【完結】水と夢の中の太陽

エウラ

文字の大きさ
16 / 90
第一章 フォレスター編

ちょっとソコまで その1

しおりを挟む
早いもので、先生たちに色々教わりながら2週間程経った。

相変わらず、日に何度も寝落ちして、酷いときには丸一日寝ていることもある。
魔力の循環はうまくいってる、らしい。
最初にクラビスに魔力を流して貰ったように魔力を感じて血液が体を流れるイメージ。

ただ、俺の魔力が常に欠乏状態なので、自分で上手く感じ取れてない。極々少しで、中々増えないんだとか。異世界育ちの弊害。
「大丈夫。少ないだけでちゃんと循環してる」
とフェイが教えてくれるから、大丈夫なんだろう。

でも循環しても増えるわけではないので、魔力を回復する飲み物とか食べ物をとって少しづつ増やしているが、雀の涙状態。

「近いうちに冒険者ギルドに行ってみようか? グラキス様に聞いてみて許可が下りたらね」
クラビスが提案してくれた。

何故に?

クラビスによると、そもそも初級(F)は、3ヶ月間依頼を受けないとカードを取り消されてしまうそうだ。まあ身分証代わりに作っただけではギルドも損をしてしまうし。
常時依頼の薬草採取や街中の雑用などがほとんどだから、大抵の冒険者は3ヶ月も受けないなんてことはないけど、俺はね?ちょっと特殊だったから。

肉体的にも精神的にも落ち着いたらって事で、そういうのは保留だったんだ。
でもフェイが言うには、戦闘でレベルを上げたら魔力の馴染みが早いかもしれないと。
「確かに肉体は強化されるから魔力に耐えられるようになるかもね。そもそも子供は少しずつレベルを上げながら育つから」

うん。俺は子供レベル以下なんだね。
ていうか、レベルって概念あったんだ?
もういっそ赤ちゃんからやり直したい。
いやでもそれじゃクラビスの嫁にはなれないか。

・・・もうすんなり自分が嫁なことに慣れたぜ!(諦めたともいう)

まあ、とりあえず定番のスライムかな?!
「いや、スライムは割と強いよ? 物理攻撃通りにくいし、種類によっては酸や腐蝕液を出すし、麻痺もある」

な、なんですと?!

某RPG仕様ではなかったようです。おおう・・・。
定番はゴブリンやホーンラビットだとか。こっちはラノベあるあるだな。似通ってて助かるけど。



そんなわけで、許可が下りました!
もちろんクラビスとフェイ付きだよ。万が一があったら大変と、二人の同行が条件でした。
俺も異論はない。だって魔物の討伐以前にいつ寝落ちするかって方が怖い。

一人で行って、寝落ちしている間に昇天なんてシャレになんねえ!

で、本日の装いは冒険者仕様。

いつ用意したのか、シャツは水色、パンツはピッチリの黒で、黒のショートブーツは縁取りに水色。革の胸当てに革の手袋。
革のポーチを腰に巻く。異空間収納バッグ、ラノベあるあるなマジックバッグですな。
小さいけどめっちゃ容量デカいらしい。聞いてみたら、25メートルのプールが3個くらいは入るらしい。ひええってなった。
これでも小さい方って・・・。

え? フェイが作った? 手頃な鞄に空間魔法をかける? へえ、空間魔法使えるんだ。凄いな!

なんて、尊敬の眼差しでフェイを見たら、相当キラキラしい瞳だったらしく、珍しく照れていた。

儚げ美人のデレ頂きました。ご馳走様です!!
・・・胡乱な目で見るなクラビス。鑑賞用ですって。他意はない。

最後に、腰にナイフを差し、黒地に裾に細かい水色の刺繍の入ったポンチョ型のショートコートを羽織って、おけおけ!

【アルカスは冒険者装備を手に入れた!】

・・・ネタが分かるヤツ・・・(以下略)。

「差し色が俺の瞳の色なんだ」
クラビスに言われて気付く。途端にかあっと頬が赤くなった。

「ケッ。リア充爆発しろ」

ぽそっとフェイが呟いて、ハッと気付く。み、皆いたあ---!!

ヤバい気を付けよう!
使用人達もその目をヤメテ!!

出かける前に気力が減ったよ。



さて、常時依頼は受付を通さず、現物持って後で受付に行くんだって。おけ!
街の西門から外に出た先にある平原が主に初心者の狩り場とのこと。なので必然的に西門へ辿り着くんだけど。

「お、なんだ? 珍しい組み合わせだな」

門衛さんに声をかけられた。いや、俺にじゃないけど。
「その先の初心者用の平原にね。彼を連れて」
「へえ? ずいぶんちっこいが、冒険者なのか? どう見ても未成年の子守にしか見えんが」

・・・・・・このくだりまだやんのか。

クラビスとフェイが肩を震わせている。
俺は死んだ魚の目で、首に下げてたギルドカードを掲げて・・・

「アルカス・フォレスター、19才。クラビスの『嫁』でっす!!」

門衛さんは固まり、クラビスとフェイは噴いた。
そりゃあモノの見事に。
見本のような噴きっぷりで大笑いしていた。

詰め所にいた他の門衛さんもなんだなんだと出てきて唖然とした。
大笑いの高ランクの二人にブスッとした顔の子供のような俺。



---門衛さんは考えた。
この子、よく見れば黒髪にエメラルドグリーンの瞳で、あれ?
さっきなんて言った?

『アルカス・フォレスター、19才。クラビスの『嫁』でっす!』

・・・・・・アルカス・フォレスター??

「アルカス様??!」
固まった門衛さん復活。そして初めましてな反応、あざす!
「そう! おじさんいい人! 俺の歳より名前に反応ありがとうございます!」

ソコ、更に噴くな!
「いい人判定がソコって・・・・・・!」
「騙されそうで目が離せないっ、クッ!」
俺はお菓子に釣られる子供じゃねえ!

このカオスは暫く続き、ゆうに10分は笑い続けた二人に腹パンをお見舞いしてヤッタが、俺の手のダメージのみだったことをここに記しておこう。

くっそ硬かったわ。







しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ
BL
 神の家でステンドグラスを作っていた俺は地上に落とされた。俺の出来る事は硝子細工だけなのに。  硝子じゃお腹も膨れない!硝子じゃ魔物は倒せない!どうする、俺?!  設定はふんわりしております。 少し痛々しい。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

世界が僕に優しくなったなら、

熾ジット
BL
「僕に番なんていない。僕を愛してくれる人なんて――いないんだよ」 一方的な番解消により、体をおかしくしてしまったオメガである主人公・湖川遥(こがわはる)。 フェロモンが安定しない体なため、一人で引きこもる日々を送っていたが、ある日、見たことのない場所――どこかの森で目を覚ます。 森の中で男に捕まってしまった遥は、男の欲のはけ口になるものの、男に拾われ、衣食住を与えられる。目を覚ました場所が異世界であると知り、行き場がない遥は男と共に生活することになった。 出会いは最悪だったにも関わらず、一緒に暮らしていると、次第に彼への見方が変わっていき……。 クズ男×愛されたがりの異世界BLストーリー。 【この小説は小説家になろうにも投稿しています】

【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる

おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。 知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。

異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない

春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。 路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。 「――僕を見てほしいんです」 奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。 愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。 金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

処理中です...