? ああ、はい。ムツキ様が王太子殿下の私室に忍び込んでた件ですね。アレはですね、ムツキ様が闇の属性を持っていたおかげですね」
「……そうなのか?」
「ええ。闇って言うくらいなので隠密系の魔法が得意なんですよね。まあムツキ様の場合は魔法じゃなくて技術なんですけど」
「……スキル?」
「はい。昨日の鑑定で出てました。暗殺技術を磨いてたとのことですが、そのおかげで隠蔽と隠密と気配隠滅、気配察知、認識阻害等など、普通こんなにスキル生えませんよ」
「……はあ、まあ、生き残るのに必死だったから。……いや違うな。これ以上隷属魔法の苦痛を味わいたくなくて必死だったんだっけ」
思わずぼそりと溢れた俺の言葉に部屋の空気が重くなって、俺はハッとして笑顔を作った。
「あ、ごめんね。今は全然そんなことないし、ほら、そのおかげで刺客を返り討ち出来たんだし。結果オーライだよ」
そう言ったらミリィがギュッと抱きしめてくれた。
強がりだってバレてる。
何も言わないけど、ミリィの気持ちが伝わってくる。
───うん。あとで、二人きりになったら、思い切り泣かせて貰おう。
きっと今ならあの辛い日々を涙で洗い流せそう。
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