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第一章 フォレスター編
アルカスは非常識の塊 2(sideウィステリア)
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アルカスの魔力が回復した。
魔力の欠乏はなくなった。
代わりにもの凄い量の魔力で、濃密な圧縮されたような状態で、フェイが、暴発でもしようものなら自分では対処しかねると私を頼るのも頷ける。
恐ろしい量の魔力で、私でも抑えるのは難しいだろうな。
というわけで、事前にギルドに連絡をして鍛錬場を貸切にして貰った。
ここイースの冒険者ギルドのマスターはクラビスの叔父のひとり。
こういう時は融通が利いて助かる。
先に、この前のホーンラビットを買い取って貰うそうだ。
ところで、何故サブギルマスがここにいるのだ。暇なのか?
少し腹の探り合いのような感じはあったが、ひとまず鍛錬場へ移動となった。
そこにギルマスがいるのは承知しているが、サブギルマス、何故お前がここにいる。
デジャブだ。
まあいい。アルカスがツッコんでくれたからな。
あちらは放っておいて、どれ、アルカスの魔法はどうかなと、属性の中で無難な水の初級魔法である『ウォーターボール』を提案すると、無詠唱で発動し、尚かつ初級ではない威力でもって、結界に罅を入れた。
・・・うむ。想定内、かな?
威力はまあありそうと思っていたが、のっけから無詠唱・・・。
本人は無詠唱よりも威力に驚いているが、無詠唱の方が凄いからな?
短縮詠唱は頑張れば出来るが、フェイや私くらいにならないと無理だからな?
だからクラビスよ。「無詠唱でいけるだろう」なんて気軽に言うな。
フェイの『アルカスは非常識の塊』が的を射すぎていて怖いわ。
その後の怒涛の展開にギルマス達はついて行けず。
傍観者となってひたすら空気のようだった。
アルカスの提案通りに、少ない魔力消費で転移が出来る。
素晴らしい。
だが、それ故に問題が起こる。
それをアルカスは先に指摘してきた。
当然、私も危惧していた事。
広まれば大いに犯罪に使われるだろうな。そうなると対処がもの凄く大変になる。
城や大貴族などはすでに防犯のため敷地内に転移は出来ないように魔導具が設置してあるが、一般家庭や下級貴族家などには難しいだろう。
ん?
・・・・・・待て。
先程、アルカスは邸内の執務室からクロウを転移で移動させていた。
転移不可な魔導具を設置してあったのだぞ?
転移魔法陣を設置してある場所ではなく、転移不可の範囲内だ。
・・・アルカスは防犯のための魔導具を知らないはず。
これはおそらくアルカスだから出来たのだろうが、後で確認した方が良さそうだ。
ともかく、転移の件はここだけの話にするよう誓約し、邸に戻ることになった。
せっかくだからと、少し街並みを眺めながら帰宅したが、クロウに呼び出され、忘れてた! と、涙目で説教されていた。
その後、さすがに疲れたようで、夕餉も取らずに眠ってしまい、クラビスが早々に寝室に籠もった。
この間の『魔の一週間』を彷彿とさせる空気にいたたまれなくなった。
それはともかく。
クロウとグラキス、マールには今日の出来事を事細かに伝える。時々フェイも補足し、今日のアルカスの異常性を語った。
「アルカスはこちらの世界のことには非常識だが、本来の性質は善良だ。きちんと善悪を判断しておる。まかり間違ってもその力を悪用はせんだろう。が、どこか、そうだの、王家辺りにその力が知られればどう利用されるか・・・」
「そうですね。神の加護があるというだけでも特別視されるでしょうね。もう、アルカスには悪いが、外堀を埋めてガチガチに固めないとマズいですね」
はあーっと深い溜息を吐くグラキスに同意する。
「そもそも、神公認の夫夫なのだから、婚姻させて籍だけでも入れてしまえ。式などは本人達の好きにさせてやればよいではないか」
すでに夫夫同然だろう。
それに称号になっているのだ。よっぽどの馬鹿でもない限り手は出すまい。
神罰が下ろう。
「そうですね。元々そのつもりで準備していましたから。2人に話をしてその方向で進めましょう」
「守りは早く、多い方がいい」
「ですね」
「明日はアレだから、一緒にやってしまおう」
クロウが言う。
「ああ、アレか。クラビスは知っているので?」
フェイが思いついたように聞く。
「内々に進めていたから大丈夫だろう」
アルカスはともかく、クラビスは大賛成だろうな。
しかし、ほんのひと月ほど前からは考えられないくらいに賑やかになったものだ。
あんなに静かだった邸に花が咲いたようで。
悩みは尽きぬが、こんな毎日は悪くない。
魔力の欠乏はなくなった。
代わりにもの凄い量の魔力で、濃密な圧縮されたような状態で、フェイが、暴発でもしようものなら自分では対処しかねると私を頼るのも頷ける。
恐ろしい量の魔力で、私でも抑えるのは難しいだろうな。
というわけで、事前にギルドに連絡をして鍛錬場を貸切にして貰った。
ここイースの冒険者ギルドのマスターはクラビスの叔父のひとり。
こういう時は融通が利いて助かる。
先に、この前のホーンラビットを買い取って貰うそうだ。
ところで、何故サブギルマスがここにいるのだ。暇なのか?
少し腹の探り合いのような感じはあったが、ひとまず鍛錬場へ移動となった。
そこにギルマスがいるのは承知しているが、サブギルマス、何故お前がここにいる。
デジャブだ。
まあいい。アルカスがツッコんでくれたからな。
あちらは放っておいて、どれ、アルカスの魔法はどうかなと、属性の中で無難な水の初級魔法である『ウォーターボール』を提案すると、無詠唱で発動し、尚かつ初級ではない威力でもって、結界に罅を入れた。
・・・うむ。想定内、かな?
威力はまあありそうと思っていたが、のっけから無詠唱・・・。
本人は無詠唱よりも威力に驚いているが、無詠唱の方が凄いからな?
短縮詠唱は頑張れば出来るが、フェイや私くらいにならないと無理だからな?
だからクラビスよ。「無詠唱でいけるだろう」なんて気軽に言うな。
フェイの『アルカスは非常識の塊』が的を射すぎていて怖いわ。
その後の怒涛の展開にギルマス達はついて行けず。
傍観者となってひたすら空気のようだった。
アルカスの提案通りに、少ない魔力消費で転移が出来る。
素晴らしい。
だが、それ故に問題が起こる。
それをアルカスは先に指摘してきた。
当然、私も危惧していた事。
広まれば大いに犯罪に使われるだろうな。そうなると対処がもの凄く大変になる。
城や大貴族などはすでに防犯のため敷地内に転移は出来ないように魔導具が設置してあるが、一般家庭や下級貴族家などには難しいだろう。
ん?
・・・・・・待て。
先程、アルカスは邸内の執務室からクロウを転移で移動させていた。
転移不可な魔導具を設置してあったのだぞ?
転移魔法陣を設置してある場所ではなく、転移不可の範囲内だ。
・・・アルカスは防犯のための魔導具を知らないはず。
これはおそらくアルカスだから出来たのだろうが、後で確認した方が良さそうだ。
ともかく、転移の件はここだけの話にするよう誓約し、邸に戻ることになった。
せっかくだからと、少し街並みを眺めながら帰宅したが、クロウに呼び出され、忘れてた! と、涙目で説教されていた。
その後、さすがに疲れたようで、夕餉も取らずに眠ってしまい、クラビスが早々に寝室に籠もった。
この間の『魔の一週間』を彷彿とさせる空気にいたたまれなくなった。
それはともかく。
クロウとグラキス、マールには今日の出来事を事細かに伝える。時々フェイも補足し、今日のアルカスの異常性を語った。
「アルカスはこちらの世界のことには非常識だが、本来の性質は善良だ。きちんと善悪を判断しておる。まかり間違ってもその力を悪用はせんだろう。が、どこか、そうだの、王家辺りにその力が知られればどう利用されるか・・・」
「そうですね。神の加護があるというだけでも特別視されるでしょうね。もう、アルカスには悪いが、外堀を埋めてガチガチに固めないとマズいですね」
はあーっと深い溜息を吐くグラキスに同意する。
「そもそも、神公認の夫夫なのだから、婚姻させて籍だけでも入れてしまえ。式などは本人達の好きにさせてやればよいではないか」
すでに夫夫同然だろう。
それに称号になっているのだ。よっぽどの馬鹿でもない限り手は出すまい。
神罰が下ろう。
「そうですね。元々そのつもりで準備していましたから。2人に話をしてその方向で進めましょう」
「守りは早く、多い方がいい」
「ですね」
「明日はアレだから、一緒にやってしまおう」
クロウが言う。
「ああ、アレか。クラビスは知っているので?」
フェイが思いついたように聞く。
「内々に進めていたから大丈夫だろう」
アルカスはともかく、クラビスは大賛成だろうな。
しかし、ほんのひと月ほど前からは考えられないくらいに賑やかになったものだ。
あんなに静かだった邸に花が咲いたようで。
悩みは尽きぬが、こんな毎日は悪くない。
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