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第一章 フォレスター編
比翼連理
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「じゃあ、今は解放しても大丈夫という事でしょうか」
クラビスが俺を後ろからギュッとして聞く。
《うん。だから呼んだんだ。ただ、反動でまた倒れると思うから、よろしくね。次に目が覚めたら魔力は回復してるはずだよ。聞きたいことがあれば今のうちに聞いて?》
まあ、何かあればアルカスに呼んでもらってもいいから、って。
あんまり会えないんじゃなかったんですか?!
《やだなあ。私の加護を持ってるんだからアルカスが願えば会えるよ? 今までは忘れてたんでしょ?》
・・・スミマセン! もう許して下さい!!
父さんが挙手をして、聞いた。
「あの、一つよろしいでしょうか?」
《なんだい?》
「アルカスの称号に『クラビスの嫁』とあったのですが、あれは一体・・・?」
え? やっぱりヘンなことなの?
《ああ、あれは、特別。普通の人にはないよ。龍人や獣人と違って人族は番というモノがないから、アルカスとクラビスには番のようになって幸せになって欲しくて》
ソレって・・・・・・つまりは。
「比翼連理・・・」
「何?」
「天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝とならん。仲睦まじい夫婦を表す言葉だよ。死ぬまで一緒。愛してるって事」
言ってからカーッと顔が熱くなった。
うわーうわーっ!!
「熱烈なアルカスからの告白だな。嬉しい。俺も死んでも一緒。愛してる」
ギュッとされて苦しいけど嬉しい。
そんなこと思う俺も末期だな。
「ゴホン」
父さん達が大袈裟に咳をした。
ハッとする。やべえ。
《ふふ、じゃあ、とりあえず、解放するから、アルカスは暫く眠るだろうけど心配しないで》
そう言って俺の胸に手を当てて、体がほわっとしたと思ったら、急速に意識が遠退いた。
《お休み》
またね。ありがとう。
声にはならなかったが、心は読んだはず。
そう思いながら、眠りについた。
そうして、俺が眠りについたタイミングで元の部屋に戻ってきたようだ。
その後の事は、意識のない俺には分からない。
-----
あの後、神託を受ける部屋から護衛達が待つ部屋へと移動した。
時間はほとんど経っていないようだった。神域では時間の流れが違うようだ。
移動中、誰も、ひと言も話さなかった。
クラビスは愛おしそうにアルカスを抱きしめている。
ソレを見てフェイが呆れたような、ホッとしたような顔をしている。
ウィステリアは、好々爺な感じで見守り、司教他フォレスター家の面々は半ば呆然としながら、歩みを進めた。
護衛達が待つ部屋へと辿り着いた後、出されたお茶を飲んでひと息つくと。
「・・・まさしく奇跡ですな・・・」
司教が恍惚とした顔で呟いた。
「長年神に仕えておりますが、ご尊顔を拝謁する事になろうとは・・・」
「我々も全くの同感です。これは予想の範囲外でした」
イグニスも深く溜息を吐きながら話す。
「思ったよりも気さくな方でしたね。エストレラ神」
ウィステリアが朗らかに言う。それに、待機していた護衛達がギョッとした。
「発言をよろしいでしょうか?」
「ああ、なんだい?」
「先程から仰っている話を聞きますと、エストレラ神とお会いになられたように思えるのですが・・・」
「うむ。会った」
「・・・・・・は」
護衛達が固まってしまった。
司教がほうっと溜息を吐きながら、
「畏れ多くも、エストレラ神のご尊顔を拝謁賜った次第で御座いますよ」
「私たち全員、神域へと招かれまして」
とウィステリアが続ける。
「アルカスは魔力欠乏を癒す為、暫く眠る。目が覚めたら回復しているとの事だ。・・・とりあえず、ひと安心だな」
グラキスもホッと一息ついた。
護衛達はやや混乱したが、ひとまずアルカス様は大丈夫という事にホッとして、表面上は冷静を取り繕った、が。
内心は・・・。
(エストレラ神と会ったってどういう事?! 気さくな方って?!)
と大騒ぎであった。
「本日は、実に有意義な事で御座いました。誠にありがとう御座いました」
司教はもう満面の笑みでお礼を述べた。
フォレスター家は苦笑して、
「こちらこそ世話になった」
と礼を述べ、アルカスを休ませるべく、足早に教会を後にした。
クラビスはずっとアルカスを抱き込んで離さず、邸に戻るまで終始ご機嫌だった。
アルカスを部屋に寝かせて、邸の者に事情を説明して、各自自分の仕事に戻っていった。
クラビスは当然のようにアルカスの部屋に篭もり、フェイはウィステリアとアルカスの魔力関係の話で盛り上がる。
一番の問題だった魔力欠乏の件が解決し、皆、アルカスの無事を喜んだのだった。
クラビスが俺を後ろからギュッとして聞く。
《うん。だから呼んだんだ。ただ、反動でまた倒れると思うから、よろしくね。次に目が覚めたら魔力は回復してるはずだよ。聞きたいことがあれば今のうちに聞いて?》
まあ、何かあればアルカスに呼んでもらってもいいから、って。
あんまり会えないんじゃなかったんですか?!
《やだなあ。私の加護を持ってるんだからアルカスが願えば会えるよ? 今までは忘れてたんでしょ?》
・・・スミマセン! もう許して下さい!!
父さんが挙手をして、聞いた。
「あの、一つよろしいでしょうか?」
《なんだい?》
「アルカスの称号に『クラビスの嫁』とあったのですが、あれは一体・・・?」
え? やっぱりヘンなことなの?
《ああ、あれは、特別。普通の人にはないよ。龍人や獣人と違って人族は番というモノがないから、アルカスとクラビスには番のようになって幸せになって欲しくて》
ソレって・・・・・・つまりは。
「比翼連理・・・」
「何?」
「天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝とならん。仲睦まじい夫婦を表す言葉だよ。死ぬまで一緒。愛してるって事」
言ってからカーッと顔が熱くなった。
うわーうわーっ!!
「熱烈なアルカスからの告白だな。嬉しい。俺も死んでも一緒。愛してる」
ギュッとされて苦しいけど嬉しい。
そんなこと思う俺も末期だな。
「ゴホン」
父さん達が大袈裟に咳をした。
ハッとする。やべえ。
《ふふ、じゃあ、とりあえず、解放するから、アルカスは暫く眠るだろうけど心配しないで》
そう言って俺の胸に手を当てて、体がほわっとしたと思ったら、急速に意識が遠退いた。
《お休み》
またね。ありがとう。
声にはならなかったが、心は読んだはず。
そう思いながら、眠りについた。
そうして、俺が眠りについたタイミングで元の部屋に戻ってきたようだ。
その後の事は、意識のない俺には分からない。
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あの後、神託を受ける部屋から護衛達が待つ部屋へと移動した。
時間はほとんど経っていないようだった。神域では時間の流れが違うようだ。
移動中、誰も、ひと言も話さなかった。
クラビスは愛おしそうにアルカスを抱きしめている。
ソレを見てフェイが呆れたような、ホッとしたような顔をしている。
ウィステリアは、好々爺な感じで見守り、司教他フォレスター家の面々は半ば呆然としながら、歩みを進めた。
護衛達が待つ部屋へと辿り着いた後、出されたお茶を飲んでひと息つくと。
「・・・まさしく奇跡ですな・・・」
司教が恍惚とした顔で呟いた。
「長年神に仕えておりますが、ご尊顔を拝謁する事になろうとは・・・」
「我々も全くの同感です。これは予想の範囲外でした」
イグニスも深く溜息を吐きながら話す。
「思ったよりも気さくな方でしたね。エストレラ神」
ウィステリアが朗らかに言う。それに、待機していた護衛達がギョッとした。
「発言をよろしいでしょうか?」
「ああ、なんだい?」
「先程から仰っている話を聞きますと、エストレラ神とお会いになられたように思えるのですが・・・」
「うむ。会った」
「・・・・・・は」
護衛達が固まってしまった。
司教がほうっと溜息を吐きながら、
「畏れ多くも、エストレラ神のご尊顔を拝謁賜った次第で御座いますよ」
「私たち全員、神域へと招かれまして」
とウィステリアが続ける。
「アルカスは魔力欠乏を癒す為、暫く眠る。目が覚めたら回復しているとの事だ。・・・とりあえず、ひと安心だな」
グラキスもホッと一息ついた。
護衛達はやや混乱したが、ひとまずアルカス様は大丈夫という事にホッとして、表面上は冷静を取り繕った、が。
内心は・・・。
(エストレラ神と会ったってどういう事?! 気さくな方って?!)
と大騒ぎであった。
「本日は、実に有意義な事で御座いました。誠にありがとう御座いました」
司教はもう満面の笑みでお礼を述べた。
フォレスター家は苦笑して、
「こちらこそ世話になった」
と礼を述べ、アルカスを休ませるべく、足早に教会を後にした。
クラビスはずっとアルカスを抱き込んで離さず、邸に戻るまで終始ご機嫌だった。
アルカスを部屋に寝かせて、邸の者に事情を説明して、各自自分の仕事に戻っていった。
クラビスは当然のようにアルカスの部屋に篭もり、フェイはウィステリアとアルカスの魔力関係の話で盛り上がる。
一番の問題だった魔力欠乏の件が解決し、皆、アルカスの無事を喜んだのだった。
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