【完結】水と夢の中の太陽

エウラ

文字の大きさ
49 / 90
第二章 王都編

そして黒歴史は繰り返される

しおりを挟む
ようやく笑いの収まった二人の案内で、比較的弱い魔物を探す。

この辺りもフォレスター領とさほど変わらないようで、王都近郊はゴブリンとかホーンラビットなどの弱い魔物が多く、森の中にはウルフ系やベア系などが多いそうだ。

「だから森の奥に行かなければアルカスのレベルでも割と平気」
「なるほどねえ。じゃあ、今回もホーンラビットとか?」
「うん。いたらね。そういえば前回は魔物を殺した時にショック受けなかったな」

クラビスが思い出したように言った。

「ああ、うん。なんか加護で状態異常無効化があったろ? そのお陰か、全く動揺しなくて、逆に違和感満載だった」

そう言って苦笑した。
思い出したらあの時の体の痛みも思い出してしまい、ちょっと顔をしかめてしまったが。


そんな話をしていたら再び繰り返される喜劇(笑)。

駆け出し冒険者じゃあなかったけど、お色気ムンムンのお姉さん二人が声をかけてきた。

「ちょっとソコのお兄さん達ぃ、そんな子供のお守りじゃなくてアタシ達にしなぁい?」

自分の体によっぽど自信があるのか、いわゆるビキニアーマーである。
アレだ。ボン・キュッ・ボンなヤツ。
しかしいつも思うが、これでどうやって防御してるんだろうか?

「半分は見映えで、半分は魔法付与で防御結界を付けてるから、お腹を蹴られても結構防御出来るんだよ」

フェイが教えてくれた。ふむふむ、自前の腹筋ではなく、魔法で防御してると。
チラッとクラビスを見る。ニコッとされた。フェイを見る。コッチもニコッと首を傾げた。

・・・・・・二人は(フェイは自己申告)カチカチのシックスパックだったな。

・・・・・・

「俺もシックスパック目指そう」
「何でそうなるかな?!」
「アルカスはそのままが抱き心地がいいから不要だ」
「うわっ、真顔で言ったよ、こいつ。あーもーイヤだこいつら! いちゃいちゃは他所でやれ!」
「ーーーちょっと! アタシらを無視して何騒いでんのよ!」
「そんなお子ちゃまよりアタシの方が抱き心地いいに決まってんでしょ!!」

おっと、忘れてた。
めっちゃ鬼の形相のお姉さん達。

「何を言ってる。アルカスに決まってるだろう。それとも俺の嫁に文句があるのか」
「はあ?! こんなガキが嫁の訳ない、じゃ・・・・・・っ」
「あーあ、クラビスの地雷踏んだなあ。アルカスの事を否定されるの、一番やだもんなぁ」

クラビスが、例の威圧を出してるらしい。
お姉さん達、腰を抜かしてる。
でも同情はしないよ。
俺だって腹は立つ。

「ね、これ知ってるよね? 自分も持ってるもんね。これに載ってる事は誤魔化しが効かないんだよね?」
「・・・・・・っ」

カクカク頷き、俺のギルドカードを見た二人は真っ青な顔で呆然とした。

「俺、大人。だから結婚もしてる」

そう言って、クラビスとお揃いの腕輪を見せた。耳にも揃いのイヤーカフ。

「そういうことだからそこら辺よく確認してから声かけなよ。二度はないよ。俺、とーっても怒ってるからね」

そう言って真顔で俺も威圧っぽいのを出してみたら、お姉さん達がひいいっと言って気絶した。あれ?

「・・・・・・コレ、どーすんの?」
「ほっとけばいい」
「自業自得」
「・・・まあ、二人がそう言うなら・・・?」

周りにいたヤジ冒険者が回収してくれるんだろう。俺も知らん。

それより魔物狩り!



その場を離れた3人を見送ってから、そっと息を吐く野次馬達。

たまたま居合わせただけだが、イイ男とみると途端に擦り寄るあの女冒険者達がまたターゲットを見つけたと、皆、興味深々だった。

ほとんどのヤツが『またやってるよ』と半ば呆れている中、俺を含め一部のヤツらは知っていた。
アレはSランクのクラビスと、Aランクのフェイだと。
王都にいるのは知っていた。
先日、アレクと冒険者ギルドに顔を出したのを見たからだ。
その時、小柄な綺麗な子を抱えていたのも。
その子があの子だとすぐに分かった。

・・・・・・案の定、女冒険者二人は歯牙にもかけられずに、問答無用の威圧で失神した。

・・・・・・化け物だぜ。伊達にSランク名乗っちゃいねえ。

しかしまあ、去り際にチラッとコッチを見て目線で後始末を頼まれちまったからには、仕方ねえ。

「おい、手伝え」
「えー・・・?」
「詰め所まで運ぶ。ソッチのやつ頼むわ」
「へいへい。ったく、本当に迷惑なヤツらだな。この歳で結婚できない理由を考えたことないのかね?」
「あったら冒険者なんて続けてねえだろ? こんな女なら、男の方がよっぽどいい」
「同感だな」

愚痴を零しながら詰め所まで運ぶと、門衛にさっきの出来事を話す。

「何! アルカス様に暴言を?! おい、コイツらを留置場へ入れておけ! それからフォレスター家のタウンハウスへ連絡を入れろ!」
「・・・・・・アルカス様?」
「フォレスター・・・・・・って、将軍閣下の?!」

・・・・・・なんか知らないうちに大騒動になってるっぽい。

「お前たちご苦労だった。少ないが謝礼が出るから、後でギルドに言ってくれ」
「はあ」



二人はその場を後にした。

「なんか知らないが、俺達いいことやったのか?」
「らしいな。まあいいや。所でお前、今、暇?」
「まあ、こんなことになったし、今日はもう、依頼は受けないな」
「じゃあ、ギルドに行った後、一杯やらねえか?」
「いいな。付き合うぜ」
「うし! そうと決まれば善は急げだな」

そう言って男二人は嬉々として酒場に繰り出し、意気投合し、勢い余って閨を共にしてからの婚姻になるのだが、それはまた別のお話。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ
BL
 神の家でステンドグラスを作っていた俺は地上に落とされた。俺の出来る事は硝子細工だけなのに。  硝子じゃお腹も膨れない!硝子じゃ魔物は倒せない!どうする、俺?!  設定はふんわりしております。 少し痛々しい。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

世界が僕に優しくなったなら、

熾ジット
BL
「僕に番なんていない。僕を愛してくれる人なんて――いないんだよ」 一方的な番解消により、体をおかしくしてしまったオメガである主人公・湖川遥(こがわはる)。 フェロモンが安定しない体なため、一人で引きこもる日々を送っていたが、ある日、見たことのない場所――どこかの森で目を覚ます。 森の中で男に捕まってしまった遥は、男の欲のはけ口になるものの、男に拾われ、衣食住を与えられる。目を覚ました場所が異世界であると知り、行き場がない遥は男と共に生活することになった。 出会いは最悪だったにも関わらず、一緒に暮らしていると、次第に彼への見方が変わっていき……。 クズ男×愛されたがりの異世界BLストーリー。 【この小説は小説家になろうにも投稿しています】

【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる

おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。 知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。

異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない

春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。 路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。 「――僕を見てほしいんです」 奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。 愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。 金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

処理中です...