【完結】水と夢の中の太陽

エウラ

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第一章 フォレスター編

馬車に乗る・・・馬車?

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朝早く目が覚めた。

夕べは夢も見ずにぐっすりと、秒で寝落ちした。前日があんなん(夢に神様が~のくだり)で、寝た気がしなかったしな。

興奮してて眠れないと思ってたけど、思ったよりも疲れてたんだな、俺。

そしてクラビスよ。安定のキラキラスマイル。しかし寝起きの気怠さが色気を醸し出す。鼻血出そう。ヤベえ。

朝から色々と削られた俺は、クラビスの羨まけしからん裸体(何故かパンイチだった)を横目に、いつの間にか用意されてた旅人の服(笑)一式を身に纏った。

黒いぴっちりしたパンツに立ち襟の白いシャツ。黒いベストに、踝より上の長さの黒いショートブーツ。最後に膝丈の黒いフードコート。シャツ以外黒いな。

【アルカスは旅人の服を手に入れた!】

・・・ネタが分かるヤツはここにはいないので、心の中に留めておく。

準備が整ったので、一階の食堂へ移動。朝御飯は何かな?

ウキウキと降りていくと、三人は既に席に着いていた。
「おはようございます」
「おはよう」
「食べながら話そうか」

お母さんの隣に座ると、従業員さんが朝御飯を並べ始まった。パンに卵、スープにサラダ。ベーコンもある。
大皿に盛られたそれを各々好きなだけ皿に盛って。

「いただきます」

うまっ! 昨日も思ったけど、料理美味しい。
黙々と消費していると、お母さんが声をかけてきた。

「よく眠れたようだな。体の不調はないか?」
んぐっと、飲み込んでから答える。
「お陰様でぐっすりと。夢も見なかったです」
「そうか。ところで、家族なのだから我らに敬語は不要だ。普通に話してくれ。・・・まあ、いきなり家族と言われても難しいだろうが」
「ううん、えーと、クラビスにも言ったけど、向こうでは孤児で平民だったんで、堅いのは苦手で。その方が助かるかな」

皆の呼称も普通でいいのかな?と少し考えて、
「皆の呼び方も、その、母さんとか兄さんとかでいいかな?」

そう言ったら、マールさんが
「私のことはぜひ『お義姉ちゃん』と!」
って言ってきて、それを聞いたクロウ兄さんが
「じゃあ『お兄ちゃん』で!!」
と言ってきたが、うん、ちょっと、この歳でちゃん付けは恥ずかしい。

躊躇っていると。

「・・・ダメか?」
おおう、ソレはズルい。大型犬が耳と尻尾を垂らして、シュンとしている。ように見える。負けた・・・。

「母さん、ぉ、お兄ちゃん、お義姉ちゃん?」
うおおおお!! 恥ずかしい、恥ずかしいけど。

皆が喜んでくれてるから、いいかな。

・・・なんか宿の従業員さんにも生温かい目で見られた。何で?



そんなこんなで、朝食を食べ終えた3人は、早々に宿を立っていった。
「ではな。先に行って邸を整えておく。お前達はゆっくりでいいからな。道中気を付けてな。クラビス、頼んだぞ!」
「しっかりお守り致します」
「また後で。気を付けて」
「皆で待ってるよ」

そうして、厩で馬を引き取って跨がり、颯爽と駆けていった。



・・・・・・馬?

いやいや、見間違い。馬って言ってたし。

え? 馬だよな?

思わず目を擦る。

「? どうかした?」
「ううん、何でもない」
クラビスが訝しげにしていたが、気のせいと思うことにした。フラグなんて立ってない。立ってないったら!



人はソレを『フラグ』と言う。




・・・・・・・・・




・・・・・・はい。フラグ回収。しっかり立ててました。

ちょっと街中をぶらぶらして、店を冷やかして、ギルマスに挨拶して。
じゃあ馬車で帰ろうと言って、クラビスと馬車乗り場に来た。

うん。

馬だけど馬じゃない。

---俺の知ってる馬じゃなかったんだよ~~!!

言葉こそ『馬』だが、どう見ても猫。デカい猫。何で『猫』じゃないの?!

気にしてなかったけど、異世界言語翻訳(笑)仕事してくれ!
えっ?! 仕事してコレ?!
おおう・・・勘弁してくれ・・・。

「・・・・・・」
一人で脳内にツッコミを入れていて言葉にならずにあんぐりと口を開いたままの俺に、クラビスが、ハッとした。

「もしかして、馬を見たのは初めてか?」

いや確かに、昨日の今日で当然そんなもん見てないが。

日本では普通にテレビで見たが。
なんなら遠足のふれあい動物園でポニーにも乗ったが。

違う、違うんだよクラビス。俺の知ってる馬は牧場をパカパカ走るヤツで、間違っても猫じゃあないんだよ!



こ ん な デカい猫じゃあないんだよおぉ・・・・・・。

ああ。もふりがいがあって気持ちよさそう・・・。

・・・って。はっ!!

思考が飛んでる間に、馬車に乗っていて、クラビスの膝の上だった。バックハグ再び。

「歳の離れた兄弟かい?」
なんて、乗り合わせたおっちゃんが微笑ましそうに聞いてくる。
悪気がないのは分かってる。分かってるけど!
「・・・・・・」
クラビスの胸元にぐりぐり額を擦り付けて(デジャブ)無言を貫いた。どうせ見た目ガキだよ!

「人見知りで」
すみません、とクラビスが誤魔化してくれたが、ただ今テンションだだ下がり中の俺はムスッとしてひたすらクラビスをぎゅっとしてた。

安定感抜群の膝の上で、心地よい揺れで、クラビスの腕の中が暖かくて。

俺はいつの間にか寝てたらしい。クラビスに揺り起こされて目が覚めた。
抱っここそされなかったけど、拗ねた子供か!

恥ずかしい! そして、生温かい目で俺を見るな! そこのおっちゃんもな!!

「大丈夫。寝顔、可愛かったよ」
なんてクラビスが耳元で囁くから、恥ずかしさもあって、メッチャ顔が熱い! ヤメロ!

せっかくの馬車の旅だったのに、景色を見ることもなく、もう間もなく到着らしい。ちぇ、と周りに目を向けると、大きな森や林が目立つ。

「領主館の奥に見える山は、隣国との国境で、手前に辺境伯領がある。貿易など友好関係にある。互いに王族の輿入れをしていて、特に問題はないから、安心していい」

その情報、あざっす! やっぱ、スローライフには平和が一番!


・・・・・・スローライフ出来るといいなあ。
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